ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
あらゆる企業において、取り扱うデータの量は急増している。そうした中、大企業の多くは巨大なストレージ環境をクラウドまたは自社環境に用意して対応している。いわゆる、ビッグデータの活用だ。
中小企業や個人事業者も、ビジネスに必要な情報量が増加して、パソコンなど単独の機器の容量を超えたデータを扱わなくてならないケースが増えている。こうした中小企業や個人事業者は、手軽なデータ保管場所としてハードディスクを搭載したファイルストレージを活用している。容量にもよるが、数万円程度である程度のスペックのものが手に入る。
ファイルストレージには据え置きタイプとポータブルタイプがある。据え置きタイプは、セキュリティがある程度確保できる。一方、利便性の点で見劣りする。複数ユーザーによる情報共有が難しくなるからだ。ポータブルタイプは、紛失や盗難、落下による破損などのリスクがやはり避けられない。
こうした問題を解決する手段として、最近はNAS(Network Attached Storage)を導入するケースが増えている。NASはその名の通り、ネットワークに接続した外部記憶装置(ストレージ)のこと。ネットワーク経由で複数のパソコンからアクセスできる。一定以上のスペックを備えた企業向け製品のほか、個人が動画などの大きなデータを保存するために利用する用途を狙った低価格製品もある。
NASのメリットは情報共有が容易な点だけではない。セキュリティのレベルを上げられること、ネットワークに接続しているのでデータのバックアップが容易なのも重要なアドバンテージだ。
NASには様々なタイプがある。法人向けでは、フォルダごとにアクセス権を設定できるものが一般的だ。例えば、個人情報については、担当者しかアクセスできないといった制限をかけられる。マイナンバー制度に対応したIT環境を構築する上で、このようなアクセス管理はセキュリティを向上させる重要なポイントの1つだ。
データのバックアップについては、BCPの観点でニーズが高まっている。東日本大震災のときには、オフィスに置いていたパソコンやサーバーの水没・破損などの被害を受けたり、ネットワークの途絶によりアクセスができなくなったりした企業もあった。こうしたケースを目のあたりにして、データのバックアップを真剣に考える経営者が増えた。
NASを使ったデータのバックアップとしては、2台用意して定期的にバックアップをとって、同じデータを保存しておく方法がある。災害などのリスクを考えると、2台はできるだけ離れた拠点に置いて、ネットワークでつなぐのが望ましい。同じオフィスに2台とも設置したり、近接した拠点に配置したりした場合、地震などへの備えとしては不十分だからだ。
拠点が分散していない企業が効果的にバックアップを行うなら、クラウドの利用が考えられる。AWS(Amazon Web Services)などで提供されているクラウド型のストレージサービスは、堅牢なデータセンターを用意している。平均レベル以上のデータセンターであれば、地震や停電などの事態に対して十分な備えをしているので、データ消失というリスクは最小化できるはずだ。
ただ、クラウドにデータを置くという選択は身軽ではあるが課題も残る。というのは、災害や事故などでネットワークが停止してしまうと、データへのアクセスができなくなるからだ。
こうしたリスクを回避するため、最近はハードウエアとクラウドによる二重化を検討する企業が増えている。手元にNASを置き、それをクラウドにつないでデータのバックアップを行う方法だ。これならネットワークとハードウエア、データそれぞれの分野で二重化を実現できる。
例えば、社内LANに問題が起きてオフィスのNASが使えなくても、クラウドサービスを利用してカバーできる。もちろん、逆のケースにも対応できる。また、NASとNAS内のデータが壊れたとしても、クラウド上には直近までのデータが保存されているのでハードウエアの故障対策にも有効だ。最近は、特に中小企業向けのデータバックアップとして、こうしたハイブリッド型のデータ環境が注目されている。
現在、NASとクラウドを組み合わせたストレージサービスのニーズは増加している。その背景にはBCP意識の高まりに加えて、施行が間近に迫ったマイナンバー制度がある。アクセス管理機能を備えたNASなら、一定のセキュリティを確保する。
また、クラウドにデータを置くことに対する懸念が払拭されてきたのも、こうしたサービスが伸びている要因だと考えられる。以前は、「クラウドに重要データを預けて大丈夫か」と心配する声がよく聞かれたが、最近は「クラウドのほうが安心」と考えるようになってきた。クラウドの基地であるデータセンターは、堅牢性などファシリティ面での優位性に加えて、サイバー攻撃に対する防御力も高い。クラウドサービスを守っているのは、ネットワークの専門家集団なのである。
NASとクラウドを活用したサービスを提供する事業者は増えつつある。据え置きタイプやポータブルタイプのストレージを販売しているバッファローやI-O DATAといった情報機器メーカーは、モノからサービスへと事業領域を拡張し、他企業と連携して「NAS+クラウド」のサービスを提供している。
逆に、ネットワーク事業者がサービスからモノへと守備範囲を広げ、同様のサービス領域を提供するという動きも見られる。例えば、NTT西日本の「データ安心保管プラン」※1。オフィスのNASとデータセンター間でデータをバックアップできるほか、これらのデータの状況を24時間365日遠隔監視(設備の保守・メンテナンス等でサービス停止する場合は除く)。何か問題が起きれば即座に通知される。
データ安心保管プランを同社の別サービスと組み合わせれば、安心のレベルを一層高めることが可能だ。例えば、「フレッツ・VPNワイド」※2という閉域網を活用すれば、インターネット網を介さずにデータをバックアップできる。
また、「オフィス安心パック」※3と組み合わせれば、困りごとに対する電話サポート、問題発生時の駆けつけサービスなどを受けられる。同パックのUSB規制を活用し、オフィスのIT環境のセキュリティレベルを高めることもできる。一般に、USBによるデータの持ち出しは、セキュリティ対策を考える企業にとっての大きな課題とされている。
マイナンバー制度の導入を前に、すべての企業はセキュアなIT環境づくりが求められている。また、ビジネスにおける情報資産の価値の高まりを受けて、データの安全なバックアップも切実な経営課題になっている。
今、こうした課題に向き合い、自社の身の丈に合ったIT環境を改めて考えるべき時期を迎えているのではないか。これまであまり考えてこなかった企業ほど、その必要性は高いはずだ。
※1データ安心保管プランの利用には、フレッツ 光ネクストなど、プロバイダーの契約・料金が必要
※2フレッツ・VPN ワイドの利用には、フレッツ 光ネクストなどプロバイダーの契約・料金が必要
※3オフィス安心パックの利用には、フレッツ 光ネクストなどプロバイダーの契約・料金が必要
※掲載している情報は、記事執筆時点のものです
執筆=津田 浩司
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