ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
防災週間(2016年8月30日~9月5日)が始まった。地震や台風の多い日本にとって、防災は避けては通れない課題である。地方自治体にとっては住民の安全に直結するテーマだ。多くの防災対策の中で、今、飛躍的に注目度が高まっているのが、情報伝達におけるSNSの活用である。
SNSが注目されたのは、東日本大震災の時だ。通信キャリアの電話がつながらない中で、TwitterなどのSNSが情報収集と情報伝達の手段として活躍した。現地の被災状況の把握や安否確認に利用されたほか、ボランティアの呼びかけもSNSによって発信された。スマートフォンの普及によって、緊急時のコミュニケーション手段の変化を実感させる出来事だったといえるだろう。
広域災害では、何が起きているのか、被害はどれくらいなのか、どこの地区が孤立しているのかといった情報収集と、避難の告知、避難所の準備、救助の指示などの情報伝達が重要になる。これまでは市町村の防災行政無線や通信キャリアの電話、ファクスなどが主な手段となっていた。
ただ、実際に災害が起きた際には、電話の利用が集中することで、電話網に負荷がかかり、通話や通信がしづらい状況が起きる。それが被災地の人々の不安をかき立て、さらなる混乱を招くこともあった。こうした問題は電話に限った話ではなく、大規模災害が起こった場合、すべての情報伝達方法に何らかのトラブルが発生する可能性がある。その前提の下で、少しでも情報伝達の途絶を防ぐためには、できる限り複数の通信手段を用意しておくしかない。
複数の通信手段を考える上でのポイントは、費用対効果のバランスをどう取るかだ。手厚く準備すればその分、コストが増える。例えば、衛星通信。衛星を使った無線通信である衛星通信は、災害の影響を受ける可能性が低く、非常に信頼性の高い通信手段だ。しかし、利用料が高く、平常時には使わない可能性が高いだけに、コスト面での負担は大きくなる。
こうした点で注目されているのが、手軽に導入できるWi-Fi環境である。スマートフォンが普及した今、Wi-Fiは非常に身近な通信手段の1つだ。コミュニケーション基盤としてのWi-Fiは、災害発生時には有力な通信手段となり得る。しかも、観光地など人が多く集まる場所にアクセスポイントを設置することで、災害時だけでなく、平常時には観光客へのサービス向上につなげられる。こうした理由から、Wi-Fi環境の整備が注目されている。
2016年4月に起きた熊本地震では、通信キャリアの電話がつながりにくい中、Wi-Fiが有効利用された。地震が発生し、自治体職員は被害状況の把握と対応、被害の拡大を防止するための安全確保に忙殺されていた。そこで、各通信事業者がWi-Fiのアクセスポイントの無料開放を検討。すぐに実行されたのである。
震度7を観測した翌日、4月15日にはWi-Fiサービスを提供する事業者の1つが熊本県内で無料開放を実施。さらに翌16日に本震が発生し、熊本、大分、鹿児島で強い揺れを観測したことを受けて、対象エリアを九州全域に拡大した。そのほかの事業者も同様な対応を行った。その結果、SNSを通した情報発信と拡散によって、各地の詳細な情報がSNS上に公開され、現状把握に大きく貢献した。
政府もWi-Fi環境の整備の後押しに乗り出している。総務省は平成28年度当初予算として「観光・防災Wi-Fiステーション整備事業」と「公衆無線LAN環境整備支援事業」(総務省ホームページ)を実施した。観光や防災のためにWi-Fi環境の整備を行う地方公共団体や第3セクターに対して、費用の補助を行うものだ。
総務省の整備事業の名称でも明らかなように、Wi-Fi環境の整備は、災害時の通信手段の確保という防災面だけでなく、観光面でもプラスの効果がある。備えあれば憂いなしというが、導入に当たって住民の合意も得られやすい。今後、Wi-Fi環境の整備を推進していく地方自治体の動向に注目したい。
執筆=高橋 秀典
【MT】