ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
限られた時間と人員でいかに効率よく成果を上げるか、さまざまな取り組みが進められている。期待されているのがRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、AIといった最新テクノロジーによる定型業務の支援だ。今回はパソコンの操作ログを活用した、新たな支援手法を紹介しよう。
オフィスワークをソフトウエアロボットに行わせるRPAは、労働時間短縮を実現する有効な手段の1つだ。毎日のデータ入力など、「誰かがやってくれればいいのに……」と考えていた社員にとっては、まさに大歓迎のテクノロジーだ。ただし、現在のRPAで自動化できるのは定型的な業務、つまり、あらかじめ一定のルールに基づいて繰り返されるパソコン業務に限られる。
それでは、RPAに肩代わりさせる定型業務を切り出すのは簡単なのだろうか。答えは「No」。オフィスワークに従事する社員は、それぞれ自分のルールで仕事をこなしている。アウトプットが同じでも、AさんとBさんでやり方がまったく違うケースがあり得る。Aさんの定型業務が恐ろしく非効率であったら、そのまま自動化しても非効率なやり方は残ったままだ。
非効率な作業の割り出しも難しい。最近は一日中画面を見ながら黙々と作業するスタイルが少なくない。何人かの社員が重複する仕事をしていても、他の社員の仕事内容を把握していないケースもあるので、どの部分が重複し非効率なのかを判断するのは困難だ。
このようなオフィスワークの非効率を分かりやすく見える化するツールが登場し始めた。例えば、「NTT西日本のおまかせAI 働き方みえ~る」は、社内で蓄積されたパソコンの操作ログから多様な仕事の手順を把握。AIを活用して分析する。その分析結果をレポート化して、働き方改革に役立てるソリューションだ。
AIを活用した本ソリューションは、作業内容の繰り返しや重複を記録する。分析レポートには、操作ログから明らかになった作業の手順を示すフロー図が表示される。「この作業はRPAで○○時間短縮可能」「この作業は重複しているので○○時間削減可能」というように、実際の所要時間を基に業務効率化の効果測定ができる。
AIログ分析のユニークな点として、「人が気付いていない」繰り返しのフローをあぶり出せる点が挙げられる。通常のログ分析や業務改善のコンサルティングでは、まず社員に業務内容をヒアリングして繰り返し作業を洗い出し、その作業について分析する。ただ、この方法はヒアリングで洗い出せるかどうかに、全てがかかっている。
おまかせAI 働き方みえ~るはヒアリングを必要としない。何回ヒアリングしても出てこない重複作業や、本人も気付いていない重複作業についても、AIがその時間・回数をあぶり出す。社員が無意識のうちに繰り返す「非効率」を自動的に明らかにし、改善のスピードがアップする。
おまかせAI 働き方みえ~るのほかにも、いくつかの見える化ソリューションが登場している。テンダが提供する「D-Analyzer」は、見える化のコスト増大に悩む企業に向けたプラットフォームだ。各RPAベンダーは、導入に際してコンサルティングを行っているが、業務の見える化ができない状態では効果が得られない。本サービスはログ収集と分析をトータルで提供する。また、NECソリューションイノベータの「NEC 働き方見える化サービス Plus」は、作業にかかった時間をグラフ表示したり、既存勤怠システムと連携したりして業務の見える化を支援する。
操作ログ分析による見える化は、自社のみで行うとその作業自体が大変だ。効率化のために多大な手間がかかるという事態に陥らないためにも、自社に適したソリューションを活用してほしい。
操作ログ分析による見える化は、その後の働き方改革を進める上で重要な役割を果たす。まず挙げられるのはRPAへの展開だ。数多くの業務の中からRPAで自動化する優先順位を決め、効果が望める業務を選び出せる。
また、見える化の過程で明らかになった問題点を見直し、場合によっては業務フロー全体を改めるのも効果的だ。例えば、会議の前に同じファイルを何度も修正して印刷していた場合、会議資料のデータに頻繁な差し替えがあるのかもしれない。それならいっそ、会議のペーパーレス化を進めれば、その非効率を解決できるだろう。
操作ログ分析によって、仕事の「質」を継承するためのヒントが得られるケースもある。特定のベテラン社員だけが行っている業務を分析すれば、ノウハウのマニュアル化に寄与できる。人手不足とともに大きな課題「業務の属人化」を解決し、ベテラン社員でなくても特定業務を行えるようにする。また、担当者の退職、異動に伴う引き継ぎも効率化できる。
企業のパソコン操作ログは、日々膨大な量が蓄積されていく。おまかせAI 働き方みえ~るでは、1年間のログを分析し、より正確な業務の把握をめざしている。例えば、RPA導入後も継続的に分析を行えば、ロボットが有効に活用されているか、どのような導入効果が得られたかを数字で把握できる。
働き方改革が大きなテーマになっている現在、「社員がどんな仕事をどのようにしているか」を知るのは重要なポイントになる。ただし、注意点もある。社員に「会社から監視されている」と、ネガティブな印象を与える可能性がある点だ。だが、操作ログ分析は監視が目的ではない。あくまで業務効率化が目的だ。分析によって「残業が減る」「効率が上がって仕事が楽になる」というメリットを、スタッフにはしっかりと説明すべきだ。また、操作ログを効率化以外の用途に使わないこともあらかじめ周知し、事前に社員の理解を得ておく必要があるだろう。
パソコン操作ログは、IT資産管理ソフトの機能として主にセキュリティの用途で使われてきた。これを業務の把握に活用し、効率化につなげる。まずはパソコンの操作ログを保有しているかどうか確認しよう。ログを取っているならしっかりと分析して、ログを取っていなければログ取得の仕組みを入れるなどして、社員の働き方が見える環境づくりに着手してみてはいかがだろうか。
※掲載している情報は、記事執筆時点のものです
執筆=林 達哉
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