視点を変えて可能性を広げるITの新活用術(第5回) 介護・福祉に寄るIT化の波

人手不足対策 IT・テクノロジー

公開日:2021.10.13

 日本の65歳以上は3640万人(2021年9月時点)を数え、人口の約29%が高齢者となり、超高齢社会が進んでいる。高齢者の社会生活や介護・医療などを支えるのが老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅、ケアハウス、訪問・通所サービスといった介護事業所だ。

 利用者の増加とともにケア業務を担う人材不足も深刻化。また、高齢者のワクチン接種が進むとはいえ、新型コロナウイルスの感染防止対策が加わり、ケア業務の負担が増しているのが実情だ。

介護業務や働き方改革の手助けとなるIT

 現在の介護人材を有効活用しながら、業務の効率化、生産性の向上、働き方改革といった課題に対応する上で、大きな力になるのがITだ。介護サービスは人手に頼る労働集約型の業務のため、IT化が遅れていたのは否めない。

 だが、ITを活用して業務の効率化や介護スタッフの働き方改革に取り組む事業者もある。訪問・通所介護サービスを提供するある事業者は、スタッフに共用のタブレットを配布。スタッフへの連絡事項など情報共有にグループウエアを活用する。また、訪問介護ではスマホで申し送りや連絡事項を伝える。スタッフは利用者宅に直行直帰しやすくなった。スタッフの柔軟な働き方をITで支援している。

タブレットで情報共有すれば直行直帰もしやすい

患者・利用者のバイタルデータ管理にITを活用

 介護サービスの仕事は利用者のケアだけではなく、介護保険の報酬請求に必要な書類の作成などもある。タブレットを使ってデータを入力、表計算ソフトを使ってデータを集計・加工すれば、ITで業務を効率化できる。スタッフの書類作成の業務負担を減らし、利用者へのケアの質を高められるといった効果が期待できる。

 例えば、介護施設では日々、患者・利用者のバイタルデータ(血圧・体温など)を計測している。スタッフがノートパソコンに入力したバイタルデータは施設内のWi-Fi(無線LAN)を介して電子カルテに記録すれば、従来、施設ごとに管理していた患者・利用者のバイタルデータが一元管理できる。介護施設のスタッフの業務効率化が可能になる。

Wi-Fi環境で施設入居者の利便性を向上

 Wi-Fi環境は介護施設スタッフのIT活用を促進するだけでなく、施設の利用者の利便性向上にも役立つ。例えばサービス付き高齢者向け住宅の入居者は、介護が必要な人ばかりではなく、元気な高齢者もいる。こうした入居者はタブレットやスマホを使ってネット検索や趣味を楽しんだり、離れて暮らす子どもや孫たちとコミュニケーションを取ったりする。ネット環境へのニーズも高い。

 ケアハウスにしても、入居者ができるだけ自立した生活が送れるよう、共用スペースにタブレットを設置。スタッフと入居者が一緒にネット検索で調べものをすれば、周囲と関わる機会を増やせる。

 サービス付き高齢者向け住宅などの施設の場合、複数階の建物も多い。入居者の要望に応じてWi-Fi環境を提供するには、各階の廊下や事務室、入居者が利用するダイニングルームなど、複数の場所への設置が望ましい。

 Wi-Fi環境の導入には、通信速度低下の原因となる電波の干渉が起こらないように、どこにWi-Fiのアクセスポイントを設置するかといった事前調査が欠かせない。導入後のトラブル対応も重要だ。ネットワークに詳しい事業者に相談したり、サポートが受けられるWi-Fiサービスを選択したりするとよいだろう。

執筆=山崎 俊明

【MT】

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