ビジネスWi-Fiで会社改造(第44回)
ビジネスWi-Fiで"学び"が進化する
ここ数年、日本を訪れる外国人観光客が増加している。政府が推進する「観光立国」実現に向けた取り組みの成果といえるが、喜んでばかりはいられない。訪れた観光客からは、Wi-Fi環境について不満を訴える声も上がっているからだ。
2015年度に日本を訪れた外国人観光客数は2000万人を突破し、過去最高を記録した。繁華街や観光地でその姿を見かけることは、今や日常風景になった感がある。日本に対する高い評価の半面、多くの外国人観光客が不満を感じている。総務省・観光庁が行った「訪日外国人旅行者の国内における受入環境整備に関する現状調査」(2016年1月12日)によると、外国人観光客が旅行中に困ったことの第1位は「無料公衆無線LAN環境」(無料Wi-Fi)だった。かつて日本観光のネックといわれていた「施設等のスタッフとコミュニケーションがとれない(英語が通じない等)」や「多言語表示(観光案内版等)」などを上回り、実に46.6%の外国人観光客が無料Wi-Fi環境に不満を抱いているのである。
この結果を見て感じるのは、「日本はそんなに遅れているのか?」という素朴な疑問だ。空港や駅、カフェなど、人の集まる場所でWi-Fiが使えるところは多いし、街中で無料Wi-Fiのマークを見かける機会も多い。なぜこのような結果が出てしまうのだろうか。
ここで注意したいのは、外国人観光客が求めている無料Wi-Fiの種類。単にWi-Fi接続できるだけでなく、無料かつ「誰でも使える」ものであることが条件なのだ。その意味で日本のWi-Fi環境は、誰でも使えるとは言いにくい環境にある。日本ではWi-Fi以前に携帯電話回線を使った外出先でのインターネット接続(iモードなど)が普及していたため、Wi-Fiは主にその通信量増加を補うための手段として整備されてきた。Wi-Fi環境の利用は携帯電話事業者と契約したユーザーに限られ、事前登録が必要な場合が多い。
しかし海外では、携帯電話網に比べて簡単、低コストで構築できるWi-Fi網の整備が進んでいる地域が少なくない。「海外主要都市の無料Wi-Fi状況に関する調査」(NTTコミュニケーションズWebサイト掲載:日経BPコンサルティング 2015年2月調査)によると、ソウル・香港・サンパウロ・ロサンゼルス・ニューヨーク・サンフランシスコ・ロンドン・ミュンヘンなど多くの主要都市が東京を上回るスコア結果となっている。東京は「空港、鉄道、街頭、ホテルなどには、かなり高い割合で無料Wi-Fiポイントが浸透」しているものの、公園・道路に弱く、海外から訪れた観光客には日本のWi-Fi環境が使いにくく感じられてしまうのも理解できる。
このような不満を解消するため、一部の地方自治体ではWi-Fi環境の整備に必要な費用の補助を行っている。国も既存のアクセスポイントを無料Wi-Fiで活用するための検討を進め、外国人観光客のニーズに応える方針だ。
無料Wi-Fiの利便性が最大限に発揮されるのは、大勢の人が集まるイベントだ。2012年のロンドン五輪でロンドン市内に約50万カ所の無料Wi-Fiスポットが設置され、注目を集めた。また、観光客の情報入手はスマートフォンが主役になっていることから、世界各国の有名観光地で無料Wi-Fi環境の整備が行われている。日本でも諸外国と同様に拡大が進められているが、同時に課題も浮かび上がってきた。
無料Wi-Fi環境は、地域によって整備状況に差が生じているのだ。三大都市圏(東京・名古屋・大阪)や主要地方都市では順調に増加しているものの、その他の地域では増加のスピードが今一つ鈍い。また、商業施設に比べ、公共施設(文化財、博物館ほか)での整備の遅れが問題視されている。設置コストの負担をどうするかなど、解決すべき課題は多い。
無料Wi-Fi環境整備のメリットは、インターネット接続だけに限らない。例えば、外国人観光客が接続する無料Wi-Fiの窓口を一本化し、初期画面やコンテンツを多言語対応にすれば、地域のイベント情報や観光名所案内を有効に発信できる。クーポンの発行など、これまで別々に提供されていたサービスも包括的に運営可能になる。日本のWi-Fi環境に不満を持つ外国人観光客を迎えるために、一刻も早い無料Wi-Fi環境の整備に大きな期待が寄せられている。
執筆=林 達哉
【MT】