“ゆとり君”と働くために覚悟しておくこと(第10回) 「僕はできません。だって新入社員ですから」

コミュニケーション

公開日:2016.02.10

 「反省→検証・分析→改善→行動」のサイクルに入る。これが「教えられ上手(あるいは育てられ上手、怒られ上手)」になることです。ゆとり世代をいかにこのサイクルに入れるかが、最後のカギになります。

 現在、ゆとり世代で最も問題になっているのが、やる気を失うことです。「入社前に抱いていた仕事のイメージと違うため、失望してやる気を失う」などと一般的には解説されています。しかしもう少し詳しく見ていくと、ビジネス社会で経験した「うまくいかないこと」に対して、指導されたり、怒られたり、小言を言われたりと、ゆとり世代にとって「小さな嫌な経験」をすることで落ち込み、それが積み重なってやる気を失っていくのが分かります。

 ここには、先に説明した「他責」「自責」の考え方が大きく関係してきますが、最も基本的なのは「ビジネスではうまくいかないことのほうが多い」のが分かっていないということです。ほめられ続けて育ったゆとり世代は、あまり挫折を知りません。他人と競争して負けるという経験や、“うまくいかない”経験が少ないのです。つまり「うまくいかない」だけで未知の領域であるのに加え、「怒られる・叱られる」という未知の体験がさらに重なり、二重のショックを受けてしまうのです。

 加えて、先に述べた通り、態度の横柄な上司と接するのもストレスです。その結果、「上司は自分を目の敵にしている」「上司は何も教えてくれない」と、責任を上司に転嫁してしまいます。もし、そういう態度を取られたら、上司であるあなたも「もうどうでもいいや」という気分になってしまうのではないでしょうか? ゆとり世代にはまず「ビジネス社会ではうまくいかないほうが多い」ことを理解させます。そして、うまくいかないときに「あきらめないこと、逃げないこと、立ち向かうこと」を教えましょう。

 これは、相対評価で育った上司世代には当たり前のことです。学生時代までの経験で、たくさんの「うまくいかないこと」を経験していますから、時には挫折することもあったでしょうが、自然と「あきらめずに立ち向かう」という気持ちも鍛えられています。ところが、ゆとり世代は失敗や挫折の経験が少ないですから、社会人になってから「あきらめずに立ち向かう」ことを教えなければなりません。

 失敗してもあきらめず、もう一度考えて行動する――。 こう書いてしまうといかにも当たり前ですが、ゆとり世代はその当たり前のことが難しいと思っています。上司がゆとり世代に期待しているのは「成功する」ではなく、まずは「失敗してもくじけない」であると繰り返し、すり込むことが必要です。

上司が挨拶しないなら、僕もしたくありません

 期待値のところで触れましたが、「なぜ上司は挨拶をしないのか」という話を進めていくと、ゆとり世代は「上司がしないなら、僕もしたくありません」と言います。「でも上司は仕事ができるからね」と言葉を返すと、「上司は仕事ができるけど、僕はできません。だって僕は新入社員ですから」と主張します。

 悪意を持って言っているのではありません。こういう思考回路を持っているのです。上司の悪いところを挙げ、自分は権利を主張する。ゆとり世代にはこういうスタンスがあります。こんな部下に、仕事を教える気持ちになる上司がいるでしょうか? ゆとり世代は教えられ上手になるのが下手なのです。

 「上司は仕事を期待されているから、挨拶をしなくても許される」
 「新入社員は仕事で失敗するから、教えられ上手になることが大切」
 「そのためには『教えてください』という気持ちを態度で示す」
 「だから気持ちよく挨拶することが大切」
 こう順番を追って説明すると、ゆとり世代は「だからですか!」「上司が挨拶しないことにムカついていたのですが、やっと分かりました!」と納得します。それまでは「上司は『挨拶しろ』と言うばかりで、自分はしてないじゃないか」と、ずっと不満を持っていたのです。

 余談ですが、この話を企業の人事担当者にすると、「うちの社員はそんなこと思っていませんよ」と言う方が多いです。それはなぜかというと、ゆとり世代は人に対して向き合って文句を言うことが苦手で、黙っているため直接・間接に耳にする機会が少ないからです。実際には、インターネット上で不平・不満を書き込んでいます。それが、私のような第三者に対しては言いやすいため、言葉となって出てくるのです。

「すねている」と思われた時点で「すねている」のと同じ

 ゆとり世代によくあるのが、怒られたときに「はい、すいません…」とがっくり頭を垂れ、落ち込んだままになってしまう態度です。反省は反省と割り切り、次の仕事には前向きになるのが大切なのですが、彼らはずっとしんみりしていることを反省だと考えています。ムスっとしていますから、その態度は「なんとなくすねている感じ」と周りに思われることが多いのです。

 もちろん、本人は落ち込んでいるだけで、反省を表しているつもりでいます。ゆとり世代は自己評価が高く、他人の評価もよくしますが、自分が評価されることは苦手です。だから、自分が周囲にどう思われているかということに無頓着な一面があります。私が彼らに繰り返し言っているのは「先輩や上司から『お前はすねている』と言われたら、自分はまったくそう思っていなくても『本当にすねている』のと同じだよ」ということです。

 ほとんどの若者は「いや、すねてませんよ」「すねてないのにそう思うのはおかしい」と言うのですが、それは周囲には分かってもらえないことを、時間をかけて教えます。「周囲からすねているように見えたら、もう仕事は教えてもらえないよ」と話して、教えられ上手になるためには、周囲からどう見えているかが大切であることを説くと、納得してもらえることが多いです。

日経トップリーダー/柘植智幸(じんざい社

執筆=柘植 智幸(じんざい社)

1977年大阪生まれ。専門学校卒業後、自分の就職活動の失敗などから、大学での就職支援、企業での人財育成事業に取り組む。就職ガイダンス、企業研修、コンサルテーションを実施。組織活性化のコンサルティングや社員教育において、新しい視点・発想を取り入れ、人を様々な人財に変化させる手法を開発し、教育のニューリーダーとして注目を集めている。さらに、シンクタンクなどでの講演実績も多数あり、毎日新聞、読売新聞、産経新聞、経済界、日経ベンチャーなど多数のメディアにも掲載される。

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