ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
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労働基準監督署には、労働基準監督官がいます。労働基準監督官が訪問・調査して会社を監督する目的は、その会社の「雇用・賃金・安全・健康」が確保されているかどうかを見極めるためです。
労働基準監督官は、労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法などの法律に照らして、会社が、これら法律を順守しているかどうかを調査します。そのうえで法違反が認められれば「是正勧告書」を交付します。また、法違反ではないにせよ、法の趣旨から改善が望まれる点があるとなれば、「指導票」を交付して、会社に対して改善報告を求めます。
そこで今回は、労働基準監督署から指摘を受けやすい労働安全衛生法に関する事項のトップ3を挙げてみましょう。このトップ3は公に発表されたものではなく、あくまでも社会保険労務士としての筆者の経験によるものです。
●第1位 安全衛生管理体制が整っていない
会社には労働災害を防止する義務があり、そのためには安全衛生を確保しなければならず、管理体制の整備が不可欠です。そこで、労働安全衛生法で安全衛生管理体制について規定されているのですが(図表1参照)、これを知らず、労働基準監督官から指導や是正勧告を受ける会社が多いようです。
労働基準法に比べて労働安全衛生法は、建設業や製造業など一部の会社を除いて、あまり気にしていない法律かもしれません。特に安全管理体制については、建設業や製造業に必要とされているもので、その他の会社はあまり関係ないと考えている向きがあるようです。そこで労働基準監督官の調査が入ったときに、安全管理体制について、指導や是正勧告を受けることになります。中でも多いのが、「産業医」「衛生管理者」「衛生委員会」についての指導や是正勧告です。これらは建設業や製造業でなくても義務付けられているものです。
労働基準監督官が是正勧告したにもかかわらず、これに従わなかった場合は、50万円以下の罰金が科されます。
●第2位 ストレスチェックが行われていない
労働安全衛生法は、労働者のメンタルヘルスを健全に保つため、心理的な負担の程度を把握する検査、いわゆる「ストレスチェック」を行わなければならない旨を規定しています。これは2015年12月に制定された規定であり、比較的新しい制度のため、あまり理解していない会社が多いようです。そのため労働基準監督官が調査に入ったときに、指導・是正勧告を受けることとなります。
また、常時50人以上の労働者を使用する事業者は、1年以内ごとに1回、定期に、「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」を、所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません。
ストレスチェックは、常時50人以上の労働者を使用する事業場に実施を課せられた義務です。労働基準監督官がストレスチェックを行うように是正勧告したにもかかわらず、これに従わなかった場合は、50万円以下の罰金が科されます(図表2参照)。
■図表2 心理的な負担の程度を把握するために検査
(ストレスチェック)の実施(労働安全衛生法第66条の10第1項)
事業者は、常時使用する労働者に対し、1年以内ごとに1回、定期に、心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)を行わなければならない。
●第3位 健康診断が適正に行われていない
会社は労働者に安全に働いてもらうため、その健康状態にも気を配る必要があります。そこで労働安全衛生法は健康診断について規定しているのですが、これが適正に行われていないため、労働基準監督官から指導や是正勧告を受ける会社も、かなり多く見受けられます。
また、正社員に対してはしっかり健康診断を行っているものの、契約社員やパートタイマーなどに対しては健康診断を行っていないという会社も多いようです。労働安全衛生法は、一定の条件を満たした契約社員やパートタイマーに対しても健康診断を受けさせる義務が規定されていますから、これらの者に対して健康診断を行っていなかった場合も、指導や是正勧告の対象となります。労働基準監督官が是正勧告したにもかかわらず、これを行わなかった場合は、50万円以下の罰金が科されます。
この他、事業者は事業所で行った健康診断の結果に基づき、健康診断個人票を作成して、これを5年間保存しなければなりません。また、常時50人以上の労働者を使用する事業者は、定期健康診断、特定業務従事者の健康診断、歯科医師による健康診断(定期のものに限る)を行ったときは、遅滞なく、定期健康診断結果報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません。これらの書類を作成していなかったり、提出を怠ったりしている場合も、指導や是正勧告の対象となりますので注意をしてください。
執筆=嘉瀬 陽介
1963年、秋田県生まれ。横浜国立大学経営学部卒業。2003年、横浜で社会保険労務士事務所を開業。2006年、特定社会保険労務士の附記を受ける。社会保険労務士の業務と並行して児童文学の執筆をしている。趣味はスポーツをすることとドラマを見ること。
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