Wi-Fiのビジネス活用術(第10回) 手軽な顧客満足度向上策、無料Wi-Fi導入のポイント

Wi-Fi サポートサービス顧客満足度向上

公開日:2017.08.30

 街中のあちこちで「Wi-Fi使えます」と書かれたポスターやシールを見かける機会が多くなった。駅のホームやショッピングモール、さらにはコンビニエンスストア、観光施設ほか、さまざまな場所にアクセスポイントが設置され、手軽にインターネット接続できるWi-Fi(公衆無線LANアクセスサービス)スポットが整備されている。スマートフォンが普及し始めたここ10年ほどで急増したWi-Fiは、便利な通信インフラの1つとして定着しつつある。

 無料Wi-Fiスポットの運営主体は政府・自治体から、施設・店舗を運営する民間企業まで幅広い。設置の大きな目的は、その場所を訪れた人へのサービスの充実だ。スマホやタブレット利用者にとって外出先でWi-Fiが使えるメリットは大きい。言い換えれば、Wi-Fi導入は顧客満足度の向上に役立つ。

 駅、空港といった交通機関、病院や役所、繁盛している店舗などでは、訪れた利用者をある程度待たせることは避けられない。無料Wi-Fiを導入すれば、一定の条件はあるもののスマホなどからインターネット接続できるようになるので、その待ち時間を退屈にさせず、有効に使ってもらえる。それによって顧客の不満は少なくなり、満足度アップが期待できる。

 無料Wi-Fi の利用によって顧客の滞在時間が長くなれば、業績への好影響も考えられる。無料Wi-Fiを提供している施設としていない施設がある現状では、サービスを導入すれば集客にも差をつけられる可能性がある。

 さらに無料Wi-Fiは、ネット接続環境を提供して顧客満足度を上げるだけでなく、情報提供にも貢献する。例えば、接続時に表示される画面に店舗のお知らせや、利用できるクーポンを表示すれば有効な販促手段になる。ではこうした無料Wi-Fiサービスの導入はどうすれば実現するか。注意すべきポイントをまとめてみた。

Wi-Fiは2種類ある

 現在国内で提供されているWi-Fiは、大きく2種類に分けられる。まず挙げられるのは、通信事業者が自社の契約者向けに設置したものだ。NTTドコモ、au、ソフトバンクをはじめとする各社から提供されるこのサービスは、インターネット接続増加による通信回線の混雑回避を目的に整備が始まったもので、通常、利用は各社の契約者に限られる。

 もう1つが利用者を限定せず自由に開放するWi-Fi。こちらが増えている背景には、海外からの観光客増加が関係する。外国人観光客から「無料で使えるネット環境が不足している」という不満の声が上がったため、多くの企業や自治体が整備に乗り出した。

どんな導入が考えられるか

 まず、Wi-Fiが使える環境づくりから考えてみよう。基本的に必要なのはインターネット接続環境と、スマートフォンやパソコンなどの端末へ電波を届けるためのルーターだ。なお、無償でWi-Fiを提供する場合、無線局としての免許は不要なので、開通と同時に提供がスタートできるのもメリットになる。

 次に運用。大切なのは「開設したアクセスポイントには、どんな人が、何人くらい接続するのか?」という見通しだ。せっかく整備しても、接続できないケースが多ければ、かえって顧客満足度を下げてしまいかねない。多少は余裕を見た設備を用意すべきだろう。一般的に家庭用・小規模オフィス用として市販されているWi-Fiルーターの同時接続数は10台前後のものが多い。これでは、利用者が重なると接続できなくなる恐れがある。

 無料Wi-Fiを考える際に欠かせないのがセキュリティの問題である。これを無視した場合、無線で接続された端末は「丸見え」の状態になってしまい、最悪の場合はデータ流出やウイルス感染の温床にもなりかねない。パスワード設定やログ(履歴)の保存はもちろん、不正アクセスを防ぐ対策を講じる必要がある。特にWi-Fiを業務の通信インフラ用と顧客提供用の2つの用途で使おうと考えている企業は、対策が不可欠だ。

 利用者側も、無料Wi-Fiに関してはセキュリティを不安視している。無料Wi-Fiが不正目的でのアクセスやなりすましなどの犯罪に使われるからだと考えられるが、開設者側が行う対策によって、ある程度改善が可能である。具体的には利用時にSSIDとパスワードによる認証や、メールアドレスなどの登録を行うことを求める。利用者はこのような手続きを煩わしく感じる可能性もあるが、セキュリティ対策の1つとして考えたい。

目的・用途に応じたサービスを選ぼう

 Wi-Fi構築には多くのIT関連企業が参入し、多彩なソリューションを提供している。NTT西日本の「スマート光ビジネスWi-Fi」(※)は、同社の「フレッツ光 ネクスト」を契約したオフィス、店舗を対象にWi-Fi環境をパッケージ化し、導入から運用までのサポートを合わせて提供するサービスだ。

※スマート光ビジネスWi-Fiの利用には、「フレッツ 光ネクスト」または「フレッツ 光ライト」もしくはコラボ光の契約・料金が必要

 導入前に電波調査を行い、機器類(無線アクセスポイント)は同社で設定後に送付されるので、既設のLANを使う場合はそのまま設置するだけで簡易に接続が完了する。また、1台のアクセスポイントのSSIDを社内用と来客用に分けることで、来客用のWi-Fiから社内ネットワークへの接続を遮断し、セキュリティ向上を図った。同時接続数は最大120台(※)と多く、さまざまな業務形態に対応できるのも特長だ。

※技術上の最大値

 店舗を訪れる顧客向けにフリーWi-Fiを構築したいというニーズに応えるサービスもある。FREESPOT協議会の「FREESPOT」は、専用の導入キットを設置・設定して手軽にフリーWi-Fi環境をつくれる。現在、同サービスの拠点は全国で1万3000以上となっており、現在も拡大中だ。

 KDDIグループのワイヤ・アンド・ワイヤレスが提供する「Wi-Fiスクエア」も来店客に対して無料でWi-Fi環境を提供できるようにするサービス。利用者に一度空メールを送信してもらい、IDを発行する方法でセキュリティを向上させている。

 USENの「USEN SPOT」は、業務用Wi-Fi環境とプロバイダーをセットにして提供されるもので、多忙で設定の時間がない場合や、機器の操作に不慣れな際には心強いサービスだ。また、12言語に対応するなど、外国人向けの機能も充実している。

 これらのサービスは、設置が比較的簡易で、コストも低額なものが多い。導入に際してはそれぞれの特徴を比較検討し、最適なものを選ぶことが大切だ。

トラブル対応が運用開始のキモ

 フリーWi-Fiには、運用する上で注意するポイントがある。それはトラブル発生時の対応だ。電波は目に見えないので、何らかの理由で停止していてもすぐには気が付かない。顧客から不具合を指摘されても、操作が分からずお手上げでは問題がある。「無償で提供しているのだから……」という言い訳は通用しない。

 各社のWi-Fi構築サービスは、このようなトラブルシューティングにも対応する。ただその方法は、メール対応だけ、電話対応も可といった具合に違いがある。対応時間も異なる。店舗などでの利用の場合は、休日でもできるだけ早い対応が不可欠になる。それが可能なサービスを選びたい。

 機材設置場所の調査も重要なポイントだ。Wi-Fiの電波は屋内で50~100メートル程度届くといわれるが、壁などの障害物で減衰する。実際には同じ部屋の中でも「電波が弱い」もしくは「つながらない」場所が出てきてしまう。導入前に現地で電波調査を行うのが理想だ。

 サービス提供の効果を上げたいなら、Wi-Fiが利用可能なことと使い方の注意点などをしっかり顧客に知らせることも大切。「Wi-Fi使えます」のポスターを貼るだけでなく、SSIDやパスワードの入力などが必要なら、あらかじめその旨を伝える必要がある。顧客から問い合わせを受けたとき、的確に対応できるよう、開設前にスタッフへの説明、教育もしっかり行いたい。

※掲載している情報は、記事執筆時点のものです

執筆=林 達哉

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