ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
関西を中心に西日本で医療機器を販売するC社。同社では、営業担当者が担当する地域の医療機関から注文を受け付け、医療機器メーカーへの発注や納期などをそれぞれのパソコンなどで管理していた。この中で、営業担当者が外出中に事務所へ医療機関から納期確認などの問い合わせがあった場合、社内では即答できないなどの課題に加え、機器の故障や災害によるデータ消失のリスクもあった。そこで社内のデータ共有や災害時などのBCP(事業継続計画)対策としてクラウドストレージを導入。営業担当者が外出中でも顧客からの問い合わせに的確に対応できるようになり、社外でも営業担当者が安全にデータを参照して医療機関へのタイムリーな提案が可能になるなど、さまざまな効果を上げている。
C社は、主に検体を検査する体外診断用医療機器や検査用試薬・消耗品などを取り扱い、病院や診療所の検査ニーズに対応してきた。本社移転を契機に社内ネットワーク環境を見直し、インターネット接続などで利用されるルーターをはじめ、高速な社内LANに向けてスイッチやWi-Fiを入れ替えている。こうした中で、ネットワーク環境の刷新とともに医療機器の販売データなどの保管場所が課題だった。
従来、営業担当者が医療機関から注文を受けた商品在庫や納期情報は表計算ソフトで作成した台帳に記録し、自身のパソコンなどに保存していた。営業部には医療機器メーカーへの発注データなどを管理する社員共通端末はあったものの、医療機関への納期などのデータは各担当者が把握・管理していた。そのため、在庫や納期などについて医療機関から電話で問い合わせがあった場合、担当者が在席していなければ他の社員は即答できず、担当者に電話のメモを残したり、携帯電話に伝言したりするなど、顧客対応や業務効率化の上で課題だった。そこで、社内で発注や納期などのデータを共有できる仕組みが求められていた。
データの安全な保管も懸念材料だった。営業担当者が持ち歩くノートパソコンの記憶容量は制限があるため外付けのHDDを利用する人もいたが、落下などの衝撃で破損し、保存データを消失するリスクもあった。ノートパソコンについても、外出先での盗難・紛失や、災害などで物理的に壊れるリスクも考えられ、BCP対策の観点からも安全にデータを保管・管理できる仕組みが求められていた。
C社では高速な社内LANに刷新したこともあり、まずファイルサーバーの設置を検討した。しかし、サーバーの導入・運用に手間とコストがかかることや、社内に設置するため、災害などでサーバーに保管したデータが消失するリスクもあると判断した。
次に、サーバーの導入・運用の手間をかけずに手軽にデータを共有でき、BCP対策にも効果的な方法として、クラウドストレージに着目。だが、専任のIT部門がなく、営業担当者や内勤社員がクラウドストレージを使いこなせるかが懸念された。そのため、操作性に力点を置き、導入するサービスを慎重に検討していった。
こうした過程を経て、C社が採用したクラウドストレージは、データをクラウド上に安全に保管しつつ、使い慣れたパソコンと同様にフォルダ操作する感覚で利用できるものだった。営業担当者は従来と同じように表計算ソフトで作成した台帳のファイルをドラッグアンドドロップする簡単な操作でクラウドストレージ上にある全社共通のフォルダに格納できる。また、導入したクラウドストレージは、ファイル閲覧に便利なプレビュー機能があり、各種端末やスマホなどのWebブラウザーから手軽に利用できる。さらにポリシー設定により、Microsoft Officeと連携した表計算ソフトなどのプレビューファイル閲覧も可能なものだった。
C社にとって、クラウドストレージの導入効果はさまざまだ。例えば、内勤社員はファイル共有により、在庫や納期を確認して問い合わせに即答できる。かつてのように、営業担当者にメモを残す必要もない。営業担当者側は、病院訪問中にスマホからクラウドストレージにアクセスし、即座に検査用試薬などの在庫や納期のデータを確認して病院の検査担当者に伝えるなど顧客対応の向上に役立てている。そして、データが強固なセキュリティや防災設備などが整ったデータセンターに保管されている安心感もある。
BCP対策はパソコンの故障や災害だけではない。コロナ禍のようなパンデミックの中でも力を発揮する。C社には、医療機関が必要とする機器や試薬などの注文を受け付け、迅速に届ける使命がある。そのミッションを遂行する上で、いつでも、どこでも必要なデータにアクセスして業務を継続できるクラウドストレージはこれからもビジネスの大きな力になるだろう。
今後、C社は営業部門に加え、総務や経理部門などが扱うデータについてもクラウドスレージに保管する計画だ。重要なデータはアクセス権限を設定するなどで安全にデータを管理する。医薬品や医療機器を扱う事業者は、製品の品質管理や安全管理が重要となる。保管データについても、利便性だけでなく、安全性を重視することで、医療機関からの信頼を得られるとC社では考えている。
執筆=山崎 俊明
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