ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
関西で不動産業を展開するB社。小規模な会社だが、顧客に寄り添い、地域密着の事業展開で発展してきた。その事業を支えるのが人材だ。顧客満足の向上とともに、従業員満足度を高めるため働き方の改革に取り組む。取り扱う不動産の現地に顧客を案内するといった事業の特性もあり、テレワークは実施していないものの、自宅や現地など社外から物件データにアクセスできるよう、クラウドストレージサービスを導入。社長や従業員のデータ共有が容易になるだけでなく、データをセキュアに管理しながら現地での閲覧が可能になるなど働き方改革にも効果を上げている。
B社では一戸建て住宅やマンションなどの不動産情報をパソコンで管理してきた。例えば、住宅販売会社からFAXやメールで送付された物件の情報を従業員が管理用パソコンに入力してデータで管理するほか、自社のホームページに物件情報を公開してインターネットで閲覧できるようにするなど、ITを活用しながら事業を拡大してきた。
事業を進める中で課題となったのが物件データの共有だ。物件情報の管理用パソコンは会社に1台のみ。例えば、社長が休日に自宅でデータを参照しながら事業計画を考えるといったような場合、管理用パソコンから必要なデータをUSBメモリーに保存する必要がある。USBにデータを移す手間がかかるだけでなく、他のデータを参照したい場合、USBに入っていなければ見ることができず、利便性や業務効率性の点でも課題があった。加えて、情報漏えいの懸念もある。USBを自宅に持ち帰る際、万一、紛失すると物件情報や顧客情報などが流出するリスクもあり、データ管理が大きなリスク要因になっていた。
B社にとって、もう1つの課題が従業員の働き方改革だ。人手不足の中で意欲のある優秀な従業員に働き続けてもらうためには、仕事のやり方も変えていかなければならない。
従業員は物件の案内などで外出する機会も多い。例えば、賃貸マンションを探している顧客を現地に案内する際、マンションの間取り図などのデータを管理用パソコンから出力。紙に印刷して顧客に手渡したり、USBにデータを保存してノートパソコンで顧客に見せたりする。そして、会社に戻り、業務報告書を提出するといった具合だ。社外からデータへアクセスできる仕組みがあれば、物件情報の入手や報告書のためだけに従業員はわざわざ出社、帰社する必要がなく、働き方を変えられる。
そこで、社外からもデータ利用できる方法を検討した。社内に新たにファイルサーバーを導入する方法もあるが、導入コストが負担になるだけでなく、ITの専門知識を持つ従業員のいないB社にとってトラブル対応などの運用管理に不安がある。また、社外から社内に設置したファイルサーバーへ安全にリモートアクセスするためには、VPNの導入、運用も必要になり、B社にとってファイルサーバーによるデータ共有は敷居が高いと判断した。
そこで、手軽にデータ共有できる方法としてクラウドストレージサービスに着目。クラウドストレージはインターネットを介して社内、社外を問わず、いつでも、どこでも、ストレージに保存したデータをセキュアに参照、共有でき、国内外のさまざまな事業者からサービスが提供されている。
この点、B社では「データの扱いやすさ」と「安全性」をポイントに検討した。これまで物件情報を保存していた管理用パソコンのデータをクラウドストレージに移し、社内・社外で共有することになる。そこで、数あるサービスの中から選んだのが、データ転送ツールを用いて既存環境から大量のデータを簡単に移行できるものだった。安全性では、強固なセキュリティのデータセンターにデータが保管されることや、すべてフォルダに対するアクセス権の設定、不正アクセスを防ぐ多要素認証が可能なことを評価した。
B社が着目したサービスでは、目的に応じてデータを保存するフォルダの使い分けも可能な点が選定のポイントとなった。物件情報などは社内共有のフォルダに保存し、経営層においては自宅から共有フォルダにアクセスして最新データを参照しながら、事業計画を立てることもできる。従業員側は個人用のパーソナルフォルダに外出先でスキマ時間を使って作成した業務報告書などを保存して直帰し、出社時に報告書を更新して会社に提出するなど時間を有効活用しながら業務が行えるようになり、柔軟な働き方を可能にしている。
クラウドストレージの導入により、顧客対応にも変化が現れている。顧客を賃貸マンションの現地に案内したときに、別の物件情報を見て比較したといった場合、従来であればその物件の間取り図や設備などの情報をあらかじめ紙やUSBに用意していなければ、見せることができなかった。だが、クラウドストレージであればその場で希望する物件の情報を簡単に検索、閲覧できるので、ビジネスチャンスを逃さず、顧客満足の向上と契約数の増加につながっているという。B社が採用したクラウドストレージは、スモールスタートが可能なプランで、小規模な企業に導入しやすいことも決め手になった。サービスを利用する従業員の増加に合わせてプランを変えることができる。クラウドストレージは、成長を続ける同社のデータ共有と働き方改革の一翼を担い、IT活用を加速させている。
執筆=山崎 俊明
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