新規事業に挑戦!(第21回) eラーニングによる教育の効率化を進め世界へ

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公開日:2018.02.26

株式会社manebi(マネビ)代表取締役CEOの田島智也(たじま ともや)氏 1986年生まれ。2009年4月に新卒で保険代理店に入社。1年を待たず09年12月に退職。Bees&Honey株式会社を共同代表として創業。13年8月に株式会社manebiを設立し、代表取締役CEOに就任。

 人は必ず変われると信じ、「manebiを通じて利用者の成長につなげたい」と話す田島氏。2015年9月の労働者派遣法改正を受けて開発した「派遣のミカタ☆」という派遣業界に特化した教育ソリューションで、業界の注目を集めている。今後も同じスタンスで、提供するソリューションを通じて、利用者の成長を促すために、さまざまな挑戦を続けていくという。20代で2度の起業を経験するなど、創業からのストーリーについて語っていただいた。

400冊のビジネス書を読みあさる

 時計を創業当初に戻す。田島氏は就職活動を機に「目覚めた」というが、それは何に対してだったのか。

 「面接で出会った経営者の方々に感銘を受けました。それで、とにかく起業したいと思うようになりました。そしてビジネス書をいきなり400冊買い込んで、一気に読みました。読み進めて気付いたことの1つが、起業家の皆さんの多くが『周りの人への感謝』を強調していることでした。これを機に、それまでの自分の生き方を見つめ直すようになりました」

 中でも田島氏が最も共鳴した会社が、Q&Aサイト「OKWAVE」を提供するオウケイウェイヴの兼元謙任氏だった。「いかにありがとうを集められるかが仕事だ」という考え方に、強く心を打たれた。

 「こういう〝思い〞を大切にしたビジネスが生まれていたことに、偉そうですが、感動を覚えました。『ユーザー同士で支え合う』というビジネスモデルにも、知識がなかった当時の僕はショックを受けました。そして、考え方そのものに共感した僕は、面接を3度受けたものの不合格だったので、自分で事業をやりたいと思うようになりました」

 そして田島氏は、これまでに読んだ400冊のビジネス書から、起業に必要だと思ったキーワードを抜き出した。それらの要素を効率良く学ぶために、少人数の会社に就職するのが近道だと考えた。そして、「滑り込むように」、小さな保険代理店に就職した。

 田島氏は、得るものは多く、同時にハードな職場だったと振り返る。結局、同社を8カ月で退職。同じ時期に会社を辞めた先輩2人とデザイン会社を設立した。デザイン会社にした理由は、メンバーの中に、デザイナーがいたから。就職活動時の夢とは異なるが、社会人1年目にして起業に至った。

 営業担当のナンバー2として忙しく働く日々を送り、そのかいあって、会社は少しずつ大きくなっていった。そんな中で出会ったのが、インテル日本法人で役員を務めていた板越正彦氏(現manebi顧問)。板越氏のコーチングを受ける中で田島氏が思い出したのは、就職活動を通じて目覚めていった自分の姿だ。

 「やりがいも感じず、くすぶっていた22歳の時の僕みたいな人たちを救いたい。そう思うようになりました。同時に、オウケイウェイヴのようにユーザー同士が助け合うみたいな文化への憧れを思い出したんです」。そして創業メンバーとして育ててきた会社を3年7カ月で辞め、manebiを設立した。13年のことだった。

多言語対応とAI活用を推進中

 現在、順調に利用者を増やしている「ミカタ☆シリーズ」。しかし田島氏は満足していない。これまでの実績と課題を基に多言語対応とAI(人工知能)の活用を考えている。近い将来に、英語、中国語、ベトナム語、ポルトガル語などサービス全体を多言語に対応させるという。その狙いは大きく2つある。

 1つ目は、日本国内での、外国人人材の教育だ。技術や考え方を学ぶ上では、おのおのの母国語で学んだほうが速く正確に理解できる。国内での労働力不足が指摘される環境に適応するためだ。

 もう1つがグローバル化だ。eラーニングによる教育の効率化は世界中にニーズがある。現地の法律や慣習への適応は必須だが「ミカタ☆シリーズ」の仕組み自体は、そのまま海外でも展開できると考えている。

 AIの導入によって、管理者と受講者双方の満足度も一段と増すと田島氏は確信している。まずは、現在は手作業で行っている学習を促す連絡や、実績データの集計といった業務の自動化。これによって、管理者側の作業負担が一層軽くなる。学習カリキュラムも、受講者の意思やこれまでの受講実績などに基づいて自動で提案される仕組みが構築できれば、カリキュラム作成の手間は大幅に削減される。

 受講者自身も、興味分野などを自動で提案されて、その中から自分で選択していくことで、ストレスなく自分に適した学習プログラムを構築、受講できる。管理者と受講者双方の手間とストレスを減らし、学習効果を高めるべく開発を急いでいる。

「自立のためのインフラ」を構想中

 さらに先には、「自立のためのインフラ」を構想中だ。毎日確認する「マイページ」を用意して、3つの段階を繰り返し経験できる場にしたいと考えている。

 第1の段階は、個人の意思、資質、能力を可視化し「人生の概算、方針」を導き出すこと。その次に、方針にひも付く情報に多く触れ、進むべき道を具体化する。同時に目標が設定され、目標に合う学習内容も提案されるという。ここまでが第2段階だ。第3段階は「やり切ることの仕組み化」だ。これは、AIと人の力で利用者の心を支える仕掛けを用意するという。それによって、諦めたりモチベーションが下がったりすることを防ぐ。

 「自分が大切にしている価値観などが記録されれば、『ログインするたびに自分に立ち戻れる場所』になり、『自分を見つめ直して、今より強くなる場所』にもなるんです」と笑顔を見せる。

 1986年生まれの30歳。日本が、先進国の中で最も自己肯定感が低く、希望を持てていないことに憂(うれ)いを感じている田島氏。彼は人が変われると信じており「カッコいい大人」を創出することで、世の中を変えていきたいと強く願っている。そんな田島氏とともに、manebiは成長を続ける。

MORIBE’s EYE

eラー二ングの会社。内容が充実している割りに、とにかく安い。派遣会社向けサービスで大ブレーク。社長は真面目でよく働く。だからサービス開発と改善のスピードが速い。それもエッジを立てる必須要件。今後の発展が楽しみ。楽しみ。

※情報は記事執筆時点(2016年7月)のものです

執筆=森部 好樹

1948年佐賀県生まれ。東京大学を卒業後、旧日本興業銀行に入行。香港支店副支店長などを経て興銀証券へ出向。ビックカメラで取締役を務め、2002年、格安メガネチェーン「オンデーズ」を設立し社長に。2007年共同広告社に移り、2008年同社社長に就任。2013年に退社して独立し、顧問業を専門とする会社、ロッキングホースを創業。現在代表取締役。

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