Wi-Fiのビジネス活用術(第14回) 高速・多端末の同時接続はビジネスWi-Fi 6で

Wi-Fi ビジネス機器

公開日:2021.03.24

 Wi-Fi(無線LAN)の最新規格であるWi-Fi 6(IEEE802.11ax)が注目されている。複数のアンテナで電波を送受信するWi-Fi 6は、従来のWi-Fi 5(IEEE802.11ac)と比べて通信速度、端末の同時接続数などの性能が大幅に向上した。理論上の最大通信速度はWi-Fi 5が6.9Gbps(ビット/秒)であるのに対し、Wi-Fi 6は9.6Gbpsと1.4倍の高速化が可能だ(実効速度は端末の仕様や使用状況により異なる)。動画などの大容量データも快適に利用できるようになるだろう。

パソコン以外にもWi-Fi接続の端末が増加

 Wi-Fi 6の真価は端末の同時接続数が増えても安定的な通信を行いやすい点だ。Wi-Fi 6では複数端末で同時にWi-Fi環境を利用しても通信が途切れにくい。

 「当社のオフィスには何人も同時接続するほどの社員はいない」という会社もあるだろう。だが、オフィスではノートパソコンで販売管理システムを操作しながら、タブレットで販売データを参照するなど、1人で複数台の端末を利用しながら業務を行うケースも考えられる。また、オフィスのフリーアドレス化に伴い、Wi-Fi対応の小型プリンターを複数台配置すれば、パソコン以外の端末もWi-Fiに接続される。

 さらにオフィスの入り口に顔をかざして体温を測るタブレット型サーマルカメラを設置するケースや、タブレット型の勤怠管理システム、オフィスの様子を録画する防犯カメラなど、さまざまな機器を無線アクセスポイントにつなげる会社もある。多端末の同時接続に対応するWi-Fi 6であれば、今後、増え続けるWi-Fi対応端末にも柔軟に対応できる。

1人複数台の業務端末や映像端末などでWi-Fi端末が増加

各社ビジネスWi-FiのWi-Fi6対応状況比較

 Wi-Fi 6を活用したいと思ったら、Wi-Fi 6対応機器が必要だ。通信機器メーカーなどからWi-Fi 6対応の無線アクセスポイントや、Wi-Fi 6ルーターが提供されている。Wi-Fi製品には家庭向けとビジネス向けがある。量販店などで販売している家庭向けWi-Fi 6ルーターは数万円で購入できるタイプもあるが、オフィスで利用するには高機能なビジネス向けが適している。

 ビジネス向けではWi-Fi機器の購入に加え、Wi-Fiの設定や運用をサポートするサービスの利用を検討したい。例えば、USENの「USEN GATE 02 ビジネスWi-Fi」は、Wi-Fi 6対応の無線アクセスポイントやクラウドによる管理機能をマネージドサービスとして提供。Wi-Fiの運用・保守をサポートし、管理コストの軽減が可能だという。

 また、大塚商会では「たよれーる らくらくWi-Fi」を提供する。Wi-Fi機器によってサービス内容は異なるが、Wi-Fi環境を最適化する運用代行サービスや、障害時のリモートメンテナンスなどの障害復旧サービスを用意している。

NTT西日本でオフィスや店舗・施設などに適したWi-Fi 6モデルを提供

 NTT西日本では、オフィスや店舗・施設などに適した「スマート光ビジネスWi-Fi」を提供する。コストパフォーマンスに優れた「バリュープラン」と、高付加価値機能を備える「ハイエンドプラン」がある。それぞれのプランでは、初期費用(無線アクセスポイントの設計・初期設定、配送費用)がかからずに手軽に導入できる「月額支払い型」、Wi-Fi機器とクラウド利用料を含めた「お買い上げ型」(ハイエンドプランは別途、毎月のサポート料が必要)がある。

 スマート光ビジネスWi-Fiの特徴の1つは簡単さだ。オフィスや店舗に配送された無線アクセスポイントに電源コードと、ルーターにつながるLANケーブルを装着するだけで利用を開始できる。社内ネットワークや社内システムの設定変更は不要だ。

 また、「オフィス安心パック」を利用することで、「Wi-Fiに接続できない」といったトラブルにも専門スタッフが遠隔でサポートする。複数拠点のWi-Fi環境も一括管理で手間なく運用できるといった利点がある。

 ハイエンドプランは「高速性」と「同時接続」が特徴だ。Wi-Fi 5(IEEE802.11ac)規格に対応。理論上の最大スループットは1.3Gbpで、同時に複数人がWi-Fiを利用しても安定した通信が可能だ。端末の最大同時接続数は1台の無線アクセスポイント当たり最大50台を推奨している。

 そして、ハイエンドプランでは、新たに「ハイエンド6プラン」を提供する。最大スループットは2.4Gbps、推奨する最大同時接続数は約100台に増えるなど、複数端末利用時の快適性が向上する。多くの端末の接続が想定されるオフィスや店舗、学校・塾、医療機関、工場など多様なWi-Fiニーズに対応する。

 また、ハイエンドプランの無線アクセスポイントは、クラウドで集中管理できる。トラブルが発生した場合、リモート診断ツールによって、Web経由で原因を確かめられる。新機能追加やバグの修正もクラウド経由で更新できる。

 さまざまな端末がWi-Fiに接続されるようになるとセキュリティが重要になる。ハイエンドプランでは、無線アクセスポイントを識別するSSIDごとにあらかじめMACアドレス(端末固有の番号)を登録。登録された端末のみ接続を許可する接続端末限定機能により、Wi-Fiの不正利用を防げる。社員と来訪者のWi-Fi接続も分けられる。

オフィスの来訪者にもWi-Fi環境を提供

 オフィスのWi-Fiを利用するのは社員だけではない。来訪者もWi-Fi環境を利用できるようにすれば利便性と満足度が向上する。例えば、来訪者向けに企業紹介や製品・サービスのカタログをオフィス入り口のキャビネットに並べる企業もある。紙のカタログに代えて、来訪者にはWebサイトにアクセスして最新の製品・サービスを閲覧してもらう。端末の同時接続数が多いWi-Fi 6であれば、さまざまなサービスが可能になる。

 新しいワークスタイルに合わせたIT環境の整備が企業に求められる中、快適に業務が行えるWi-Fi 6の導入を検討してはどうだろうか。

※掲載している情報は、記事執筆時点のものです

執筆=山崎 俊明

【M】

スマート光ビジネス Wi-Fi

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