ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
西日本で保険サービスを展開するD社。各保険会社の代理店としてさまざまな保険商品を取り扱い、営業職員の専門的な知識を生かして顧客へのきめ細かな対応で事業を拡大してきた。保険契約書類などの文書はPDFファイルとして本社に設置したネットワーク型ストレージのNASに保存していたものの、文書ファイルの他、保険商品の研修ビデオなどの大容量ファイルの保存ニーズが高まり、NASのリプレースを検討することになった。
しかし、従来のようにNASをオンプレミスで導入・運用するとなるとイニシャルコストがかかり、データ容量を増やす場合、再び買い換えが必要となる可能性もある。そこで、初期費用が不要で容量や利用者のIDを柔軟に追加できるクラウドストレージを導入。これらの利用によって、ファイル保存だけでなく、顧客先でもタブレット端末を用いて商品カタログを見せるなど顧客サービスの向上にも効果を発揮している。
大手保険会社では業務のデジタル化が進むが、D社のように営業職員が十数名、営業拠点も数カ所と中小規模の保険サービス会社ではIT化が道半ばという例も多い。営業職員は訪問先でタブレット端末に顧客情報などを入力するものの、契約書類などは取り扱う保険会社の書式も異なることから、紙ベースで行ってきた。そして、帰社後に営業拠点の端末に入力する他、VPN通信網を介して本社のNASに契約書類を保存し、必要に応じて参照するなどファイルサーバーのように使っていた。信頼性の高いHDDを搭載するNASはデータの保存先として適しているものの、保存するデータが増えてくるとHDDの増設や上位機種へのリプレースが必要になることもある。
そこで、D社ではデータ容量が数TB(テラバイト)のNASを数年前に導入。導入当時は十分な容量だと思われたが、保険サービスの業務拡大とともに契約書類の他、各保険会社の商品カタログや販売マニュアルが増加。さらに今後、業務のデジタル化が進めば、取り扱うデータは増えることはあっても減ることはないと判断。そこで、NASをオンプレミスでリプレースするのではなく、クラウドサービスとして提供されるストレージのほうが将来のデータ容量の増大にも柔軟に対応でき、イニシャルコストも抑えられると考え、クラウドストレージの利活用に取り組むこととなった。
D社が導入したクラウドストレージサービスは、インターネット接続環境が整っていれば、初期費用や利用を止めた場合の解約金はかからないというもの。また、データ容量と利用者のID数によって自社に合ったプランが選べ、将来、データ容量や利用者が増えても柔軟に追加できるメリットもある。NASに保存していたデータをクラウドストレージに移行する必要があるが、データ転送ツールを利用することで簡単に移行可能な点も大きな利点だ。また、各営業拠点の端末に保管していたデータも、拠点ごとのフォルダーを設け、ドラッグ&ドロップでデータを移行するなど従来のファイル操作の使い勝手を変えることなく、クラウドストレージの利用を開始している。
導入の効果はさまざまな面に出ている。例えば、営業職員であれば顧客訪問時に各保険会社の商品カタログを持ち歩かなくても済むようになった。従来のNASでも商品カタログをPDFファイルとして保管していたが、営業拠点からNASにアクセスするためにはVPNを経由する必要があり、顧客先からはアクセスが難しい。また、Webブラウザーを用いてインターネット経由でNASへリモートアクセスも可能だったが、同時接続数に制限があった。導入によってこうした制約が解消。顧客先ではタブレット端末を用いてクラウドストレージに保管した各社の商品カタログを見比べながら商品説明が可能になった。そして帰社後に顧客が関心を持つ商品カタログを郵送したり、改めて訪問した際に手渡したりするなどきめ細かな顧客サービスも実現した。
D社では保険商品の特徴や販売方法などを学ぶ研修を定期的に実施。本社で集合研修を行う他、研修内容をビデオ録画し、クラウドストレージに保存する仕組みにした。これにより、集合研修に参加できなかった職員は都合のいいときに営業拠点や自宅などからタブレット端末で研修ビデオを視聴できる。クラウドストレージの活用により、営業職員の商品知識を深めるとともにワークライフバランスを考慮した柔軟な働き方によって離職を防ぐなど、働きやすい職場環境づくりを進めている。
クラウドストレージに保管する契約書類は個人情報が含まれるのでセキュリティが重要になる。NASを利用していたときにも、いつ、だれが、どのファイルに、何をしたのかなどファイル操作のアクセス履歴や、ファイルの暗号化、アクセス権限の設定が可能だった。D社が導入したクラウドストレージも、操作アクセスの追跡やデータの自動暗号化、アクセス権設定などのセキュリティ機能が充実している点が採用を後押しした。また、契約書類などのファイル保管だけでなく、社内外の情報を交換・共有する場として利用可能だ。例えばプロジェクトフォルダーを設け、職域営業など大型案件の情報を営業拠点や本社の関係者と共有しながら、契約獲得に向けて職員が協力することも可能だ。今後、D社では総務や経理などの部門にもクラウドストレージの利用を広げ、幅広い業務で活用する計画だ。
執筆=山崎 俊明
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