ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
部下との信頼関係の構築こそが、マネジャーの役目であり、ほめるために欠かせない要素です。前回は「日ごろから部下の話を聞く」ことの重要性を紹介しました。今回はちょっと難易度の高い「部下に愛情を持つ」ことと、「立ち位置」について解説します。
会社で部下をほめる際、自分とは相性の良くない人をほめなくてはいけないこともあります。しかし、ほめるということは一種の愛情表現であり、好意を態度や言葉に表す行為でもあります。
そのため、相性が良くない部下をほめる場合、相性の良い部下の場合と比較すると、どうしても多少の違和感がにじみ出るのは仕方のないことです。部下をほめる際に、たとえぎこちない笑顔になってしまったとしても、「それでも笑顔は笑顔」です。それが広い意味での愛情表現であることは部下にも伝わります。
部下に愛情を持つのは大切なこと。こう言うとなんだか精神論を振り回しているように聞こえるかもしれません。しかし、そうではありません。部下を持ち、人を率いるとは、もともとそういうことなのです。
自らをサッカーやバレーボールのチームのキャプテンであると想像してみてください。試合で誰かが良いプレーをしたら、キャプテンはその選手をほめたたえます。誰かが失敗したら、キャプテンはその選手を責めるのではなく、「次は頑張ろう」と言って励まします。誰もそれを不思議なことだとは思いません。
キャプテンが選手たちに愛情を持って接するのは当然のことだと誰もが感じています。もしもキャプテンが愛情を持っていなかったら、選手たちは何かがおかしいと感じることでしょう。キャプテンであるとは、そういうことなのです。控えの選手が黙々と練習に打ち込んでいるのを目にしたら、その努力をキャプテンがほめて励ますのも自然なこと。社会人のチームにはキャプテンよりも年上のベテラン選手だっているでしょうし、ベテラン選手へのほめ方や励まし方が多少ぎこちないものになってしまうかもしれませんが、そんなことはたいした問題ではありません。
部下を持つということもそれと同じこと。相性の良くない部下へのほめ方に多少の違和感がにじみ出たところで、気にする必要などありません。ほめられた部下や、まわりの人たちもそんなことは気に留めません。もちろん、部下との相性は悪いよりも良いほうがいいに決まっていますから、日ごろの心がけとして、「部下の良い点に気付く」「部下の言葉や考えに共感できるポイントを見つける」「声がけだけでも毎日繰り返す」といったことを積み重ねていきましょう。それだけで部下との相性が改善されることも多いはずです。
昨今のコミュニケーション論や育児論の考え方の中に「相手と同じ目線に立つことが大切」というものがあります。
IT系企業などでは、役職をつけずに「○○さん」で呼ぶことが浸透してきました。また、友だちや兄弟のような関係を持つ親子も増えているようです。友だちのような親子関係には子どもの非行を抑えるという良い面があるので、それらを否定するわけではありません。ですが、部下を「ほめて、育てる」という点から見ると、そういったやり方が本筋というわけではありません。
実際に、自分がほめられたときのことを思い出してみましょう。親や先輩、恩師、あるいは自分が目標としている人や憧れの人からほめられた場合と、友だちや同僚のような同列にいる人にほめられた場合では、その喜びに違いがあるものです。功績のあった社員に賞などを贈る場合でも、賞を贈る側が尊敬の対象であるかどうかで、賞を受ける喜びが天と地ほどにも違います。
繰り返しになりますが、「ほめて、育てること」は相手が望む言葉や態度で相手の心を奮い立たせることに他なりませんから、ほめられたときの喜びや感動が大きいほど相手のモチベーションは強く刺激されます。そしてその喜びや感動は、ほめてくれる人が高い立場にいて、尊敬に値する人であるほど強く、大きくなります。
もちろんこれは、「役職を笠に着る」などということとは、まったく違います。普段のコミュニケーションは部下と同じ目線に立ち、立場を超えて考え方を共有する、というやり方で心の距離を近づけることは非常に大切です。
しかし、それとは別に「この人は、自分よりも上の立場にいる、尊敬に値する人だ」と部下に思われるような、人間的に立派な立ち居振る舞いを心がけたり、仕事での技量を常に磨いたりすることが、同じくらい大切だということです。
執筆=坂本 和弘
1975年栃木県生まれ。経営コンサルタント、経済ジャーナリスト。「社員の世代間ギャップ」「女性社員活用」「ゆとり教育世代教育」等、ジェネレーション&ジェンダー問題を中心に企業の人事・労務問題に取り組む。現場および経営レベル双方の視点での柔軟なコンサルティングを得意とする。
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