先輩・上司のための若手指導のツボ(第3回) 「使えない議事録」を卒業させる――先輩が渡すべきテンプレートと添削のコツ

スキルアップ 働き方改革業務課題

公開日:2026.10.29

 議事録の作成は、若手に任せることの多い作業の1つだ。しかし提出された議事録を見て、先輩や上司が「これでは使い物にならない」と感じる場面は少なくない。要点を的確に押さえた「使える議事録」を書けるようになってもらうには、どのように指導すればよいのだろうか。今回は、会議前の指導、渡すべきテンプレート、そして提出後の添削のコツを整理する。

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議事録作成は「若手が業務を覚えるための近道」と伝えよう

議事録の目的を若手に理解してもらう

 まず若手に伝えたいのは、議事録の作成は雑務ではなく、仕事を覚えるための近道だという点だ。会議の内容を的確にまとめる訓練を通じて業務への理解が深まり、本人の成長にもつながる。先輩や上司にとっても、若手が書いた議事録を読めば、その若手が業務をどれだけ理解しているかが手に取るように分かる。

 議事録は、会議の内容を一字一句そのまま再現するものではない。第一の目的は、決定事項・未決事項・ToDoとその期限・担当者を明確化し、次の行動を促すことにある。そのためには、発言を時系列で羅列するのではなく、目的別に「整理」して書く姿勢が欠かせない。まずはその点を若手に共有しよう。

 第二の目的は、欠席者や他部署などへの情報共有だ。第三には、参加者同士の認識のズレを直すためでもある。会議の場では合意したつもりでも、前提や合意の範囲が食い違う場合がある。事後に議事録を共有すれば、そうした溝を埋められる。

会議前に若手へ渡したい下準備

 会議の内容を的確に記録できるようにするには、会議の目的や議題を事前に把握してもらうのが有効だ。そのためにも、会議のアジェンダや前回の議事録をあらかじめ読んでもらおう。前回の未決事項やToDoを把握できれば、今回の会議で扱われる話題を予測しやすく、議論についていきやすくなる。分からない専門用語を事前に調べるきっかけにもなる。今回の議題が事前に決まっていれば、併せて共有しておきたい。

録音・自動文字起こし・生成AI要約を使うときの注意点

録音は補助と割り切り、メモを基本にする

 スマートフォンの録音機能やボイスレコーダーを使って会議を録音しようとする若手もいるだろう。しかし、会議全体を聞き直す時間は取れない。メモを取るのが基本だ、と若手にはまず伝えたい。録音はあくまで補助として、聞き逃した箇所を後から確認する用途にとどめるとよい。

自動文字起こしはあくまで下書きにとどめる

 最近では、録音した会議の音声を自動で文字起こしするツールも普及している。手軽さから活用したい若手もいるはずだが、自動文字起こしだけで議事録を仕上げるのは望ましくない。音声認識の精度の問題に加えて、議事録は会議の最初から最後までを再現するものではなく、議事内容を整理するための文書だからだ。自動文字起こしはベースにとどめ、そこから要点を取捨選択して整理させよう。

生成AI要約に頼り切らない――現時点の限界を知る

 要約を生成AI(Generative AI)に任せようとする若手も出てくるだろう。Microsoft 365 Copilot、Google Workspaceの「Take notes for me」、Zoom AI Companionなど、主要な会議プラットフォームには、決定事項やアクションアイテムを構造化して抽出する機能が実装されている。ただし、現時点の生成AIには依然として次のような限界がある。決定事項と検討中の事項が取り違えられる、発言者が誤って結び付けられる、合意の前提条件や例外が抜け落ちる、ToDoの一部が欠落する、といった事象だ。各社の公式ヘルプでも、要約は簡潔化のため詳細を省く場合がある旨が案内されている。生成AIの要約はあくまで下書きと位置付け、最終的な整理は若手自身に行わせよう。議事録作成は業務理解を深める機会だと捉え、まずは若手自身に整理させたい。

若手に渡したい議事録テンプレート

テンプレートに入れるべき項目

 議事録に入れる項目をあらかじめ決めたテンプレートを事前に渡しておけば、議事録作成者は会議中の発言をその都度、該当する項目へ振り分けていける。項目単位で分類する行為そのものが思考の整理につながり、結果として内容も自然とまとまる。

 以下、テンプレート項目の例を挙げる。

表1 議事録テンプレートに入れる項目例

項目 記載する内容
タイトル 会議名など
基本情報 開催日、開始/終了時刻、場所(オンライン会議の場合はURLなど)、出席者/欠席者、議事録の作成者/承認者
議題 当日扱う議題を箇条書きで
決定事項(議題ごと) 決まった内容と、条件があればその条件
ToDo/タスク(議題ごと) 次にすべきこと、期限、担当者
未決事項(議題ごと) 確認すべき内容、確認先、期限、担当者
次回予定 日時、場所、予定議題
備考・補足 重要な反対意見など

 
 ただし、アイデアを自由に出し合う会議など、結論に至る流れを分かりやすくしたい場合は、発言を時系列で記録した方が読みやすい場合もある。会議の性格に応じて、テンプレートに固執せず柔軟に運用したい。

提出後の添削で若手を伸ばす

会議から24時間以内を目安に提出させる

 議事録の作成者も添削する先輩・上司も、会議から時間がたつにつれて記憶は薄れていく。会議から24時間以内を目安に議事録を提出させ、双方の記憶が新しいうちに添削と訂正を進めるのが望ましい。

添削で見るべき4つのポイント

 以下の4つの観点を軸に添削すると、若手の議事録は着実に整っていく。

(1)省略補完と「5W2H」

 議事録では、会話の中で省略されがちな主語・目的語・指示語を補って明確化する必要がある。後日の議事確認に耐える文書にするためだ。When(いつ)/Where(どこで)/Who(誰が)/What(何を)/Why(なぜ)/How(どうやって)/How much(いくら)の「5W2H」を意識させよう。とりわけ「Who」に関連して、発言者は必ず明記させたい。後日の「言った/言わない」のトラブルの発生を防ぐためだ。

(2)簡潔にまとめる

 冗長な文章ではなく、簡潔な箇条書きが読みやすい。短くまとめるには議題への理解が欠かせないが、これも仕事を覚える機会だと若手に伝えよう。二重否定を用いない、体言止めを活用する、といった工夫でも文章は引き締まる。

(3)文体を統一する

 口語ではなく文語に統一させよう。議事録もビジネス文書の1つで、くだけた表現は避けたい。「だ・である調」と「です・ます調」も、どちらかに統一させよう。

(4)事実と意見・数値・固有名詞・時期表現

 以下の点にも注意して添削するとよいだろう。

・発言の中の事実と意見を区別して書かせよう。読み手が事実と意見を分けて判断できるようにするためだ。
・形容詞ではなく、可能な限り具体的な数値を記載させよう。 
 例:「多数」→「約3000個」
・固有名詞は、正式名称または正しい略称で書かせよう。会話では通称や不正確な表現が使われがちだからだ。
・「来週」「来月」などの相対的な時期表現は避け、「11月」「12月第1週」のように具体的な時期に置き換えさせよう。

最後に、誤字・脱字を防ぐため、Wordの文章校正ツールなどを活用するのも有効だ。

添削済みの議事録を「型」としてチームに蓄積する

 添削を重ねて完成度が高まった議事録やテンプレートは、若手1人の成果物にとどめず、チームの「型」として蓄積・共有したい。先輩の添削が反映された実例が残っていれば、次に配属された若手も「使える議事録」の具体像をつかみやすい。指導する側も、同じ説明を毎回繰り返さずに済む。

 ただし、議事録が個人のPCやメールの添付ファイルに散らばっていると、必要なときに見つからない。テンプレートの版が乱立し、古い版が使われ続けるおそれもある。テンプレートと過去の議事録は保存先を1カ所に決め、会議名や日付、キーワードで検索できる状態にしておくとよい。

 こうした一元管理の手段として、クラウドストレージの活用も選択肢の1つだ。例えば議事録テンプレートや過去の議事録を一元管理・検索できるサービスを使えば、先輩が添削したテンプレートや好例をストックし、若手がいつでも参照できる環境を整えやすい。Microsoft Teamsとの連携にも対応していれば、日頃のやり取りの延長で必要なファイルにたどり着ける点も心強い。

おわりに

 議事録が「使えない」原因の多くは、若手個人の能力の問題ではなく、目的の共有・テンプレート・添削フィードバックといった仕組みが整っていない点にある。会議前に目的を伝え、テンプレートを渡し、提出後に丁寧に添削する。この3段階を先輩・上司が回すだけで、若手の議事録は驚くほど変わっていく。さらに、添削済みの議事録やテンプレートを「型」としてチームで蓄積・共有していけば、次に続く若手の立ち上がりも早くなるはずだ。

 議事録作成は、業務理解を深めながら若手を育てる有効な手段の1つでもある。「使えない議事録」への不満を口にする前に、まずはテンプレートを1枚配るところから始めてみてはいかがだろうか。

※掲載している情報は、記事執筆時点のものです。

執筆=高橋 秀典

【TP】

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