日本のアパレルを救うブランドをつくる(第4回) アパレルであっても地産地消は大切

地域活性化

公開日:2015.11.27

ライフスタイルアクセント 山田敏夫社長

――“日本の工場から、世界一流のブランドを作る”という目標を掲げ、熊本発のベンチャー企業ライフスタイルアクセントが立ち上げた日本初のファクトリーブランド専門ECサイト「ファクトリエ」。そこで販売されている製品は日本各地の工場で作られている。レディースニットを手掛けるのは新潟県のフォルツ、シャツは熊本県のHITOYOSHIなど、いま全国14の工場と提携している。連載最終回は山田敏夫社長に地方の活性化について語ってもらった。(聞き手はトーマツベンチャーサポート事業統括本部長、斎藤祐馬氏)

山田:実は最近、地産地消って洋服であっても大切だなと感じていまして。ファクトリエのシャツは、熊本県人吉市にある工場で作ってもらっているのですが、その工場の近くに小さなテーラーがあって、そこでうちのシャツを扱わせてほしいとお願いされたことがあったんです。

 最初はECサイトだけで販売しているのでコンセプトが違うから、とお断りしたんです。でもふと、地元の工場で作っているものを地元の人が着られないのっておかしいなと思って、そのテーラーに置いてもらうことにしたんです。

斎藤:そういえば、テーラーってあまり見かけなくなりましたね。

山田:かつては全国で10万店くらいあったテーラーも今では5000にまで減っています。どんどんセレクトショップに代替されてきた。でも地方のテーラーには、素地や生地に詳しいベテランの店員がいて、例えば親の代から家族のことを知っているとか、いろんな良さがある。最初はその店でも全然売れなかった。月に5枚とか、半年間は10枚を超えたことがなかった。

 それが、地元で作っているものですよと、地元の新聞が取り上げてくれたりして少しずつ増えてきた。それから2年がたつんですけど、リピーターが増えて今や月に200枚を切ることがないんです。

斎藤:それってどれくらい? 東京の店とかと比べてどうなんでしょう。

山田:東京の有名なセレクトショップの月の売り上げがせいぜい100枚くらいです。

斎藤:東京の倍!

山田:人吉市ってわずか人口4万人の町なんです。

斎藤:4万人!

山田:たかだか4万人の町であっても、サラリーマンも公務員もお医者さんも、中小企業の社長もいて、シャツの需要はあるわけです。今提携している14の工場のほとんどが人口10万人以下の町にある。ファクトリエを通して全国の人が買えることはもちろん大事ですけど、工場の地元の人たちが地元のものを買うようになれば、もっといいなと思うんです。

 これこそが、本当の意味での地産地消です。今、グローバルっていわれますけど、やっぱりローカルほど手堅いものはない。なぜなら、地元の人たちは一度ファンになってくださるとずっと買い続けてくれる。だからちゃんと地元の人たちが誇れるものを作って、着たいと思ってもらって若い人たちにもそこで働きたいと思ってもらえるようにする、それがきちんとビジネスとして継続してくことにつながるのです。

美しいのは地方にある各工場が地元の消費で回していけること

斎藤:今や限界集落では地産地消すらままならなくなっている地域があります。そうなってしまう前に、そういう魅力ある工場を地方に再生していかなければいけないですね。今、国が地方創生を前面に打ち出していますが、それに関してはどうお考えですか?

山田:正直に言えば、やはり私は“日本の工場から、世界一流のブランドを作る”を実現したい。だから地方創生のためにという意識はないんです。最近も岩手県の県庁の方が、ある縫製の町があって新しい交付金ができる。ファクトリエと一緒に何かできないかとお話をいただいたのですが、地方創生、交付金ありきの話だと無理ですとお話しました。まずは腕のある、いい工場であることが大前提ですと。

斎藤:なるほど

山田:「タウンページ」を見て片っ端から電話しなくてもよくなるので(笑)、そうやって自治体などが工場を紹介してくださるのは、非常にありがたいんです。でも我々はいい工場と仕事がしたい。日本のいいものをちゃんと残したいし、伝えたい。

斎藤:でもそれが結果として地方創生になっているわけですよね。地方の工場が元気になれば、すなわちそれが創生なわけですから。

山田:ちょっと脱線するかもしれませんが、先日ある日本酒の蔵元と初めて異業種と手を組んでイベントをやったんです。そのときに話していたのが、衣食住に関してのメード・イン・ジャパンの比率がどこも圧倒的に下がっている。衣はかつて50%だったのが今や3%です。日本酒は3分の1、林業は10分の1になっているという。

 何が減っているのか、何が失われているのかと考えたときに、日本文化だと思ったんです。洋服だったら、少し高いけどいいものを、仕立て直しながら長く着ていくとか、和食と日本酒でゆったりとした時間を過ごすとか、そういうものってとても日本らしい文化だと思うんです。

 だから、私は日本の作り手がもっとスポットライト浴びるような1つの成功例になりたい。そうすれば衣の世界に限らず、食でも住でもあいつがやれたんだから、俺たちも酒造りでとか林業で同じことができるよねという動きも出てくると思う。だから今やっていることは、大げさかもしれませんが、日本文化にとって大切な役割を担っているんじゃないかなと感じています。

斎藤:日本で足元を固めて、そして世界へということですね。

山田:先日、ニューヨークに行ったときにラーメン屋の一風堂にすごい行列ができていて、試しに食べてみたら日本とまったく同じ味でした。そのとき、本当にいいものをちゃんと作るって大事だなと思ったんです。私たちのビジネスはインターネット通販ですから、サイトを英語化して海外の通貨を使えるようにすれば、多少サイズの調整は必要でしょうけどすぐに門戸は開かれる。実際、年内中には英語版のサイトも作る予定です。

 でもやっぱり本当に大切なことは、物がいいかどうかということ。本当にいいものであれば、たとえ関税がかかったとしても支持されると思うんです。

 実は今、提携先の工場を20くらいまで増やすメドがついています。まずはその工場を集結してものづくりをしっかりと頑張っていこうと。世界展開もいいんですけど、やっぱり美しいのは地方にある各工場が地元の消費で回していけること。それが実現できたら、すごくいいなと思っているんです。

日経トップリーダー/藤野太一

※掲載している情報は、記事執筆時点(2015年5月)のものです

執筆=斎藤 祐馬

※トーマツ ベンチャーサポートは、2017年9月1日より「デロイト トーマツ ベンチャーサポート」に社名変更しました。

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