海外発ビジネス最前線(第4回) Amazonが「声」で世界を変えようとしている

自動化・AI 時事潮流

公開日:2017.06.22

 「Amazon Lex」をご存じでしょうか。ネット通販の大手である米Amazonの系列会社「AWS(アマゾンウェブサービス)」が始めた、音声やテキストを使用して、任意のアプリケーションに対話型インターフェースを構築するサービスです。

 近未来的には、ネットにつながっている家電製品などを音声で操作できるといわれています。こうした未来の生活を可能にするのが、同社の所有するAI(人工知能)です。2017年4月にリリースされ、広く話題となっています。なぜ、このAmazon Lexが話題になっているのか――。「声」の力で、世界が大きく変わる可能性があるからです。

なぜ音声で操作することが重要なのか?

 Amazon Lexでできる例をいくつか挙げましょう。

 例えば、スマートフォンに話しかけるだけで、クラウド上のスケジュールの調整や、航空券の手配やホテルの予約が可能になります。あるいは、社内システムに「今週最も多く注文をいただいている、現在地点から半径20キロ以内に事務所がある取引先」といった言葉で情報を求めれば、人に依頼したように取得できます。

 この「音声認識」が、コンピューター業界には大きな革命なのです。AWSでは、人間とコンピューターを結ぶインターフェースを「3つの世代」に分類しています。第1世代は、パンチカードやメモリーレジスター(計算機)を使って、コンピューターと“対話”した時代です。第2世代が、現代のような、キーボードやマウスなどのデバイスを使って、コンピューターを操作する時代です。

 そして、Amazon Lexのように、音声でコンピューターとコミュニケーションを交わすのが、第3世代です。SFドラマ「スタートレック」の中に登場するような、人とコンピューターが対話をする第3世代のインターフェースを、Amazon Lexは提供してくれるというわけです。

Amazonがボイスコンピューティング界の盟主になる?

 Amazon Lexは、音声だけでなく、テキストの認識にも対応します。高度な会話を理解する機能を備えているため、近年はやりの「チャットボット」にも利用可能です。

 チャットボットとは、音声やテキストを使って、ボット(ロボット)とチャット(会話)する仕組みです。通常は機械のアルゴリズムを活用したボットですが、ボットをAI(人工知能)と連動させることで、ユーザーはあたかも普通の人間とやり取りしているかのように滑らかな情報収集が可能になります。チャットボットは現在、天気予報、ニュース、ショッピングのアシスタント、生命保険の相談など、さまざまな用途に使われ始めています。実際にAmazon Lexをベースに開発されたチャットボットが世界中で続々と誕生しています。

 Amazon Lexの登場は、ボイスコンピューティングという新たな分野に、Amazon社が本格的に参入していくことを世界に示したという点で大きな意味を持ちます。

 Amazon社は既に、AIによる音声アシスタント機能が付いたスマートスピーカー「Amazon Echo」を全世界で500万台以上販売しており、シェアは70%を超えています。Amazon Echoから、Amazon Lexを経由して各種のアプリケーションへアクセスすることが、今後間違いなく実現します。自宅のソファでくつろぎならAmazon Echoに話しかけ、「昨日オフィスに来たお客さまのメールアドレスを教えてくれる?」なんていうやり取りが行われるかもしれません。

音声であらゆる操作を行う日はそう遠くない

 ボイスコンピューティングは、ネット検索の世界では、既に当たり前のものになりつつあります。業界では、音声によるサーチは2020年までに月間2000億回に増加すると予想されています。

 検索以外でも、各種のアプリケーションやショッピングなどでボイスコンピューティングが存在感を高めています。Amazon Echoでは、既にAmazonでの音声によるショッピングが可能になっています。また、音声による銀行取引や証券取引なども試験的に始められています。

 音声であらゆる機器やサービスを操作する日は、そう遠くないかもしれません。ボイスコンピューティングを「所詮は未来の話」と思っている人もいるかもしれませんが、まずはネットの検索を音声ですることから始めてみてはいかがでしょうか。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2017年6月12日)のものです

執筆=前田 健二

大学卒業後渡米し飲食ビジネスを立ち上げ、帰国後海運企業、ネットマーケティングベンチャーなどの経営に携わる。2001年より経営コンサルタントとして活動を開始。現在は新規事業立ち上げ支援を行っている。アメリカのビジネスに詳しく、特に3Dプリンター、ロボット、ドローン、IT、医療に関連したビジネスを研究、現地から情報収集している。

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