ケーススタディー シゴトに生かすDX(第4回) デジタルツールの活用で社内情報共有を推進

IT・テクノロジー デジタル化

公開日:2024.09.30

 ビジネスを継続・拡大するためには、社内の活発な情報共有が重要な要素の1つとなる。コミュニケーションが円滑に進めば、さまざまな知識や知見を社内で有効に活用できるようになるだろう。例えば、業務上の不明点を一人で考え込むよりも、誰かに意見を聞いたり、社内の情報アーカイブなどにアクセスして解決策を探したりしていけば、業務効率も教育効果も向上する。

 また、「いつでも誰もが回答してくれる」安心感や信頼感が社内に醸成されることで、働きやすい職場環境の構築にもつながる。とは言え、近年、私たちの働き方は大きく変わり、先輩・後輩が隣同士の席で一緒に仕事をして、すぐに何かを聞くことができる職場環境は少なくなりつつある。こうした仕事環境の変化の中で、スムーズな情報共有を実現するためには、コミュニケーションを支えるためにITツールの力が重要となっている。

慣れ親しんだSNSなどの情報共有ツールをビジネスに拡張

 一般にDXというと、自動化などによる業務効率化やデータ活用によるビジネススピードの向上、そしてこれらの有機的な結びつきによるビジネス変革の実現といった大きな目標を掲げることも多い。こうしたDX推進は、その成果を享受するまでの時間やコストも一定程度必要となり、うまくいかない場合は軌道修正が難しくなるケースもある。

 一方、社内の情報共有を活性化させるためにITツールを導入し、社内の風通しをよくすることをDX推進の1つの目標にするなら、そのスタートは小さな取り組みから始めることができる。例えば、情報共有ツールを導入し、どのような情報のシェアが日々の業務効率アップや生産性向上に資するのか、また自社の将来に寄与するのかなどを共有するとよい。「情報共有をしないほうが良かった」という結論が出ることは少なく、適切なツールを導入すればプラスの成果を得られる可能性は高いだろう。すでに若い世代だけでなく、就労者世代の多くもプライベートにおいてSNSを活用し、メッセージ機能やチャットなどのコミュニケーションには慣れている。何か知りたいこと、相談したいことがあったときにスマートフォンに手が向かうのは当たり前という世代も、ビジネスパーソンとして多く活躍するようになった。こうした変化を追い風に、情報共有ツールを使いこなしたいところだ。

 ただし、プライベート向けのSNSなどをビジネスで使うとなると、セキュリティの確保といった面で不安もある。この点、ビジネス用途に特化した情報共有サービスを選べばこの心配の多くは払拭できる。社員、従業員に閉じて、アクセス管理やログ管理などの守りをしっかりと整えた上で、社内の自由な情報共有を支えることが可能だ。

 もちろん、こうしたツールを活用するためには、情報共有の必要性や、自社がめざす情報共有のあり方などを全社に示す必要もある。また、トップや経営層が使わない情報共有ツールは宝の持ち腐れになることもあり、「自社の情報共有の理想の姿」を率先して実践することが求められることも忘れずに。

DX先進事例に見る社内情報共有の効用

ケーススタディー(1):A社の場合(金属加工業)

 A社では、「既存顧客への柔軟な対応」「新規顧客開拓」の実現を目指し、DXに取り組んできた。製造分野では、生産管理業務のミス・ムダ・属人化からの脱却を、製造以外の分野では主に事務の業務非効率の改善や伝達・連絡ミスの減少、ノウハウなどの属人化の解消を目標とした。これらのモノづくりと事務の両輪のデジタル変革で、「知識・知恵・情報」のデジタル化を進め、情報共有と活用を推進した。

 そこで活用したのがビジネスチャットだ。ビジネスチャットの上に「ありがとう発信&リアクション」といった社内の意思疎通を活発化させる仕掛けや、「雑談」部屋を作ることで、画一的な情報共有だけでなく社内の人間関係の深化にもつながった。取り組みの成果の1つとして、社内からのアイデアの発案が活性化したことが挙げられる。「デジタル技術による挑戦」のアイデアを募集したところ、100を超えるアイデアが集まり、さらなるDXの推進に弾みをつけることになったという。

ケーススタディー(2):B社の場合(情報・通信業)

 社外にDXの提案をする業務を手がけるB社では、自社でビジネス変革やデジタル化を実践してDXを体感する取り組みを進めてきた。その中で、社内の業務効率化やペーパーレス化、情報の見える化を推進している。リアルおよびデジタルツールにおける情報共有の場を積極的に提供してきたのだ。

 そして、DX人材発掘プロジェクトを社内で立ち上げ、DX推進に関する情報共有の場を定期的に設けると同時に、情報共有ツールを活用して社内で気軽にコミュニケーションができる環境を整備した。情報共有の場が整ってきたことで、DX推進に関する社内コミュニケーションの活性化が進み、DXそのものの推進につながっていった。

ケーススタディー(3):C社の場合(ガス・エネルギー業)

 顧客の時間短縮・困りごとの解決を目的に、自社でDXに着手したC社。DXで属人化業務を撤廃することで、新たな付加価値を生み出し、顧客満足度につなげていった。その中の具体的な取り組みの1つがデジタル技術を活用した情報共有だった。SaaSを活用して自社で在庫発注のアプリを開発するとともに、オンライン上で社内情報共有と可視化を可能にするツールを導入。日常のコミュニケーションの活性化やアイデアの創出の基盤として有効に機能し、事業継続力の強化を実現している。

※掲載している情報は、記事執筆時点のものです

執筆=岩元 直久

【MT】

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