Wi-Fiのビジネス活用術(第6回) 実は取り組み続々。外国人観光客向け無料Wi-Fi

Wi-Fi インバウンド対応

公開日:2016.09.14

 2003年、外国人観光客の訪日促進を目的とした「ビジット・ジャパン」事業がスタートしてから13年余り。当時年間500万人程度だった訪日客は2015年度に2000万人を超え、今後も順調な伸びが予想される。リピーター獲得につながる満足度の向上が重要なテーマになりそうだ。

より使いやすいWi-Fi環境整備が必要

 外国人観光客の満足度を向上させるには、まずニーズを的確に把握する必要がある。観光庁が2016年1~3月期に行った「訪日外国人の消費動向」(平成28年1-3月期報告書)では、「日本滞在中にあると便利な情報は?」という問いに対し、半数を超える52.3%の訪日外国人が「無料Wi-Fi」と回答(同報告書 P24 図表5-3)した。無料Wi-Fiの提供エリアの拡大とともに、より使いやすい環境整備が求められている。

 無料Wi-Fiの利用に際しては、情報セキュリティー対策の目的で事前にメールアドレスやパスワードを登録する場合が多い。登録が日本語のみでは、外国人にとって不親切なサービスになってしまう。まずは初回接続時の表示画面を多言語対応にしなければならない。

 また、登録はサービス提供者ごとに必要なので、できるだけ負担を少なくしたほうがよい。NTTBPが2013年に提供を開始した「Japan Connected-free Wi-Fi」は、一度登録すれば、ワンタップでなんと全国約14万5000カ所の無料Wi-Fiに接続できるサービスだ。スマートフォン用の無料アプリとして開発され、オフライン地図のダウンロードやSNSアカウント認証の機能を持っている。英語、中国語など13言語に対応する本サービスの累計ダウンロード数は180万に上る(2016年9月8日現在)。

「つながる」だけから「使える」Wi-Fiへ

 無料Wi-Fiの初期表示画面では、ユーザーに向けてさまざまな情報を配信できる。このスペースを観光情報のポータルとして利用する取り組みが活発に行われている。

 福岡市の「Fukuoka City Wi-Fi」は、移動可能なキャリーバッグ型の臨時無料Wi-Fiスポットをイベント会場に設置。スマートフォンで簡単にオリジナルの記念撮影ができる無料Wi-Fiユーザー専用のセルフ撮影スポットも開設し、好評を博している。

 無料Wi-Fi環境利用者へのサービスとして、独自のプログラムを用意し、地域振興に役立てているケースもある。大阪観光局を中心に自治体、民間企業が共同で運営する「Osaka Free Wi-Fi」では、加盟する約300店舗のクーポンを表示する「Osaka Enjoy Rally」を実施している。

 加盟店でWi-Fi環境に接続した際には、その店舗で使えるクーポンが自動表示される。近くにある店舗を検索する機能も利用でき、地理に不案内な観光客にもうれしいサービスだ。このような無料Wi-Fiの活用法は、その土地ならではの個性をPRする手段として全国に広がりつつある。NTT西日本の「ご当地フリーWi-Fi」紹介サイトでは、各自治体が提供する無料Wi-Fiの導入エリアが紹介されている。

コミュニケーションツールとして活用

 無料Wi-Fiとともに、多くの外国人観光客が訪日時に苦労するポイントが「コミュニケーション」だ。近年外国語の案内表示を目にする機会は増えつつあるが、まだまだ足りないというのが実情。とはいえ、一気に多言語化するには表示スペース確保の問題もある。

 そこで、無料Wi-Fiを多言語コミュニケーションの基盤として活用する動きが本格化してきた。情報通信研究機構(NICT)が開発した「VoiceTra(ボイストラ)」は、スマートフォンに話しかけた音声を外国語に自動翻訳してくれる無料アプリだ。数十の言語に対応し、従来のテキスト翻訳アプリに比べて簡単な操作で使えることが特長である。

 NTTドコモが提供する「はなして翻訳」は、対面でも外国人とコミュニケーションが取れるアプリだ。交互にモバイル端末のボタンを押し合えば、それぞれの母国語が相手の言語に翻訳され、会話を楽しめる。対面翻訳では、英語・中国語・韓国語など10カ国語に対応する。

 音声翻訳においてWi-Fi環境を利用すれば、高速かつ安定して通信できる場合が多く、さらに無料Wi-Fiを使えばコスト負担の問題も解決する。無料Wi-Fi環境を多言語コミュニケーションの基盤として活用する動きが生じている。

 また、観光情報や交通案内といった外国人観光客のニーズが強い情報をQRコード化して看板に掲示し、スマートフォンのカメラで読み取って多言語表示するNTTマーケティングアクトの「QR翻訳サービス」もある。無料Wi-Fi環境の整備によって、このような翻訳サービスの実用性が一層高まっていくと思われる。

無料Wi-Fi環境が社会基盤に

 無料Wi-Fi環境は、外国人観光客の満足度を高める有効なツールだ。これまでどちらかというと「受け身」であった集客スタイルが、クーポン配布や観光案内など積極的にアピールする形に変化しており、全国各地でご当地無料Wi-Fiの検討が進められている。

 さらに、無料Wi-Fi環境の恩恵を受けるのは外国人観光客だけに限らない。地元情報を発信するご当地Wi-Fiは、その土地に住む人々にとっても有効なツールである。例えば、災害発生時の通信手段確保は防災に欠かせない要素だ。無料Wi-Fi環境は、通信会社の電話回線が混み合ってつながらない災害時でも、インターネットに接続できた実績がある。東日本大震災では、避難時にもスマートフォンで情報を入手できた。2016年4月に発生した熊本地震では、多数の無料Wi-Fiスポットが開放され、被災地の人々の情報収集に貢献した。国や地方自治体では、無料Wi-Fi環境を観光、防災の両面で役立つ社会基盤に育てることを目標に、今後も積極的に整備を進めていく方針だ。

 無料Wi-Fi環境の構築に当たっては、情報セキュリティーの問題も重要だ。無料Wi-Fiには、パスワード認証などの情報セキュリティー対策が全く講じられていないサービスもある。簡単に接続できるから便利だと感じられるが、このような信頼性が低い無料Wi-Fiスポットを踏み台にした犯罪の発生も報告されている。無料Wi-Fi環境をより安全に使える環境づくりも重要だ。

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※掲載している情報は、記事執筆時点のものです

執筆=林 達哉

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