ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
関西で屋外看板レンタル業を営むE社。社員は10名あまりの企業だが、立地のいいビルの屋上や壁面などに設置した広告看板スペースのレンタルで成長を続けてきた。屋外看板はチラシ広告などと異なり、広告を出し続けている間は人目に付くことから、新製品の広告や飲食店案内などで根強い需要がある。同社では屋外看板の広告デザインなども手掛け、製作にCADを活用。CADデータは社内のNASに保管してきたが、テレワークに伴うデータ共有やデータバックアップなどのBCP(事業継続計画)対策が課題だった。これらを解消するためクラウドストレージサービスを導入。社内・社外とのスムーズなデータ共有が可能になった他、高信頼性のデータ保管を実現した。
E社の強みは屋外看板広告にかかわる広告デザインから設置・施工、定期的なメンテナンスなどをトータルに提供できることだ。かつて広告デザインは専門の事業者に外注していたが、事業拡大に伴いデザイナーを雇い入れて内製化している。営業担当者は顧客の広告デザインの要望を社内に持ち帰り、デザイナーがデザインソフトとCADを用いて屋外看板広告を製作する。そして、営業担当者はそのCADデータをパソコンに保存し、顧客先に出向いて内容を確認してもらった後、デザイナーが修正、完成させるといった具合だ。
CADデータは社内LAN上のNASに保管してきたが、いくつかの課題があった。NASは手軽に導入できるものの保存するデータ容量が増えてくればディスクの増設が必要になる。また、NASの故障によるデータ消失のリスクもあり、BCP対策の観点からも信頼性の高いデータ保管の仕組みが課題だった。そして、一番の課題はデータの共有だ。E社はコロナ禍の中でテレワークを導入し、デザイナーや営業担当者が必要に応じて自宅でも業務を行える環境を整えてきた。ここで課題となったのがデータのやり取りだ。デザイナーが自宅で作成した広告デザインのCADデータは大容量のため、メールの添付ファイルでやり取りすることができない。また、自宅と会社を閉域網で接続してNASにアクセスする方法もあるが、ネットワークの設定作業には専門的知識が必要となる。そこで、インターネットを介してどこからでも手軽に利用できるクラウドストレージサービスを検討することになった。
E社では社内・社外と簡単にファイル共有が行えることと、セキュリティが充実していることに重きを置いて検討した。導入したサービスは、全社共有のフォルダ、個人用のフォルダ、社外共有のプロジェクトフォルダの3種類があり、最大10GB(ギガバイト)までの大容量データの共有が可能だ。
このためデザイナーは自宅やオフィスで作成したCADデータを顧客の案件ごとに設けたプロジェクトフォルダに格納し、営業担当者はプロジェクトフォルダにアクセスすることでCADデータが顧客要望に添ったデザインに仕上がっているかを確認できる。社内のNASを保管していた時には、営業担当者は社内にいなければ確認作業ができなかったが、クラウドストレージに変更したことで自宅や外出先からも閲覧でき、スムーズな業務と柔軟な働き方を実現した。また、顧客に広告デザインを確認してもらう場合、従来は営業担当者のパソコンにCADデータを保存して顧客訪問をしたり、遠方の顧客にはDVDなどのメディアに保存して郵送するなどしたりしていた。クラウドストレージ導入後は、期限付き共有リンクのURLを発行することで顧客ともセキュアなデータ共有ができるようになった。営業担当者はアポを取って訪問する必要がなく、顧客は手の空いている時間に広告デザインを確認するなど、E社と顧客企業の双方の業務効率化をも可能にしている。
導入の大きな決め手となったのがセキュリティだ。導入したサービスはすべてのフォルダにアクセス権を設定できる他、プロジェクトフォルダ内のデータについても、プレビューのみ、ダウンロード/アップロードの可否、有効期限などの設定が可能だ。また、保存したデータは複数のデータセンターで同時に複製を行うためBCP対策にも適している。NASの場合、自然災害などに備えたBCP対策では、同じ場所に複数のNASを設置しても効果は薄い。例えば、離れた地域に複数拠点を構える企業は、NASを複数カ所に振り分けてバックアップしてBCP対策を講じることは可能だが、E社のように拠点が1カ所の企業の場合、クラウドストレージを活用し、BCP対策やセキュリティが整ったサービスを利用する方が理にかなっていると言えるだろう。
その他、サービスの導入は業務の可視化にも効果を発揮している。屋外広告はその大きさや地域によって、自治体への申請・許可が必要な場合もある。E社では各種の申請書類などもクラウドストレージに保存し、共有を図った。従来は社員のパソコンに保存していたが、全社で共有することにより、申請・許可の進捗状況なども把握しやすくなった。
さらにIT担当者の負荷軽減の面でも役立っている。E社は専任のIT担当者がおらず、総務担当者が兼務し、NASの運用も任されている。以前は万一のトラブル対応などに不安もあったというが、ヘルプデスクによる電話サポートなども担当者の大きな安心につながっている。
執筆=山崎 俊明
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