ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
顧客満足度(以下CS)の向上が企業経営にとってどれだけ大切なテーマであるかは改めて指摘するまでもないでしょう。CSは決して目新しいテーマではありませんが、企業を存続、発展させるため、永続的に追究し続けなければならない重要な経営テーマの一つと言えます。
ところが、それ程大切なテーマでありながら、「CSとは何か」を経営幹部の方々に改めて尋ねてみると「お客さまの満足度を高めることだ」といった、文字をなぞっただけの返答が返ってきたり、ネット上でよく見かける、必ずしも正確とは言えない定義を正しいものとして理解していたりするケースが多いことに気付きました。
おそらくそれらの主な原因は、CSを構成する「顧客」という言葉も「満足度」という言葉も共に平易な言葉であるため、改めて意味を考える必要性を感じにくいことから、定義の追究等が軽視されてきたからだと考えられます。
これはCSに限りませんが、平易な言葉というのは多様な解釈を生みやすい言葉でもあります。そのため、正しい定義が提示されていなければ、個々の社員がそれぞれ独自の解釈や受け止め方をしてしまう可能性が高まります。
その結果、経営幹部が考えるCSと、個々の社員が考えるCSがバラバラになってしまえば、CS向上に組織一丸となって取り組むことは大変困難なものになってしまいます。
本稿ではCSとは何なのか、CS向上のために企業は何をすべきかを、2回に渡りご紹介します。
では「CS」とは一体何でしょうか。この点で、私は大変危惧していることがあります。ネット上で散見されるCSの定義の多くは「顧客が利用した商品やサービス」に限定して定義付けしている場合が多く、その影響なのか、そうした定義を正しいものとして理解されている幹部の方が多いことです。
確かに、顧客が購入した商品に対する感情はCSの主要なファクターであることは間違いありません。が、それだけでCSが形成される訳ではないのです。
たとえば、あるお客さまが店舗でチョコレートを購入したとします。その際、店舗店員の接客が大変好印象だった場合と、その逆で大変不愉快だった場合とでは、同じ価格、同じ味のチョコレートであっても、お客さまの「満足度」は異なってくるのではないでしょうか。
つまり顧客は、購入した商品や利用したサービスだけで無く、それらを提供している企業とのさまざまな「接する機会」(=接点)を通じて「満足度」というものを形成させているのです。
以上のようなことを踏まえ、つまり「接点」という言葉を用いて、改めてCSを定義すると次のように表現することが出来ます。
『CSとは、顧客が(主に自分が利用または購入する)商品やサービスを提供している企業とのさまざまな「接点」の機会を通じて形成される、企業や商品等に対する満足の度合いや感情的な評価』
さて、この定義を読んで気付かれたと思いますが、CSを理解し、向上させるには「接点」とは何かについても具体的に理解し、且つ組織で把握しておくことが重要になります。
CSを理解する上で重要な鍵となる「接点」については、具体的な事例でご紹介したいと思います。ドライブ中にレストランに立ち寄って昼食をすることにした顧客の場合としますので、読者の皆さんはその顧客になったつもりで想像しながら読んで下さい。
ドライブをしていたある顧客はお昼時の時間となったので、食事をしようと考えていたところ、丁度レストランの道案内をしている大きな看板が前方に見えたのでそのレストランに向かうことにしました。おわかりでしょうか。この看板は、そのレストランを運営している企業と顧客の「接点」になります。
道案内に従って車を走らせていると、レストランの外観、具体的には店の看板や建物の壁、窓、ひさし、のぼり、駐車場等が目に飛び込んできましたが、それらも全て「接点」です。その顧客は駐車場に車を駐めることにしましたが、白線が全て消えかかっており、駐車しにくいと感じました。この駐車場の白線も「接点」となってきます。
車を降りた顧客はレストランに入るために扉を開けようとしたら、今度はノブ(取っ手)が汚れていて、少し不快感を覚えました。このノブも「接点」となります。
ホールスタッフが近付いてきてテーブルまで案内されることになりましたが、この場面ではどのような接点があるか考えてみて下さい。顧客が触れるもの、目にするもの、耳にするもの、感じるもの等が「接点」となりますので、たとえばホールスタッフの顔の表情、ユニフォーム、接客時の台詞、エスコートの仕方等々が「接点」として挙げられます。
テーブルに案内された顧客はイスに腰をおろしました。この場面でも「接点」を考えてみましょう。イスの座り心地、テーブル上にあるタバスコやメニュー表、座った目線の先に飾ってある絵画等、これらも全て「接点」なのです。
以上、道路沿いの看板から始まって着席するまでの行程で、まだ食事をしていない段階なのに実にたくさんの「接点」があることにお気付き頂けたでしょうか。
顧客にとってはこうした「接点」の一つ一つを通じて、満足度というものを形成させています。従って、仮にこの後提供された料理の味には満足できたとしても、駐車場の白線をはじめとしたさまざまな接点でもし「小さな不満」が多数蓄積されていたとすれば、トータルでの満足度はかなり低減することになります。
これまでのお話をまとめると、CSを向上させるには、顧客に提供しているサービスや商品の満足度だけを追究すれば良いのではなく、企業と顧客とのありとあらゆる「接点」を詳細に洗い出し、それら全ての「接点」において満足して頂けるよう努力する必要があるということです。
その接点を詳細に洗い出すという意味で特に大切になる取り組みが、これ以上無理だと思えるぐらい「接点を細分化」することです。
たとえば前出の事例のように、駐車場付き店舗を運営している企業にとって「駐車場」は顧客との「接点」の一つと言えますが、接点を「駐車場」という段階で終わらせるのではなく、更に「白線」、「敷地アスファルトの状況」、「車止め」、「駐車場内の看板や注意書き」等々といった具合に細分化し、それを「接点」として抽出させることです。
この「接点」を細分化させるという取り組みは大変な作業ではありますが、その苦労に見合う大きなメリットがあります。その1つが、接点を詳細に洗い出すこと自体で見落とされていた接点が発見されたり、意識が及んでいなかった接点が社内で意識されるようになったりすることで、それだけでもCS向上が期待できることです。
次に接点が細分化されれば、接点ごとのCS向上策の発案が容易になること。たとえば「駐車場」というテーマでCS向上策を考えるのは難しいですが、それが「駐車場の白線」となれば、「白線が見えにくくなっていないかチェックし、見えにくい場合は再塗装する」といった具合に発案しやすくなります。
更に、明瞭な発案に基づく取り組みは社員へ容易且つ明確に伝えることが出来るようにもなりますので、組織全体にCS向上策を理解、浸透させやすくなるメリットも生じます。
そうした一つ一つの接点について、顧客の立場になって策を練り、実行し、顧客の評価等を踏まえてまた新たな策を練る、つまりPDCAサイクルを通じて接点毎に満足度を高めてゆく地道な努力の積み重ねが、顧客、ひいては社会からの「大きな満足度や信頼」等へと繋がってゆくのです。
では次回は、接点を重視したCS向上に取り組むため、実はもう一つ理解しておく必要のある満足度があるのですが、そのもう一つの満足度とは何か等についてご紹介致します。
※掲載している情報は、記事執筆時点(2015年1月30日)のものです。
執筆=相澤 幸広
教育分野を中心とした経営コンサルティング企業で経験を積んだ後、経営コンサルタントとして独立。企画立案やCSをテーマとした企業コンサルティングを行っている他、事業構想等を企画書としてまとめる企画ストラクチャー業務や、ビジネスマン向けの教材や講座開発等も手掛けている。趣味は映画鑑賞。
【T】
必見!「CS(顧客満足)」向上を実現するには