知って得する!話題のトレンドワード(第12回) ポイント解説!スッキリわかる「省エネ診断」

業務課題 経営全般

公開日:2024.03.13

 いま話題のトレンドワードをご紹介する本企画。第12回のテーマはスッキリわかる「省エネ診断」です。言葉の意味、そしてその背景や関連する出来事を解説していきます。みなさまのご理解の一助となれば幸いです。

 

 「省エネルギー診断」(以下、省エネ診断)は、資源エネルギー庁が行うエネルギー使用の改善をアドバイスする診断の1つ。省エネの専門家が工場・事務所・店舗・病院・福祉施設・学校・宿泊施設などを訪問し、エネルギーの無駄遣いや省エネにつながるヒントを見つけ、コスト削減につながる設備の運用改善やコスト削減効果が高い設備への更新、設備更新に活用できる補助金などについて提案をしてもらえる制度です。

関連する出来事などの背景

 「令和4年度補正予算 中小企業等に向けた省エネルギー診断拡充事業費補助金」での「省エネ診断」の受け付けは2024年1月上旬で終了していますが、資源エネルギー庁の「令和5年度補正予算における省エネ支援策パッケージ」には「省エネ診断」が含まれています。

 この点から(6ページ参照)、同様の省エネ診断サービスが近く実施される可能性が高いと予測されますので、その時に備えて内容をおさらいしておきましょう。「省エネルギー診断」のトップページで「省エネ診断の受診を希望される方はこちら」をクリックすると、「省エネ診断事業は専門家による省エネ診断費用を補助します。中小企業の皆さまをきめこまやかにサポートします」というメッセージとともに、診断の流れが紹介されています。

 この省エネ診断の概要は、令和4年度の補正予算時のものになりますが動画チラシがわかりやすいでしょう。チラシによれば、省エネ診断により、給湯循環ポンプの運用改善で年約28万円、大型コンプレッサーの吐出圧力低減で年約170万円、照明設備のLED化で年約49万円の節減、とあり、これだけ節減できるとあれば、誰しも心は動きます。なお、診断を受けられる事業者は下記のとおりです。

・中小企業基本法に定める中小企業者

・会社法上の会社以外(医療法人、社会福祉法人、学校法人、NPO法人など)の場合、前年度もしくは直近1年間のエネルギー使用量(原油換算値)が1500kl未満の事業所

 省エネ診断のメリットとして、次の3項目が想定されます。

●メリット① 短時間でニーズに応じた診断が可能

 ・エネルギーコストが気になる設備から短時間で診断可能(1設備のみの診断も可)

●メリット② 費用0円からのコスト削減が可能

 ・設備、機器の最適な使い方の提案

 ・温度、照度等の設定値の適正化

●メリット③ 省エネ取り組みの立案支援

 ・各設備のエネルギー使用量を把握することで、コスト意識の醸成や設備更新の判断材料とすることが可能

 省エネ診断のプランは下記のとおりです。

●設備単位プラン

 ・空調設備、照明設備、ボイラー・給湯器、工業炉、受変電設備、冷凍冷蔵設備、コンプレッサー、生産設備、デマンド、給排水・排水処理において、最大2設備まで組み合わせ可能

●まるっとプラン

 ・節電プラン、節ガスプラン、組み合わせプランの3つから選択可能(1プラン原則3設備)

 こうした診断および提案を安価(数千円~2万円以下程度)に行える制度はありがたく、日ごろの経費節減のためにも一度は受けておきたいものです。次項では、資源エネルギー庁が行うほかの省エネ診断サービス、現在利用できる省エネ診断サービスを見ていきます。

企業に与えるインパクトは?

 資源エネルギー庁のパンフ「中小企業の皆様、「省エネ診断」を活用しませんか?」には、前述の「省エネ診断」(SII、環境共創イニシアチブが行うもの)、省エネルギーセンターによる「省エネ最適化診断」や「省エネ相談地域プラットフォーム(省エネお助け隊による省エネ診断)」という、3つの省エネ診断が紹介されています。3つの違いは、「省エネ診断の比較」で知ることができます。これらの違いをよく知り、自社に合った省エネ診断を行うとよいでしょう。

 「省エネ最適化診断」も現在、受け付けが終了しており、こちらも次回の受け付け開始を待つ必要があります。「省エネ最適化診断」は、SIIの省エネ診断と同様の使用量の見える化、運用改善、高効率設備への更新提案などの他に「再生可能エネルギーの活用提案」が加えられているのが特徴です。

 上記3つの省エネ診断のうち現在利用できるのは、「省エネお助け隊による省エネ診断」のみです。これは地域密着型の支援団体が行うサービスで、診断の他診断結果を基に省エネ取り組みを一緒に進めていく「省エネ支援サポート」を行っているのが特徴です。その他、省エネルギーセンターの「セルフ診断ツール」は、事業者が自ら無料で省エネ診断ができ、省エネに取り組むきっかけとして気軽に利用できます。

●省エネお助け隊による省エネ診断

 「省エネお助け隊」は、経済産業省資源エネルギー庁の「地域プラットフォーム構築事業」で採択された地域密着型の省エネ支援団体。「省エネ取組の進め方」にある流れで進めるが、相談と打ち合わせは無料、診断と支援は事業所1割負担で行える。最寄りの相談窓口は「省エネお助け隊」サイトの窓口一覧から見つけられる(詳しくは「省エネお助け隊による省エネ診断のご案内」参照)。診断は、診断員1名/2名/3名の3プランがあり、規模や延べ床面積に応じて選べる。「省エネ支援」は診断結果に基づいて省エネ取り組みを一緒に進めるサポートプロジェクト。計測によるエネルギーロスの把握、コスト削減につながる設備のチューニングなどを行う。

●「セルフ診断ツール」

 「セルフ診断ツール」ページで、業種、都道府県、エネルギー使用量、延べ床面積などを入力すると、CO2排出量が計算できる。その他「削減メニュー」として、同等レベルのエネルギー使用量の事業所に過去実際に提案した省エネ提案が表示され、「削減ポテンシャル」として、提案を実行した場合のシミュレーション結果が、原油/CO2換算、金額ではじき出される。

これから予測される課題は?

 省エネ診断をきっかけとして、自社の現状を知り、専門家からの提案をもとに改善を進めていくと、自社のコスト削減はもちろん、脱炭素化、地球温暖化の防止にも貢献できます。脱炭素化に関しては、過去連載でも記事にしておりますので、是非ご一読ください。

 資源エネルギー庁の実施する3つの省エネ診断は、安価に診断を行ってもらえる上、補助金申請時に有利になるなどメリットも大きいので、早めにどれかの診断を受けることをおすすめします。ただし、申し込みの際は混み合うこと、早めに予定数に達して締め切られることが想定されます。次回サービスは省エネ診断サイトに「省エネクイック診断」として公開されていますが、その詳細や受付開始日時はまだ発表されていないので(2024年3月上旬時点で「近日公開予定」とある)、情報を常にチェックし、開始されたらすみやかに申し込むのが賢いでしょう。

 省エネ対策全般についての情報は、資源エネルギー庁「省エネポータルサイト」にまとめられています。ここでは「家庭でできる省エネ」「事業者向け省エネ」「政策関連情報」の3つに分けて情報が整理されており、省エネ法関連、省エネ診断・支援情報、省エネ補助金情報もあるので、目を通しておきましょう。なお、民間でも省エネ診断や省エネコンサルティングなど、省エネ関連のソリューションが提供されており、必要に応じてベンダーに相談する、なども手です。

 また、専門家に省エネ診断を行ってもらう以外にもエネルギーを節減できる大きな要素があります。それは業務効率化です。業務を効率化すれば単位労働コストが少なくなり、設備の稼働時間や消費するエネルギーが減ります。省エネ診断+省エネ取り組みと並行して、作業の自動化やITツールの導入など、業務効率化を行っていくと良いでしょう。省エネ診断はいわば、医者による健康診断のようなものです。優秀な医者は、病気を見つけ、治療をしてくれますが、自ら健康に気を付けることも重要なように、普段から皆で知恵を絞り、省エネを心がける姿勢をもちましょう。持続可能な未来の第一歩である省エネ診断、前向きに検討していくとよいでしょう。

※掲載している情報は、記事執筆時点のものです

執筆=青木 恵美

長野県松本市在住。独学で始めたDTPがきっかけでIT関連の執筆を始める。書籍は「Windows手取り足取りトラブル解決」「自分流ブログ入門」など数十冊。Web媒体はBiz Clip、日経XTECHなど。XTECHの「信州ITラプソディ」は、10年以上にわたって長期連載された人気コラム(バックナンバーあり)。紙媒体は日経PC21、日経パソコン、日本経済新聞など。現在は、日経PC21「青木恵美のIT生活羅針盤」、Biz Clip「IT時事ネタキーワード これが気になる!」「知って得する!話題のトレンドワード」を好評連載中。

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