ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
部下を単にほめるだけならば、「素晴らしい」や「よくやった」と言うだけで済みますが、「企業内で社員をほめて育てる」ことを目的とした場合、ただほめ言葉を並べればよいというわけではありません。
上司が部下をほめる際には、その先に「部下との信頼関係を深める」「部下の仕事へのモチベーションを高める」「部下を次のステップに導く」といったゴールを置く必要があります。「なぜこのほめ言葉が部下の成長につながるのか」という視点が大切です。
「ほめて育てる」の最も基本的なやり方としては……
・今回の成果についてまずほめる
・あなたが頑張ってくれているのを知っていたよと言って労をねぎらう
・改善点や具体的な改善方法があればそれを伝える
といった具合に、上司が直接次のステップアップを伝える方法が考えられますが、さらに効果的な方法として「質問してほめる」が挙げられます。
具体的には「今回、あなたのおかげで大きな成果が出ましたが、この成果を上げるために工夫したのはどんなところですか」や「あなたはいろいろなことを知っていますね。その知識をどこから仕入れましたか」など、「まずほめる→その根拠を質問する」という形で質問して答えを引き出していきます。
このように成果につながる隠れた努力を質問することでほめる気持ちがしっかり伝わりますし、質問を通して部下自身の気付きを引き出す、というメリットがあります。本人から質問に対する回答を引き出した時点で、「ほめて育てる」ことが始まったとも言えます。
ただし部下の成長を促すためには、成果の内容やそこに至る仕事のプロセスはもちろん、部下の能力や仕事への向き合い方などを上司が把握した上で、部下が答えられるような適切な質問を投げかける必要があります。また時には、部下の回答を受けて、さらに質問や意見交換などに発展させることも効果的でしょう。
また「こんなに大きな成果を出すなんて、あなたは普段からどれほど努力しているんだ」といった具合に、質問の答えを必要としない、ほめる言葉の一部として質問を使うやり方もあります。この場合には気付きを引き出すことはできませんが、ほめ方の1つとして心得ておくとよいでしょう。
繰り返しになりますが、会社で部下の成果をほめる際には、関係各所の努力も含めて、ほめることが大切なポイントとなります。そのため部下をほめる段になったら、基本的には、その成果に関係する者が大勢いる場でほめるようにしましょう。そして、その場で部下個人に対して一通りほめたら、締めの言葉として「そしてこの成果は、ここにいるみんなの努力のおかげだ」などと関係者全員の労をねぎらうようにするとよいでしょう。
もちろん、「今回の成果はここにいるみんなの努力によるものだ」ということを、部下個人をほめている最中にはさみ込んでも構いません。
対して「個別にほめる」というやり方も効果的です。育てたい人を個別にピックアップしてほめると、人前でほめられた場合とはまた違う喜びが感じられて、部下の気持ちが静かに鼓舞されることがあります。
ミスがあったときや、上司がステップアップのための課題などを伝える場合にも、本人のプライバシーやキャリアパスなどを考慮する意味で、個別にほめるようにするとよいでしょう。
ほめて育てる場合には具体的にほめることが大切だと説明しましたが、ただ事実を羅列して伝えるだけではほめたことにはなりません。
「ほめて、育てる」場合には、ほめるポイントや成果を具体的な名詞や数字にして伝えた後、(会社からの評価とは別に)上司の個人的な評価を伝えるように心掛けましょう。
具体的には、「新人の頃よくミスしていたあなたが、営業部門のエースと呼ばれるようになって私はとてもうれしい」「前月目標を10%も上回るなんて、あなたがいてくれて本当に良かった」といった具合に、「具体的な成果+だから私はこう思った」という話の流れを用いて、上司個人の感想や評価を伝えると、ほめる言葉が部下の心に響く可能性が高まります。
一般的に、人は陰の努力や人知れず行った善行などをほめられると、「目に見えない部分を他人が見てくれていた」と非常に大きな喜びになります。
例えば、営業部門の新人が初めて大きな契約を取ってきたとき、多くの人は「契約を取ったという成果」をほめるでしょう。当然、それだけでも十分効果はありますが、目に見える成果が一通りほめられた後、上司が「この成果は、君が毎日コツコツお客さまの元に通った努力が実ったおかげだ」という具合に、目に見えない部分に踏み込んだポイントをほめることができれば、部下の喜びはさらに大きくなるでしょう。
ほめられた部下は「自分の成果をきちんと評価してくれたこと」と同時に「表に見えない個人的な努力を上司がしっかり見てくれていたこと」に心を動かされることでしょう。
目に見えない努力をほめるためには、日ごろから部下の行動を見ている必要があり、そう簡単にできることではありません。だからこそ、見えないポイントをほめられた部下は「この人と一緒に働きたい」という気持ちが強まるのです。
執筆=坂本 和弘
1975年栃木県生まれ。経営コンサルタント、経済ジャーナリスト。「社員の世代間ギャップ」「女性社員活用」「ゆとり教育世代教育」等、ジェネレーション&ジェンダー問題を中心に企業の人事・労務問題に取り組む。現場および経営レベル双方の視点での柔軟なコンサルティングを得意とする。
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