新規事業に挑戦!(第4回) 日本のモノづくりを組織化して海外に売り出したい

販路拡大

公開日:2016.07.11

 最終回は、世界をめざすリンカーズの今後の構想を解説するとともに、前田社長がビジネスにおいて大切にしていることを紹介します。日本のものづくりのバックアップに情熱を燃やす前田社長のビジネスプランは大きく広がっています。

リンカーズ(メーカーマッチングサービス)第4回

 スタートからの1年間で約100案件に対応してきたリンカーズ。前田社長は「2年目はさらに、数百、あるいは1000案件に挑戦したい」と意気込んでいます。そのためにも、システムでの自動化を進めていきます。また、その後5年間というスパンで、1つの壮大な構想を抱いています。前田社長はその思いを熱く語ります。

2020年には「日本モノづくり株式会社」を

 「当社が案件に対応すればするほど、技術力の高い中小企業の情報がどんどん集まってきます。しかしただ集まるだけでは技術的にもエリア的にも点在している状況です。それを、今後2020年をめどに1つに束ね、『日本モノづくり株式会社』をつくりたいと考えています。日本が一体となってものづくりの技術、製品、サービスを海外に売り出していけるように組織化するのです。単発で素晴らしい製品やサービスを生み出すことはできるけれど、それを継続して生み出すことは難しい。商社や金融機関など異業種からも人材を募り、さまざまな分野からリソースをかき集めて高い技術力を持った中小企業と大手企業が一体となってイノベーションを継続的に生み出せる仕組みをつくりたい」

 今、Linkersには海外メーカーからの依頼は10案件ほどしかありません。

 「日本モノづくり株式会社には、政府からの出資を仰ぎたい。政府や商社のお墨付きが得られれば、アップルやシーメンスなど海外大手メーカーにもアプローチできるようになるでしょう。海外メーカーにとっても、この日本モノづくり株式会社を窓口にすれば簡単にパートナーを見つけることができるようになります。優秀な日本の中小企業を海外とつなげ仕事を得ることが狙いの1つです」と話す前田社長。

 しかし、「それだけでは駄目」と続けます。「これだけでは、有力な中小企業しか生き残れないからです。有力な企業の下には、さらに何万社という″普通〞の中小企業が存在し、そこが元気にならなければ意味がないし、雇用創出にもつながりません。海外のニーズを取り込められれば、数兆円の案件を受注できます。そうすると有力企業だけではつくれないため、下請け企業に発注して製造を委託していきます。それでやっと普通の地場の中小企業が元気になり雇用創出につながるはずです」。

 実現の目標は5年後の2020年。この日本モノづくり株式会社を成功させるための秘訣を前田社長は「48時間以内意思決定ルール」だと言います。

 前田社長が野村総研で買収戦略を担当していた際、日本の大手企業の事業戦略がうまくいかないのは、意思決定が遅いからだと感じていました。「大手企業は稟議(りんぎ)に3カ月、4カ月あるいは1年かかるところも少なくありません。もちろん2000億円の投資などの大きな意思決定は別ですが、細かい意思決定はすぐに行うというルールを守らなければ駄目だと思っています」。

 さらに前田社長は、リンカーズのサービスが成功している理由を、「関わるみんなが責任を負っているからだ」と言います。

 「大手メーカーは数十万円以上のお金を払っています。中小企業はニーズに対し製品を製造する責任を担います。コーディネーターも企業を紹介する責任を持ち、私たちはお金を受け取っているのでマッチングを成功させる責任を持ちます。責任がなければ、コミットメントしないと思うんです。日本モノづくり株式会社も同じです。緩い組織をつくっても全く意味がありません」

ゴールに向かいストイックに突き進む

 前田社長は経営者として物を考えるとき、必ず「GISO」のフレームで考えてきたといいます。GはGoal(ゴール)、IはIssue(イシュー)、SはSolution(ソリューション)、OはOperation(オペレーション)。それにプラスアルファで必要なのがVのValue(バリュー)です。

 「事業は必ずこのフレームで成り立っています。まずゴール設定をした上で、それを実現するための課題(イシュー)を設定し、その次に課題を解決するための解決策(ソリューション)を設定します。その解決策を実際に実行(オペレーション)する。最後にこれによって価値(バリュー)を出していく。買収戦略をしていたときも、リンカーズを立ち上げるときも、常にこの流れを意識していました。 ゴール、イシュー、ソリューションは1人で机に座っていてもできるのですが、オペレーションは1人ではできません。さまざまなステークホルダーと共に実現していく必要があります。だから事業は難しいのだと思います」(前田社長)

 「自分1人でできることには限界があるので、いかに相手に気持ち良くやってもらうかが大事です。人は心で動くので、感謝の気持ちを忘れないようにと思いながら人と接するようにしています。コーディネーターさんにはこれまでに300通くらいはお礼状を書いていると思います。コーディネーターさんとのコミュニケーション、各企業とのやりとりは常にお互いがウィン・ウィンになれるよう意識して事業を進めています」(同)

 「起業家志向があったわけではなく、ゴールを決め、それに向かって突き進んできた結果の起業だった」と前田社長。事業を成功させるために重要な要素の1つは「決めたゴールに対してストイックである」ことだと言います。「思い描いた通りにいかないことも多く、失敗も数多く経験するけれど、そこでギブアップせずに頑張っていけるかどうかがすごく重要だと実感しています」

 さらに、もう1つは「群れない」こと。「群れると安心してしまうんです。経営者って孤独なんですけど、不安に思うことによって危機感を覚えるからこそいろいろと動いていけると思っています。自分で悩んで、不安に思いながら頑張ることでしか経営者は成長しないのではないでしょうか。社員やお客様など外に向けては自信を持つべきですが、心の奥底では不安をずっと持ち続ける。だから行動に移せるんだと思います」

日経トップリーダー/森部好樹

執筆=森部 好樹

1948年佐賀県生まれ。東京大学を卒業後、旧日本興業銀行に入行。香港支店副支店長などを経て興銀証券へ出向。ビックカメラで取締役を務め、2002年、格安メガネチェーン「オンデーズ」を設立し社長に。2007年共同広告社に移り、2008年同社社長に就任。2013年に退社して独立し、顧問業を専門とする会社、ロッキングホースを創業。現在代表取締役。

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