ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
西日本の豊かな自然に恵まれた漁港にあるF漁業協同組合。組合員向けに漁船の燃料や漁具、保険などを取り扱い、仕入れや販売データなどは組合のパソコンで管理、保管してきた。しかし、パソコンのディスク障害によるデータ消失リスクがあり、BCP対策として外部の記憶装置やクラウドサービスを利用するデータ保管方法を検討することになった。
NASとクラウドストレージのメリットとデメリットを比較検討した結果、クラウドストレージを採用。決め手は、強固なセキュリティを保つ国内データセンターでデータが保管される点や導入から運用まで困った時に頼れるサポート窓口が充実していることだ。組合ではデータの保管のみならず、職員が外出時や自宅など事務所外から安心してクラウドストレージへアクセスできるようになり、他の漁業協同組合に先駆けて働き方改革を進めている。
F漁業協同組合は、瀬戸内海で捕れた新鮮な魚介類を関西や首都圏に届け、飲食店や消費者から高い評価を得てきた歴史を持つ。組合では地域の漁業活性化や組合員の仕事と生活に役立つさまざまな事業を展開してきた。他の組合と同様に漁船の燃料や漁具などのあっせん・販売や事業資金の貸し付け、保険の取り扱いなどはその一例だ。
例えば、燃料の受発注は燃料会社など取引先とメールや電話、FAXを使ってやり取りされ、取引データは帳簿に記帳する他、職員がノートパソコンに入力し管理してきた。しかし、F漁業協同組合の職員数は数名のためできるだけ業務を効率化したい。そこで、帳簿への記載からデータで一元管理する方法へと仕事のやり方を変更することにした。
ここで問題になったのがデータの保管方法だ。職員のノートパソコンにデータを保管しているが、ノートパソコンが故障してデータが消失したり、盗難・紛失で情報漏えいしたりするリスクがある。また、漁業協同組合は漁港にあり、自然災害などで組合事務所が被害に遭うリスクもないとは言えない。
そして、BCP対策の観点から、データ保管先としてNASまたはクラウドストレージの導入をIT事業者から推奨されたこともあり、それぞれのメリット、デメリットを比較検討することになった。
組合事務所にオンプレミスで設置するNASはライセンスが不要で、比較的簡単、低コストに設置できるメリットがある。職員に専任のIT担当者がいないため、運用の手間がそれほどかからないこともポイントだ。ただ、災害や経年劣化による機器故障でデータを消失するリスクもある。そのため、クラウドにバックアップするなど対策が必要になることもある。アクセス権設定などセキュリティ対策や将来的にディスク容量の増設が必要になる場合もある。
一方、クラウドストレージはさまざまなサービスが国内外の事業者から提供され、インターネット接続環境があれば、いつでも、どこからでも利用が可能だ。また、アクセス権限の設定などセキュアで柔軟なユーザー管理が可能といったメリットがある。ただし、データバックアップなどのサービス内容や料金プラン、障害時の対応などはサービス提供事業者に依存するので事前の検討が必要だ。
F漁業協同組合では、BCP対策としてクラウドストレージの方に優位性があると判断した。そして、手軽な月額利用料金や国内のデータセンターで運用されている安心感、導入・運用時のサポート体制などを評価してサービスを決めた。
組合が導入したクラウドストレージは、初期費用が不要で、月額利用料が手軽なコストで始められるというものだった。データは国内のデータセンターで保管され、複数のデータセンター間で同時に複製を行うため、BCP対策にも適している。前述のように組合には専任のIT担当者がいないため、導入後に職員が使いこなせるかが懸念された。導入したクラウドストレージは、導入までの準備をヘルプデスクがマニュアルの説明などを行い、スムーズに進めることができる。サービスの利用開始後、操作方法などで困った時には電話でのサポートが受けられることも、職員の不安を払拭した。
導入効果はさまざまな場面で現れている。その一つは情報共有がスムーズに行えるようになった点だ。組合の職員数は数名とはいえ、組合員宅への訪問などで外出する機会も多く、いつも事務所で職員がそろって仕事をしているわけではない。そのため、文書ファイルをメールに添付して職員同士でやり取りしたり、取引先や組合員から書類ファイルがメールに添付されて送られたりすることも少なくない。
メールの場合、必要なファイルを見つけるのに時間がかかることもあった。だが、導入後は社内共有フォルダにファイルを保存し、組合員からメールで送られた書類を職員が確認後、フォルダに格納することで職員のファイル共有がスムーズに行えるようになった。また、職員のパソコンに保存・管理していた漁船の燃料などの取引データも、社内共有フォルダに保存し、必要に応じて職員がデータを更新するといったワークフローに変更。これにより、組合の管理職と職員は常に最新のデータを参照しながら業務が行えるようになった。
さらに、組合員宅への訪問時にもクラウドストレージを活用している。漁具などの注文時にメーカーのホームページで商品内容を確認後、保存された見積書などのファイルを参照。従来は、一度事務所に戻って見積書などを確認していたが、インターネット接続環境があれば、いつでも、どこでもアクセスできるクラウドストレージの利点を生かした業務の進め方が可能になった。
今後、取引先ごとのファイル共有が可能なプロジェクトフォルダを活用し、漁具などの新製品の情報を共有する仕組みをつくる構想もある。カタログに代えてデジタル化されたファイルをクラウドストレージ上で管理することにより、情報の検索が容易になるほか、組合事務所の省スペース化、ペーパーレス化とともに、組合員へのサービス向上が加速すると見ている。
執筆=山崎 俊明
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