ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
変化の激しい今の時代に、事業を継続的に拡大し続けるためには、業務遂行や意思決定のスピードを高めることが重要なポイントになる。過去の成功体験にのっとって経営や業務を続けているだけでは、急激なビジネス変化に対応できずに自社の強みを損ねてしまうこともある。現代の企業であれば、業務の状況や顧客の情報など、多様なデータが蓄積されている。基礎的なデータをエキスパートが属人的に扱うだけでなく、経営者から現場まで必要に応じて活用できるようにすることは、事業をデジタル変革するための土台になる。DXを推進して事業を継続、拡大するには情報を共有できる基盤が不可欠なのだ。
情報共有と言っても、今は令和の時代。「ファイルに丁寧にまとめた紙の書類を誰もが扱えるから大丈夫」といった話ではない。すでに多くの書類はパソコンなどのデジタルツールで作成、保管されている。そうした書類が個人のパソコンに保管されていて、必要なときにプリントアウトして使うという運用も、時代に即していない。情報を共有して活用するためには、従業員が安全にアクセスできるような環境が必要になる。
また、これまでは紙で保管していた書類も、デジタル化をしてストレージに保管すれば、情報の共有性や流通性が格段に高まる。帳票類をスキャンしてPDFデータにし、ストレージに適切に分類すれば、紙のファイルは不要になり、従業員が自由にアクセスできるようになる。さらに、もう一歩デジタル化を進めて、AIによる文字の高精度な読み取りが可能なAI OCRサービスなどを活用すれば、紙への印字や手書き文字だったアナログ情報がデジタルデータとして活用可能になる。このようにITの力を活用することで情報の流通が促され、風通しの良い企業文化への転換にもつながるだろう。
その上、事業継続計画(BCP)の観点からも、情報をデジタルデータで物理的に社屋と離れた場所に格納しておくことのメリットがある。コロナ禍で経験したように、誰もがいつ出社できなくなるかはわからない世の中だけに、自宅などオフィス以外の場所からも必要な書類は参照できないと、業務継続が難しくなるケースもあり得る。クラウドストレージに保管しているデータならば、場所を問わずにパソコンやスマートフォンから参照やアクセスが可能だ。火災や水害などでオフィスのIT機器が使えなくなってしまった際にも、クラウドストレージにデータが保管してあれば業務継続の助けになる。
ケーススタディー(1):A社の場合(建設業)
建設業を営むA社では、基幹データシステムのクラウド化による情報共有基盤の構築によって顧客情報の一元管理を通じた迅速な状況把握、柔軟な対応を実現した。また、クラウド上にデータを集約することで、社員全体での情報の入力、共有、活用が可能になった。当初はDX推進に対して従業員があまり協力的ではなかったが、DXの説明会や勉強会の開催、社内でのDX発表会などにより情報の横展開を進めることで推進につなげた。
これまでは複数のシステムやファイルにまたがっていた情報を一元管理でき、分析などのデータ活用が促進。さらに情報一元化や自動化により削減した業務時間を、人間にしかできない業務に活用できるようになるメリットも生じている。
ケーススタディー(2):B社の場合(製造業)
地方での労働生産人口の減少に危機感を抱いていたB社は、企業や学校、行政、金融機関など地域関連系の強化による新しい価値観やDXモデルの創出を目指した。RPAによる自動化を推進すると同時に、人でしかできない業務プロセスの改善、効率化のためにビッグデータ活用を通じた意思決定プロセスの迅速化を推進した。
こうしたDX推進と同時に、社内外の情報共有が促進されるようになった。その後は、自身の職場の身近な改善やDXによる大きな改善の推進、社外の知見や技術を積極的に取り入れる風土の構築など、企業文化が変革していった。RPAによる業務自動化で年間数千時間の業務削減効果が得られた他、デジタル化した情報を一覧するダッシュボードの導入で生産性も向上した。
ケーススタディー(3):C社の場合(金属加工業)
職人や熟練事務員の退職をきっかけに、業務の属人化からの脱却を目指したC社。町工場に共通する課題として、納期や進捗管理、情報共有の難しさがあり、C社でも情報共有には苦心していた。そこで自社を含めた町工場の課題解決に向けて、生産管理ソフトを自社開発した。デジタルツールにより製造現場の業務効率化を進め、自社の現場をモデルケースとして生産管理ソフトの外販にも乗り出した。
生産管理ソフトを導入したことで、図面や指示書などの書類を探す時間や手間が劇的に削減され、進捗状況を共有するレスポンスが向上したことと合わせて、クライアントの信用度アップにつながった。属人化した業務からの脱却や業務効率化により、売り上げ向上や完全週休二日制が実現した。
※掲載している情報は、記事執筆時点のものです
執筆=岩元 直久
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