新規事業に挑戦!(第7回) マスコミ人脈を築かず商品を売り込む!

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公開日:2016.10.17

 前回は、飲食店での事例を通じて売り上げが伸びたプロフィット・ラボラトリーの事例について紹介した。第3回は、企業プロデュースに欠かせないPRについて「ブランドは、徐々につくるものではなく、最初からつくるもの」という言葉に至った経緯を探る。

プロフィット・ラボラトリー(企業をプロデュースする事業)第3回

 満席FAX以上に、プロフィット・ラボラトリーが得意としているマーケティングの戦術サービスがマスコミへのPRです。顧客企業がメディアに取り上げてもらうためのPRですが、その手法はプレスリリースやセールスレターといった書面の送付のみなのです。マスコミの関係者と人脈を築き、メディアに取り上げてもらう手法は取っていません。

メディアに取り上げられるPR

 「あえてマスコミとの人脈は築かないようにしています。その方が売り込むネタ自体が本当に面白いか面白くないかをブラッシュアップできるからです」と平川社長。同社が送るプレスリリースの特徴は、マスコミが取り上げやすいよう、社会性、公共性のある情報に変換して顧客企業のサービスや商品を売り込むことです。

 「マスコミの人たちは、日々取り上げるネタを探しています。一方で多くの企業はどのように情報を提供したらいいのか分からず、売り込むノウハウを持っていません。メディア視点、記者視点ではなく、単なる売り込みのリリースが多く、取り上げられずに終わることが多いのです。それで、我々はマスコミもお客様と捉え、一方的に売り込むのではなく、彼らが望んでいる表現の仕方でリリースを送っています。

 マスコミがどのような情報を欲しがっているのかを分析し学んでいったところ、社会的なトレンドに乗っている物事、いわゆる“世の中ごと”になっている取材の切り口が求められていることがよく分かりました。宣伝臭くない公共性も必要です。例えば、今のトレンドでいうと、少子高齢化だったり、女性活躍推進や地方創生といったキーワードになるでしょう。そういった世の中のトレンドとリンクさせて、自社商品やサービスを公共性のある情報に変換してマスコミに提供するのです」

 商品を社会問題と結び付けるため、プロフィット・ラボラトリーでは「本質直感」と呼ばれる作業をするのだそうです。これはオーストリアの哲学者、エトムント・フッサールが提唱している世の中の現象の本質構造を明らかにする考え方です。

 これまでに1万5000件を超える相談に乗ってきた離婚コンサルティングの専門家から依頼されたプロデュースの事例を基に説明しましょう。

 まず、養育費や教育費など「離婚」に関係するキーワードを5~10個ほどピックアップし、その言葉プラス媒体名、ニュース名(離婚/○○新聞など)を使ってインターネットで検索します。

 検索で出てきたメディアに取り上げられた記事をまとめて整理。こうして世の中に発信された記事を見渡していくと、社会性のある取り上げ方の切り口が見えてくるのだそうです。リーマン・ショック直後だったこともあり、このときの検索結果は女性視点の記事と経済的な問題を扱った記事が多かったといいます。

 そこで、この専門家に「最近女性からの経済的な相談が増えていませんか?」と尋ねてみたところ、「今までは『今すぐ別れられますか』という相談内容がほとんどだったのが、最近は『突発的に離婚するとまずいから、6カ月後に離婚するために今何を準備したらいいですか』というような内容がすごく多くなっているんです」という答えが返ってきたといいます。それらの相談に訪れる女性は30~40歳代が多いことも分かりました。

 これらの分析を通して出来上がったプレスリリースの切り口は「離活中のアラフォー女性急増中」。リリースには2000年と2007年とのデータを比較する数字を載せました。結果、ニュース番組や新聞、ヤフージャパンのトップニュースなど、多数のメディアで取り上げられることになったのです。

 「マスコミに取り上げられることで狙うのは、直接的な集客というよりブランディングです」と話す平川社長。何を売るにもまずは、ターゲットとなる最終消費者が「知っている」という環境をつくることが大事だといいます。

 「全ての情報は、受け手の態度によってその価値が決まります。どれだけ良い商品、良いサービスの情報であっても、受け手の態度が懐疑的であれば全く売れないのです。逆に、受け手に能動的な態度や信頼があれば、どんなものでも売れるともいえます」

 プロフィット・ラボラトリーが担当した案件の中で、日本だけでなくロイター通信など世界のメディアで取り上げられた、ある料理専門学校があります。この専門学校では、体験入学説明会のとき、説明を始める前にニュースで取り上げられた映像などを流すそうです。そうすると、参加者の説明を聞く態度は明らかに能動的になるといいます。

 平川社長は「ブランディングができると、成約率が3~5倍になる」と言います。先ほど紹介した離婚コンサルティングの専門家も、メディアに出た後は成約率が5倍になったそうです。テレビや雑誌に出ることで、世の中の人々から安心や信頼を得られるのです。

 「我々はPRファースト、アドバタイズ(広告・宣伝)セカンドだと言っています。最初に広告を打つのではなく、まずはPRすることが大事だとお客様には伝えています。実はブランドは、徐々につくるものではなく、最初からつくるものなのです」

 これまで同社が担当してきた約300社全てが、地方紙なども含め何かしらのメディアに紹介されたのはこういうアイデアがあったのです。

 プロフィット・ラボラトリーは2014年より、顧客企業内部の組織として「戦略広報部」を立ち上げるためのコンサルティングも始めています。

 これは顧客企業のプロデュースを同社が請け負うのではなく、顧客企業に自社をプロデュースするノウハウを提供し、立ち上げた広報部が3カ月間で自走できるところまでサポートするサービスです。座学での研修の後は、実際に一緒にプレスリリースを作成したり、電話営業を実践するなど、自社でマスコミ取材を獲得できるよう、3カ月間しっかり寄り添います。

 

 4回目は、平川社長の生い立ちと原風景を紹介します。独立1年目の年商はわずか1万4000円だったプロフィット・ラボラトリーがどのように成長してきたのか。

執筆=森部 好樹

1948年佐賀県生まれ。東京大学を卒業後、旧日本興業銀行に入行。香港支店副支店長などを経て興銀証券へ出向。ビックカメラで取締役を務め、2002年、格安メガネチェーン「オンデーズ」を設立し社長に。2007年共同広告社に移り、2008年同社社長に就任。2013年に退社して独立し、顧問業を専門とする会社、ロッキングホースを創業。現在代表取締役。

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