小さな会社のトラブル抑止(第7回) レジトラブルに在庫監視。店舗は急務、見える化

トラブル対応

公開日:2020.01.15

 ビジネスでは、状況の「見える化」が必要とされる。財務状況、製造や販売の管理、顧客との取引情報など、見える化で的確な経営判断を下せるようになるケースは多い。これらは、企業活動をする上で生まれたデータを、目に見えるようにして価値を引き出す。一方で、実際にリアルな現場の「状況」を見えるようにするのも、データの見える化と同様に企業経営に効果をもたらす。

 状況の見える化が求められる代表例が店舗だ。経営者が常に店頭に目を配れれば、トラブルや課題への対応も迅速に行える。しかし、多くの場合、経営者は店頭の現場にはいない。オフィスにいる場合もあるだろうし、長時間営業や終夜営業の店舗では店頭に常駐するのは厳しい。

 商品や対応に不満を持った客が、レジにクレームを申し立てる。予測しなかった来客増で、店頭の客さばきが滞る。商品の万引きや盗難、強盗などの犯罪への対応も想定しなければならない。考えたくないが、従業員によるレジ不正にも備えは必要だ。多店舗展開をしていれば、遠隔地からでも各店舗の店頭の状況を把握しておく必然性は高まる。

台風に見舞われ被害続出。倉庫保管にも災害時確認の稼働

 見える化が求められるのは店舗に限らない。最近、自然災害が頻発した。工場や倉庫でも大きな被害がもたらされた。台風、集中豪雨による風水害、地震、火災、大雪や異常高温など、日本は全国のどこが被災地になってもおかしくない。もはや災害大国だ。何かが起こった、ないしは起こっているかもしれないときに、状況を確認し、把握できるような見える化の仕組みは、全国場所を問わずに求められる。

 不幸にして自然災害に見舞われたとき、工場のラインや機器の状況をいち早く確認・把握するのは、事業継続性を考えた際に不可欠だ。倉庫でも、水害によって商品の在庫が瞬く間にゴミの山になった例もある。現地に足を踏み込めないような事態であっても、遠隔から状況の確認・把握ができれば、次の一手への助けになるのは言うまでもない。

工場や倉庫の防犯監視や状態監視も負荷がかかる

 工場や倉庫では、状況の見える化は在庫物品や第三者の立ち入りの監視に役立てられる。実際に警備員などを配備するコストや人的負担をかけずにツールによる監視ができれば、効果的に守りを固められる。一般のオフィスや事務所でも、情報漏えいにつながる不審な行動があったのを把握できる。学校や高齢者住宅などでも、防犯や見守りといった側面で、状況の見える化は役立つ。

 さらに経営者にとって状況を見える化するツールは、リアルタイムで起こっていることの確認・把握だけでなく、何かトラブルや事故が起こったときに時間を遡って検証する用途も含めて導入効果が見込める。一定期間の情報を蓄積できれば、トラブル発生後も何が起こっていたかを確認できるのだ。

バックヤードでのトラブル対策にも、カメラ監視が選択肢に

 近ごろ話題に上ることの多いバイトテロのような不謹慎な行動など、経営者にとって不都合な事態が起こるリスクは少なくない。状況が見える化されているのを従業員や関係者が意識していれば、持ち出しや盗難、不謹慎な行動を抑制する力になる。

 状況の見える化は、センサーなどを使った流行のIoTデバイスを活用して実現できるが、カメラを設置して映像で確認・把握できる仕組みを構築する方法が手っ取り早い。必要に応じて、遠隔地から店舗や工場の様子をリアルタイムで確認したり、撮影した映像を一定期間保存したりできるからだ。

 監視カメラの導入も、近年ではサブスクリプションモデルによる月額費用だけで実現できるサービスが登場し、手軽さがアップした。高額なビデオレコーダーなどを購入しなくても、クラウドのストレージに映像を記録して外から状況が確認できるサービスもある。事業の見える化に、カメラの目を取り入れる選択が、容易になっているのだ。

執筆=岩元 直久

【MT】

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