最適な通話回線を考える(第3回) 電話代再検討で思わぬ商機拡大も

音声通話 災害への備え

公開日:2022.02.22

 店舗やSOHO(スモールオフィス、ホームオフィス)など小規模事業者において、売り上げの増加を期待しにくい場合、厳しい事業環境を乗り越えて生き残りを図るには経費の見直しが必須だ。

 「コストの見直しは徹底的にやってきた」小規模事業者に再検討してほしい経費がある。それが通信費だ。「注文などを受け付ける電話やFAXは業務の生命線なので減らせない」という経営者もいるかもしれないが、ある方法で既存の電話機やFAX機をそのまま使いながら、通信費を減らせる可能性がある。加えて、転送電話などの機能を活用して商機を広げることも可能だ。

全国一律の通話料金でコストダウン

 電話の切り替えといえば、店舗・事業所の開店や移転時が思い浮かぶ。だが、小規模事業者の経営課題となる経費の見直し、商機拡大のためには既存の加入電話(固定電話)から「ひかり電話」へ切り替える方法がある。電話回線に光ネットワークを利用するひかり電話はさまざまな通信事業者が提供しているが、ここではNTT西日本のひかり電話を例に紹介する。

 ひかり電話は、インターネットサービスで利用されるフレッツ光(FTTHアクセスサービス)または一部の「コラボ光」を利用したIP電話サービスだ。既にインターネット接続用にフレッツ光に加入している事業者の場合、既存のフレッツ光のオプションサービスとしてひかり電話を利用できる。ひかり電話は個人宅だけでなく、店舗やSOHOなどの事業者でも利用され、フレッツ光の契約者の68.5%(2020年11月末現在 光コラボレーションモデル、ひかり電話 オフィスタイプ、ひかり電話 オフィスAを除く)がひかり電話を利用する。

 そのメリットの1つが電話料金を加入電話よりもコストダウンできるところだ。固定電話への通話料は、距離や時間帯に限らず全国一律(音声のみで使用する場合8.8円/3分)だ※1。例えば、県外の取引先に電話をかける場合、加入電話は22~88円/3分の通話料がかかる(NTTコミュニケーションズ利用の場合)が、ひかり電話であれば割安になる。また、携帯電話への通話料は加入電話と同じ17.6円/分。さらに米国や中国、韓国など海外へも通話可能だ。

※1
・ひかり電話オフィスA(エース)プラン1.を除く。NTT西日本・NTT東日本の「加入電話」「INSネット」「ひかり電話サービス」および「コラボ光ひかり電話」〔テレビ電話・音声通話中のデータコネクト通信(データ通信)同時利用・データコネクトへのデータ通信は除く〕、他社一般加入電話、他社IP電話(050番号への通話を除く)へ発信の場合。国際電話・携帯電話・050IP電話・テレビ電話・ナビダイヤル等への通話料金は異なる
・通話時間が短い場合、割引サービス加入状況等によっては割安にならない場合がある

 IP電話サービスというと、電話番号や使い勝手が変わるのではないかと心配かもしれない。だが心配は無用だ。ひかり電話は加入電話で使用していた電話番号や電話機をそのまま使え、使い勝手は変わらない※2。また、緊急通報への発信もできる。ただし停電時は利用できない。

※2
・現在利用中の電話番号を引き続き利用する場合は、ひかり電話の工事費(基本工事費1100円(フレッツ光と同時工事の場合は無料)、交換機等工事費1100円)に加え、同番移行工事費2200円、加入電話等の休止に関する基本工事費1100円(フレッツ光と同時工事の場合は無料)、交換機等工事費1100円が必要。また、注文内容によって別途機器工事費等が必要となる場合がある(代表的な工事例であり、お客さまのご利用環境等により、その他工事費が発生する場合がある)
・現在利用中の電話番号が引き続き利用できない場合がある。また、「ひかり電話」から他社の電話サービス(光コラボレーション事業者が提供する「コラボ光ひかり電話」は除く)に移行する場合、電話番号が変わる場合がある
・ISDN対応機器、G4FAXなど、一部の電話機は利用不可

 ここで小規模事業者を例に既存の加入電話とひかり電話(基本プラン)を比べてみよう。

【ひかり電話導入前後の比較】

 

 現状は電話用とFAX用に2本の電話回線およびインターネット接続用にフレッツ光、転送電話の「ボイスワープ」に加入している事業所があるとする。この事業所でひかり電話に切り替えた場合、フレッツ光の月額利用料やFAX用の追加チャネル、追加番号、ボイスワープ利用料などを加えても、プロバイダー利用料を除いた月額基本料の合計は現状の加入電話の2/3程度になることもある。別途、加入電話からひかり電話への移行時に工事費がかかるものの、月額基本料および通話料の低減で、電話に関わる通信費の軽減が期待できるわけだ。

※ひかり電話について
・「ひかり電話(またはひかり電話A(エース))」の利用には、「フレッツ 光ネクスト」「フレッツ 光ライト」または一部の「コラボ光」の契約・料金が必要。なお、「コラボ光」が廃止された場合、「ひかり電話」も同時に廃止になる
・0039等の電気通信事業者を指定した発信など、一部かけられない電話番号がある
・インターネットの利用には、プロバイダーとの契約・料金が別途必要
・1電話番号ごとに、ユニバーサルサービス料2.2円(税込)/月および電話リレーサービス料(2022年2月・3月は0円/月、2022年4月以降は変更)が必要(オプションの「追加番号」も同様)。なお、ユニバーサルサービス料および電話リレーサービス料については変更となる場合がある。詳細はホームページを参照(2022年2月現在)

商機を逃さず、BCPにも役立つ転送機能

 ひかり電話の2つ目のメリットは、ビジネス向けのオプションサービスが充実している点だ。人手が少ない小規模事業者やSOHOに便利なのが転送機能のボイスワープだ。店舗や事業所にかかってきた電話を、あらかじめ指定した電話番号へ転送する。例えば経営者が外出中、事業所にかかってきた電話を経営者の携帯電話に転送し、顧客や取引先からの重要な電話を取れず、商機を逸するリスクの回避が可能だ。

 また飲食店などでは、休業時に予約の電話がかかってきた場合、携帯電話などにボイスワープで転送し予約を受け付けられれば、お客さまを逃さず満足度の向上も期待できる。

 ボイスワープは停電・災害時のBCP(事業継続計画)対策や、コロナ禍におけるテレワークの電話対応にも効果的だ。例えばある事業所が台風・豪雨などの自然災害で被災した場合、その拠点に顧客・取引先からかかってきた電話を携帯電話などに転送すれば、被災後の業務再開もスムーズに行えるだろう。

 また、何らかの事情で事業所への立ち入りができない場合でも、事前にボイスワープの転送先登録等を行っていれば、遠隔地からも転送の設定を行えて商機の逸失を回避することも可能だ。

【ボイスワープの利用イメージ】

 

ビジネスに便利な各種オプションサービス

 ひかり電話はボイスワープのほかにも、ビジネスに便利なオプションサービスが豊富に用意されている。加入電話でも利用している事業所はあるが、通話中に別の電話も取れる「キャッチホン」もその1つだ。少人数の事業所でほかに電話を受けられる人がいないときでも、通話中にかかってきた電話をいったん受け、折り返し電話をかける対応が可能だ。

 また、ひかり電話1契約で同時に2回線の発着信が可能な「複数チャネル」も便利なサービスだ。1つの電話機が通話中でも、もう1つの電話機で通話したり、FAX機をつないでFAX通信したりできる。SOHOでは業務用と自宅用の電話を分けたり、店舗では店舗用と事務所用に分けたりして使える。

 このほか、かかってきた相手の電話番号を電話機に表示する「ナンバー・ディスプレイ」が対応機器であれば使える。重要な顧客や取引先の電話対応がスムーズになる。

 迷惑電話で仕事を中断される経験を持つ事業所もあるだろう。そんなときに便利なオプションサーピスもある。非通知設定でかかってきた電話に対して、自動音声で電話を取らずに対応できる「ナンバー・リクエスト」や、迷惑電話など特定の電話番号の着信時に自動音声で対応する「迷惑電話おことわりサービス」だ。ただし、これらひかり電話のオプションサービスは、別途工事費や利用料がかかるほか、サービスの組み合わせによっては利用できないものもあるので、事前に確認したい。

 既にフレッツ光を利用してインターネット接続やメールの送受信を行っている小規模事業者も多いはずだ。ひかり電話ではフレッツ光の契約が必要になる。ひかり電話をきっかけにインターネット環境をビジネスに活用してみるのも手だ。小規模事業者ならではの迅速な意思決定の強みを生かしてみてはどうだろうか。

※ボイスワープについて
・ボイスワープ契約者までの通話料は、電話をかけた方の負担だが、ボイスワープ契約者から転送先までの通話料は、ボイスワープ契約者の負担(転送先がお話中や応答しない場合、通話料はかからない)
・「FAXお知らせメール」を利用中の場合は、同一電話番号で「ボイスワープ」は利用できない

※迷惑電話おことわりサービスについて
・加入電話等からひかり電話に移行し、迷惑電話おことわりサービスを継続して契約の場合、登録していた移行前の迷惑電話リストを引き継げない。また、ひかり電話から加入電話に移行される場合も迷惑電話リストを引き継げない
・メッセージによる応答時には、発信者に通話料がかかる

※掲載している情報は、記事執筆時点のものです

執筆=山崎 俊明

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