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進化するITを使い倒せ(第1回) 経営に活力生む、ネットワーク×デジタルサイネージ

Wi-Fi ビジネス機器顧客満足度向上

公開日:2018.12.12

 街中やショッピングセンター、駅や空港といった交通の要衝など、至る所で目につくようになったデジタルサイネージ(電子看板)。写真、イラスト、文字だけでなく動画も組み合わせた情報は、受け手に強い印象を残す。また、次々とタイムリーな情報が表示でき、多言語対応も容易なのでインバウンド需要への対策にもなる。

 情報を提供するメディアとして、さまざまなプラスの効果があるデジタルサイネージは、その効用が認められ市場は拡大を続ける。2016年から20年までの4年の間に、市場は2倍に成長するという試算もある。

 市場拡大の要因として、液晶ディスプレーが低価格化してハードウエアのコストが下がったことも大きい。だが、それだけではない。デジタルサイネージを使いこなせば、売り上げやサービス向上に確かな効果があると、企業側に認識が広がったことも追い風となっているのではないだろうか。

安易な導入は後悔する、運用に立ちはだかる障壁

 経営の視点で見て、デジタルサイネージを導入する最大のメリットは、来店や購入の促進効果の拡大を図れる可能性があることだ。従来の店頭看板、ポスターといったメディアに比べて、デジタルサイネージはタイムリーに多様な情報を伝えられる。コンテンツを工夫すれば、強いインパクトも与えられる。

 コスト削減効果もメリットだ。従来のメディアでは、情報を更新する都度、いちいち作り直す必要があった。デジタルサイネージは、導入コストこそある程度かかるものの、情報の更新コストはやり方次第でかなり節約できる。

 ただ、こうしたメリットに釣られ、安易にデジタルサイネージを導入しようすると失敗する。デジタルサイネージは魔法の看板ではない。表示するコンテンツを作り、適切に更新しないと意味がない。

 デジタルサイネージを生かせるかどうかは、コンテンツの充実がカギを握る。どれだけ簡単かつコストをかけずに、魅力的なコンテンツを制作できるか。更新や切り替え作業に手間をかけずに済むか。

 「今までポスターや看板の制作経験は豊富にあるから大丈夫」というのは、陥りがちな落とし穴だ。デジタルサイネージで効果的な情報配信をしようとすると、コンテンツの作り方や素材の加工の仕方は、ポスターや通常の看板のノウハウと異なる。

 ポスターならば十分な時間をかけて判読してもらえた文字の大きさが、刻々と情報が切り替わっていくデジタルサイネージでは小さ過ぎて顧客にストレスを与えるかもしれない。時には文字よりも、写真や動画を生かすテクニックも重視すべきだ。

 1つのコンテンツを複数店舗のデジタルサイネージに届ける方法や、表示のタイミングなどの設定・運用もそれなりのノウハウが必要だ。紙のポスターを配布して、従業員に張り替えてもらうのと、デジタルサイネージの情報を切り替えるのは、まったく違う業務といえる。

データ更新のやり方次第で現場が悲鳴。ネット対応を

 これまで、デジタルサイネージの運用方法で中心的だったのは、USBメモリーやSDメモリーカードなどの物理的な記録メディアを使ってコンテンツをセットする方法だ。例えば、小規模店舗でも利用できるシャープのインフォメーションディスプレーのエントリーモデルには、コントローラー機能や簡易コンテンツ再生機能があり、USBメモリーやSDカードを差すだけで簡単にデジタルサイネージとしての利用が可能だ。

 こうした操作はそれほど難しくないが、手間はそれなりにかかる。デジタルサイネージに表示させるコンテンツをパソコン上のソフトで作成し、出来上がったデータをUSBメモリーやSDメモリーカードに保存する。それをデジタルサイネージのある場所まで持ち運び、機器本体に差し込んでディスプレーに情報を表示させる。こうした負担を、ただでさえ忙しいスタッフにかけさせたくない店舗も少なくないはずだ。

 運用の省力化と効率化を図る有力な手段が、デジタルサイネージのネットワーク対応だ。ネットワークを経由して、更新コンテンツの配信や表示タイミングの設定を行えれば、店舗などの現場の人手をかけずに、コンテンツの表示が可能になる。特に、複数の店舗のデジタルサイネージを、本店や本部から一括して管理するような場合には、ネットワーク対応は不可欠といえる。

コンテンツ制作支援から一斉配信、店舗内Wi-Fi活用でさらに便利に

 ネットワーク対応で、小規模事業者でも導入できるデジタルサイネージの例としては、リコーの製品が挙げられる。クラウド型のサイネージで、インターネットに接続して利用する。サーバーが不要で、パソコンのWebブラウザーで手軽にコンテンツ作成から配信設定まで可能な手軽さが魅力だ。業種別に多くのテンプレートやニュース・天気予報配信機能も持ち、店舗などでもかなり高度な利用が実現する。

 多拠点へ設置する場合や1店舗で複数の場所にサイネージを設置する場合には、NTT西日本が提供する都築電気のデジタルサイネージ「Shop Face」も便利に使える。コンテンツ配信を行う管理用パソコンと各店舗をネットワークで結び、各店舗のサイネージにコンテンツを配信することが可能だ。

 さらにクラウド型のWi-Fiなどで手間のかからない無線LANを構築すれば、配線などを気にせず、店舗内の適切な場所に設置したり、1台のサイネージを自由に移動させたりして、手軽にかつ効率的に運用できる。

 Shop Faceはデジタルサイネージ本体やWi-Fi機能付きのセットトップボックス、コンテンツ配信や設定が手軽にできる配信管理ツール、普及しているプレゼンソフト「パワーポイント」でコンテンツを作れるコンテンツ作成ツールといったハードからソフトまでが一式で提供される点も心強い。

 ネットワーク対応で利便性が高まるクラウド型のサイネージだが、注意を払うべき点もある。情報セキュリティとネットワーク負荷の問題だ。クラウド型を活用すれば社外のサーバーに情報を蓄積する可能性が高いので、セキュリティの懸念は大きくなる。また今後4Kなど、より高精細な映像をデジタルサイネージのコンテンツに利用するようになると、ネットワークに高い負荷がかかり、スムーズな情報配信ができない可能性も生じる。そういったポイントについてもチェックして、導入する機種を選ぶべきだろう。

 コスト面のハードルと、効果面の疑問が共に払拭され、街の中でごく当たり前に見られる存在になったデジタルサイネージ。デジタルサイネージでのアピールは、店舗ビジネスの大きな武器になるだろう。ただその武器の特徴を把握して、自社に最適なものを選ぶ必要がある。使いこなすには、それなりに工夫をしなければならない。導入のハードルが下がった今こそ、タイムリーに顧客に情報を提供し、売り上げアップとコスト削減を両立させたい。

※掲載している情報は、記事執筆時点のものです

執筆=岩元 直久

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