ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
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従業員の健康を守る知識や規則を紹介する連載の第3回は、一般健康診断についてです。中央労働災害防止協会刊の「衛生管理者の実務~能力向上教育用テキスト」には、事業所が労働者の健康管理をすることに関して、次のように記載されています。
「事業所が労働者に対して行う健康管理は、労働者個人の健康の状態を健康診断により直接チェックし、健康の異常を早期に発見したり、その進行や増悪を防止したり、元の健康状態に回復するための医学的及び労務管理的な措置を目的としています。最近では、労働者の高齢化に伴い、健康を保持増進して労働適応能力を向上することまでを含めた健康管理も要求されるようになってきています」
つまり、事業所には労働者の健康状態を把握する義務があり、これに基づいた労務管理を行う必要があるということです。
労働安全衛生法で事業者に義務付けられている健康診断には、図表1のものがあります。
■図表1 労働安全衛生法に規定された健康診断の種類
・雇い入れ時の健康診断:事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、医師による健康診断を行わなければなりません。
・定期健康診断:事業者は、常時使用する労働者(特定業務従事者を除く)に対して、1年以内ごとに1回、定期に、医師による健康診断を行わなければなりません。
雇い入れ時の健康診断と定期健康診断の項目については、図表2の通りです。
■図表2 雇い入れ時の健康診断、定期健康診断の項目
ここからは、経営者がどのようにしたらいいのか分かりにくいポイントを事例で説明します。
●事例1 契約社員の健康診断
A社には、契約期間の定めのない労働契約により使用される正社員と期間の定めのある労働契約により使用される契約社員がいます。A社は、正社員に対しては雇い入れ時の健康診断を行っていましたが、契約社員に対してはこの健康診断を行っていませんでした。そこで労働基準監督署に指導を受けることになりました。
契約社員であっても、1年(特定業務に従事する者は6カ月)以上使用されると予定されている者には、医師による雇い入れ時の健康診断を行わなければなりません。また、契約社員が契約の更新により、1年以上引き続き使用されている場合には、その者に対しても定期健康診断を行わなければなりません。
●事例2 パートタイマーやアルバイトなどの健康診断
B社は正社員とパートタイマーが混在して働いています。B事業所は、正社員に対しては健康診断を行っていましたが、パートタイマーに対しては、常用雇用ではないと考え健康診断を行っていませんでした。そうしたところ労働基準監督署の監督官から、一部のパートタイマーに対しても健康診断を受けさせなければならない旨の指導を受けました。
パートタイマーやアルバイトであっても、その者の1週間の所定労働時間が、その事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間の4分の3以上である場合は、健康診断を行わなければなりません。
●事例3 健康診断を受けたばかりの雇い入れ時
C社に中途採用されたDは、1カ月ほど前に以前の会社で健康診断を行ったそうです。このような場合であっても、雇い入れ時の健康診断は必要なのかとC社は疑問に思っています。
医師による健康診断を受けた後、3カ月を経過しない者を雇い入れる場合で、その者が健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、その健康診断の項目については省略が可能です。
●事例4 1年以内に健康診断を受けた者
E社のFは、6カ月ほど前に雇い入れ時の健康診断を受けたばかりです。この者について、1年に1回の定期健康診断を行わなければならないのかどうか迷っています。
雇い入れ時の健康診断、海外派遣労働者の健康診断、特殊健康診断を受けた者については、その健康診断の実施日から1年間に限り、その者が受けた健康診断の項目に該当する定期健康診断の項目を省略できます。
●事例5 健康診断の項目の省略
G社の健康診断を担当している医師が、「20歳以上の社員については身長の検査は不要だ」と言うので身長の検査をやめました。G社は、本当に身長の検査をしなくていいのか、正直不安に思っています。
医師が必要ないと認めるときは、次の者に対し、それぞれ図表3の項目について省略できます。
■図表3 医師が必要ないと認めたときに省略可能な検査項目
●事例6 特定業務従事者の定期健康診断
H社には深夜業に従事する労働者がいます。この者に対しても、通常の社員と同じように定期健康診断を行っていたのですが、労働基準監督署の監督官から、深夜業に従事している者に対しては、定期健康診断だけでは足りないと指導を受けました。
事業者は、特定業務に常時従事する労働者に対し、その業務への配置転換の際と6カ月以内ごとに1回、定期に、医師による健康診断を受けさせなければなりません。特別な健康診断を行わなければならない特定業務には、図表4、図表5に示したものがあります。
■図表4 特定業務従事者の定期健康診断を行わなければならない「特定業務」
■図表5 特定業務従事者の定期健康診断で、医師が必要ないと認めたときに省略可能な検査項目
●事例7 海外派遣労働者の健康診断
I社では、社員を1年ほど海外に派遣し、業務を行わせています。これについて、労働基準監督署の監督官から、健康診断を行うよう指導を受けました。
事業者は、労働者を本邦外の地域に6カ月以上派遣しようとするときは、あらかじめ、この労働者に対して、医師による健康診断を行わなければなりません。また、事業者は、本邦外の地域に6カ月以上派遣した労働者を本邦の地域内における業務に就かせるとき(一時的に就かせるときを除く)も、この労働者に対し医師による健康診断を行わなければなりません。
・検査項目の省略
雇い入れ時の健康診断、定期健康診断、特定業務従事者の定期健康診断、特殊健康診断を受けた者については、その健康診断の実施の日から6カ月に限り、その者が受けた健康診断の項目に相当する項目を省略できます(図表6参照)。
■図表6 海外派遣労働者の定期健康診断で、医師が必要ないと認めたときに省略可能な検査項目
●事例8 給食従業員の健康診断
G社には社員食堂が完備されています。この社員食堂で働く労働者に対しては、一般の定期健康診断以外にも特別な健康診断を受けさせなければならないと、労働基準監督署の監督官に指導を受けました。
事業者は、事業に付属する食堂や炊飯場における給食の業務に従事する労働者に対して、その雇い入れの際またはこの業務への配置替えの際に、検便による健康診断を行わなければなりません。
執筆=嘉瀬 陽介
1963年、秋田県生まれ。横浜国立大学経営学部卒業。2003年、横浜で社会保険労務士事務所を開業。2006年、特定社会保険労務士の附記を受ける。社会保険労務士の業務と並行して児童文学の執筆をしている。趣味はスポーツをすることとドラマを見ること。
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