ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
教育の情報化を政府が後押ししている。人材投資による生産性向上をめざす「経済財政運営と改革の基本方針2017」(6月9日閣議決定)では、重点課題として「教育の質の向上等」を挙げる。その中で、新学習指導要領を円滑に実施するための体制整備や、情報活用能力の育成を含む教育の情報化、安全・安心な学校施設整備を推進すると明記している。
政府の成長戦略「未来投資戦略2017」(6月9日閣議決定)においても、人材の育成・活用力の強化に向けた目標を設定。「授業中にITを活用して指導することができる教員の割合について、2020年までに100%を目指す」「無線LANの普通教室への整備を2020年度までに100%を目指す」と具体的なスケジュールを示している。
政府は、学校におけるIT環境整備を加速させる観点から、学校現場で導入すべきIT関連機器などの整備方針を策定するとともに、各自治体の導入状況をフォローアップしていく方針だ。
現在の学校におけるWi-Fi(無線LAN)導入状況はどうだろうか。文部科学省が全国の小・中・高・特別支援学校を対象にした「平成28年度 学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」によれば、普通教室の校内LAN整備率は88.9%と高いが、このうち無線LANは29.6%にすぎない(2017年3月1日現在)。
これまでデスクトップパソコンが設置されているコンピューター教室を中心としたICT教育なら有線LANでも事足りた。だが、学びのスタイルは変わりつつある。子どもたちがタブレットなどを使いながら、さまざまな場所での学びを行うにはWi-Fi環境が欠かせなくなる。
例えば、小学校で2020年から施行される次期学習指導要領では、プログラミング教育も始まる。一方、算数や理科、総合学習などの各教科でも従来の一斉学習での学びに併せ、主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)による新たな指導方法も取り入れられる。児童・生徒それぞれがインターネットで調べたり、グループでプレゼンテーションしたりするシーンも多く見られることになるだろう。
こうしたプログラミング教育やアクティブ・ラーニングを効果的に行うには、わざわざコンピューター教室に足を運ぶことなく、普通教室でタブレットとWi-Fiを利用しながら授業が行えるICT環境が必要だ。このことからも前述の「未来投資戦略2017」における「無線LANの普通教室への整備を2020年度までに100%を目指す」というKPI(重要業績評価指標)は多いに期待したいところだ。
実は、学校のWi-Fi環境整備はこうした教育の変化への対応だけでない。防災強化の観点からも必要に迫られている。総務省では「日本再興戦略2016」(2016年6月2日閣議決定)に基づき、「防災等に資するWi-Fi環境の整備計画」を策定。避難所に指定された学校や市民センター、公民館などの防災拠点のWi-Fi環境整備に対し、地方財政措置を活用。2017年度は「公衆無線LAN環境整備支援事業」として、31.9億円の予算措置をしている。
現在、すでに大学レベルでは環境整備が進み、2014年時点で8割以上がWi-Fiを設置済みだ。キャンパス内ではタブレットやスマートフォンなどを使って手軽に情報にアクセスできるようになり、生徒の利便性が向上した。ただ、ゲームやSNS閲覧など学習以外での利用が多いという指摘や、使い方を模索しているケースもある。
小・中・高校でWi-Fi整備を進める場合にも、設備を導入するだけでなく、その運用方法をしっかりと検討する必要がある。生徒、保護者という学校の顧客満足度を上げ、学校側として教育の生産性を向上させる。同時に安全な運用も考慮しつつ、無駄にならないIT投資を行われなければならない。Wi-Fi環境の正しい整備は表に見えるものではないが、新たな指導要領がめざす情報活用能力育成のベースとなる、重要な情報基盤づくりといえるだろう。
執筆=山崎 俊明
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