顧客対応でファンを増やす(第5回) さらば言葉の壁、訪日客を取り込むヒント

インバウンド対応

公開日:2018.03.22

 有名観光地では訪日外国人とすれ違うのはもはや当たり前の光景になってきた。観光庁によれば、2017年の速報値で、訪日外国人旅行者数は2869万人と、初めて1000万人を超えた2013年からわずか4年で3倍近くにまで膨らんだ。同じく観光庁の速報値では、2017年の訪日外国人旅行客の消費額は、4兆4000億円を超える規模に上った。外国人による国内消費総額は増えており、インバウンド需要の拡大は続いているのだ。

 物販店、飲食店、宿泊施設などの業種では、インバウンド需要の取り込みがビジネス拡大のポイントになる。ところが、そうした業種でビジネスチャンスをつかむには大きな障壁が存在する。「言葉の壁」だ。外国語が堪能な日本人も増えているが、全体から見れば一部にすぎない。

英語以外の母国語とする外国人も続々

 語学学習プログラムを提供するイー・エフ・エデュケーション・ファースト・ジャパンは、2016年のEF EPI(英語能力指数)第7版で、日本の英語力は調査対象の80カ国中37位で、レベルは「低い」に位置すると分析している。日本に住む人に共通して、英語力不足という課題があるわけだ。

 問題は英語に限らない。2017年の訪日外国人の国・地域別シェア(日本政府観光局による年間推計)を見ると、実に75%近くが韓国、中国、台湾、香港といった東アジアから来ている。こうした国の言葉が話せる日本人がどれだけいるか。やはり言葉の壁があると言わざるを得ない。

 訪日外国人も困っている。観光庁が2016年に行った「訪日外国人旅行者の国内における受入環境整備に関するアンケート」によると、来日中一番困ったことのトップは「施設等のスタッフとコミュニケーションがとれない」だった。さらに3番目には「多言語表示の少なさ・わかりにくさ」がランクインしている。言葉の壁に関連する不満が大きいのが分かる。

通訳を雇う必要なし。通訳機器が「言葉の壁」を解消

 こうした状況は、逆にビジネスチャンスでもある。外国語での対応を可能にした店舗は、訪日外国人も安心して利用できる。商品のスムーズな説明や、注文の際のちょっとした質問への答え、会計時の心遣いの一言など、訪日外国人と会話ができればインバウンド需要を取り込める可能性が高くなるからだ。

 インバウンド需要の増加というプラスがある半面、訪日外国人の増加はトラブルが増えることも想定される。文化の違いから、商品の内容や支払いに関するトラブルまで、幅広い問題が起こり得る。それを回避するための手段として、少しでも言葉の壁を取り除く必要がある。

 現実的に考えたとき、東アジアの諸言語はもちろん、英語についても、経営者や従業員が、勉強して短期間で正確なコミュニケーションを取れるようになるのは難しいだろう。外国語ができる人や、日本語ができる外国人を雇うという方法もあるが、規模の小さい店舗などでも、その費用を考えれば現実的ではない。

 それではどうしたらいいのか。手っ取り早いのは、最近増えている「通訳機器」を活用することだ。中でも一番手軽なのは、スマートフォンの翻訳アプリを使うこと。入力した文字を翻訳するだけではなく、音声を入力すると翻訳してくれるアプリも増えている。

 さらに最近は、コンパクトな通訳専門機器も登場している。機器に日本語で話しかければ、外国語に翻訳した音声をスピーカーから流し、逆に外国語で話しかければ日本語に通訳してくれるものだ。操作方法も簡単だ。訪日外国人が来店して、話しかける必要が出てきたら、通訳機器のボタンを押して話しかけるだけ。これで訪日外国人とコミュニケーションが取れる。通訳機器の性能は急速に向上して、価格も低下している。言葉の壁で外国人訪日客の誘致をためらっているのなら、試してみる価値があるはずだ。

執筆=岩元 直久

【MT】

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