知って得する!話題のトレンドワード(第20回) ポイント解説!スッキリわかる「タイパ」

業務課題 経営全般

公開日:2024.11.14

 いま話題のトレンドワードをご紹介する本企画。第20回のテーマはスッキリわかる「タイパ」です。言葉の意味、そしてその背景や関連する出来事を解説していきます。みなさまのご理解の一助となれば幸いです。

 「タイパ」とは、時間対効果を意味する「タイムパフォーマンス」の略語です。よく使われる「コスパ(コストパフォーマンス)」が、かけた費用(または労力)に対する成果、つまり「費用対効果」を示すのに対し、タイパはかけた時間に対する成果、つまり「時間対効果」を意味し、効率の良い時間の活用のこと。この言葉は主にZ世代を中心とする「タイパ重視世代」から多く使われるようになりました。彼らが親しむSNSやネット上の情報は、大量かつ急速に移り変わり、必要な情報を素早く収集するため時間に対する合理性や効率性をより重視するようになったとされています。

 タイパ重視世代の特徴的な行動としては、「ながら見/ながら聴き」「動画の倍速視聴」「ネタばれ視聴」(後述)などが挙げられます。しかし、近年、ビジネスシーンでも「タイパ」が注目されています。ITの普及により、「皆がより効率的に情報を得る方法を模索し始めている」という見方もあります。さらに、短時間で成果を生み出し、得られた時間をキャリアアップやプライベートの充実に活用したいと考える人も増えています。少子高齢化が進む中、限られた労働力で生産性を高めるためには、コスパのみならず「タイパ」も業務効率化の要素となりそうです。

関連する出来事などの背景

 「タイパ」がトレンドワードとなったきっかけは、2022年に出版された書籍「映画を早送りで観る人たち」(稲田 豊史、光文社新書)とされます。書籍では、若い世代がタイパを強く意識する行動と、そうせざるを得ない社会の実態をあぶり出しています。

 若い世代がここまでタイパを意識する要因は、インターネットやデジタル技術の普及による情報量の急増と変化の激しさに加え、LINEグループなどSNSでの人間関係の中で、人気の動画や音楽などの話題に付いていかざるを得ない若者事情があります。タイパ重視世代の代表的な行動について主なものを挙げてみました。

「タイパ重視世代」の特徴的な行動

・ながら見、ながら聴き
 例えば、日常の必要なことを行いつつ知りたい情報を動画や音声で流しながら取得する、電車通勤時に動画視聴するなど、複数の行動を同時に行うことで、効率よく情報を取得する。

・動画の倍速視聴、スキップ視聴
 「倍速視聴」は1.5倍など速い速度で動画を視聴すること、「スキップ視聴」は不要な部分をとばして視聴すること。あらすじや概要を知りたい、必要なことだけ知りたいなどで活用する。

・ネタばれ視聴
 映画やドキュメンタリーなどの動画について情報をWeb検索などで調べてから視聴すること。事前に情報を知っておけば「見たけどムダだった」「予測したものと違った」などの事態が防げる。

・ショート動画などのショートコンテンツの利用
 ショート動画はTikTokやYouTubeショートなどでみられる短い動画、短い時間で内容がわかる、多く楽しめる動画を好む。

・要約サービスの利用
 書籍要約サービスでチェックすることで、書籍を読まずに済ます、読む価値があるかどうかを判断し、効率的に済ませるなど。長文のニュースや情報を生成AIなどで要約して読むことも。

・Web会議、ウェビナー(Web上の講座)
 開催場所に足を運ぶために掛かる時間やコストを節約できる。デジタルで行うことで、録画やログなど記録も簡単に残せるなどで、効率的と考える。

・時短グッズ、時短レシピ、時短サービスなどの活用
 そのことに掛かる時間を節約できるグッズ、時間や道具が最小限でできるレシピなどを活用して時間を節約する。

・オンラインでのコミュニケーション
 直接会うこと、電話やビデオ通話は、時間やコストがかかり他のことも併用できないと考え、短時間で済む、他のことも併用できるSNS、テキストメッセージなどを好む。

 消費者庁「令和4年度消費者意識基本調査」の調査結果では、年齢層が低くなるほど「費用対効果を重視する意識」および「費やした時間に対する成果を重視する意識」を持つ傾向があるという結論が書かれています。その概要は下記のとおりです。

・年齢層が低くなるほど「費用対効果(コストパフォーマンス)を重視する」傾向があり、30歳代以下の約6割が「当てはまる」と回答したのに対し、70歳以上の高齢者は3割未満となった。

・「費やした時間に対する成果を重視する」いわゆる「タイムパフォーマンス」についても同様の 傾向があり、10歳代後半および20歳代の約6割が「当てはまる」と回答したのに対し、30歳代以上から徐々に下がり、70歳以上では約2割となった。

 短時間で成果を出し、得られた時間をプライベートの充実や家族と過ごす時間、キャリアアップなどの目的に活用したいと考えることは、自然な流れだろうと考えます。少子高齢化が進む中、限られた労働力で生産性を高めるには、「タイパ」の考えから学ぶこともあります。実際、タイパ重視世代の先に挙げた「特徴的な行動」はなかなか興味深く、参考にしたい、取り入れたいと思うこともたくさんあります。

企業に与えるインパクトは?

 「タイパ」が新しい世代、およびこれからの世の中に重要なキーワードになっていく、と述べました。若い世代が次々と職場に入ってきつつある現在、彼らと仲良く手を取り合って未来を作り上げていくためには、彼らの概念や行動特性についてよく理解した上でのアプローチが不可欠です。若い世代には、タイパが悪い職場と感じればすぐに離脱を考える、などの特性もあるので、注意が必要です。

 ただし、タイパ重視世代の「さまざまなものを効率化して時間を大切にしたい」思いは共通でも、「好きなことに掛ける時間を充実させたい」「単純に時間がないため効率化したい」「推しや好きなものへの情報や時間を大切にしたい」ためなど目的は人それぞれ。若い世代を狭い観点で十把ひとからげに扱うことなく、それぞれの目的や思い、個性を尊重していく姿勢が大切でしょう。

 若い世代の人材確保や離職防止を目的に、タイパを重視した職場づくりも効果的ですが、タイパは業務効率化においても重要な要素となるでしょう。最近注目されるのが、「コスパ」「タイパ」「スぺパ」という3ワード。この3つを組み合わせて業務効率化を行っていくのがカギともいわれています。3ワードの内容を改めて整理しましょう。

・コスパ(コストパフォーマンス)
 「費用対効果」のこと。かかったコスト(費用)に対し、どれだけのパフォーマンス(クオリティー、仕上がり、使い勝手など)が得られるかを意味する。

・タイパ(タイムパフォーマンス)
 「時間対効果」のこと。かかった時間に対し、どれだけのパフォーマンス(クオリティーや満足度など)が得られるかを意味する。

・スぺパ(スペースパフォーマンス)
 「空間対効果」のこと。占める空間に対し、どれだけのパフォーマンス(利便性、快適さなど)が得られるかを意味する。

 新出の「スぺパ」はタイパの次のキーワードとして、昨今、急速に注目度が高まっています。その背景は住宅の平均面積が狭くなっていること、コロナ禍におけるテレワークの普及により、その狭い住宅の中に、就業スペースやリモート会議への参加場所などを確保せざるを得なくなった、という事情があります。企業においても、コスト削減などさまざまな事情で敷地や床面積などを縮小せざるを得ない事情もあります。限られたスペースでより多くのパフォーマンスを得たいのは誰しもでしょう。

 ただし、例えば「スぺパ」を重視して、エアコンを1カ所にまとめたら、死角ができてしまいサーキュレーターなどを置いてコントロールする必要が生じて「コスパ」や「タイパ」が悪くなったなど、どれかを上げるとどれかが下がる事態が容易に引き起こされるので、企業や家庭すべての場所において、三者のバランスを考えつつ効率化を行わなくてはなりません。これからの日本においては「コスパ」「タイパ」「スぺパ」をバランスよく考えていくことが、快適な環境づくり、明るい未来につながっていくと思われます。

これから予測される課題は?

 先ほどタイパ重視の若い世代の行動は、なかなか興味深く、取り入れたいものもたくさんある、と書きました。経営者やオトナ世代は、若い世代の考えに偏見を持つ傾向もありますが、まずは頭を柔らかくして、価値観や行動、それに至る起源も考慮して、広く平等な視野で受け入れていくことが大切です。「コスパ」「タイパ」「スぺパ」にも関連する業務効率化には、ITの活用が欠かせなません。自社の業務にどうIT技術を取り入れ効率化していくか、常に探ること、クラウド、サーバー、生成AIなどを活用して、社内Wikiやデータベースでノウハウを共用して業務の属人化を防止、ワークシェアリング、育児や介護も安心して行える会社づくりができれば、と思います。業務のDX化に関しては、経済産業省の「DX支援ガイダンス:デジタル化から始める中堅・中小企業等の伴走支援アプローチ」が参考になるでしょう。相談は最寄りのベンダーおよび、「IT経営サポートセンター」など公共の窓口に相談してみてもいいでしょう。

 2022年の「今年の流行語」の大賞にもなった「タイパ」。ただの流行語、若者の代名詞、などと聞き流すことなく、広い心でその意味を考え、受け入れ、今後のビジネスに取り入れていきましょう。

※掲載している情報は、記事執筆時点のものです

執筆=青木 恵美

長野県松本市在住。独学で始めたDTPがきっかけでIT関連の執筆を始める。書籍は「Windows手取り足取りトラブル解決」「自分流ブログ入門」など数十冊。Web媒体はBiz Clip、日経XTECHなど。XTECHの「信州ITラプソディ」は、10年以上にわたって長期連載された人気コラム(バックナンバーあり)。紙媒体は日経PC21、日経パソコン、日本経済新聞など。現在は、日経PC21「青木恵美のIT生活羅針盤」、Biz Clip「IT時事ネタキーワード これが気になる!」「知って得する!話題のトレンドワード」を好評連載中。

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