技術×IT×デザインで楽しさを生むベンチャー(第4回) 地方のならではの“余白”が新しい発想を生む

増収施策

公開日:2016.03.01

GOCCO. 木村亮介社長

 GOCCO.が本社を構えるのは岐阜県の大垣市。話を締めくくる第4回は、地方都市に本社を置いてビジネスを展開するメリットと、今後の展開について木村社長に伺った。(聞き手はトーマツベンチャーサポート事業統括本部長、斎藤祐馬氏)

斎藤:なるほど。ところでこの地域について伺います。木村さんはもともと大垣出身ではないですが、なぜここで創業されたのですか?

木村:イアマス(IAMAS=岐阜県大垣市にある情報科学芸術大学院大学/岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー)に入るまでは、大垣については全く知りませんでした。しかし、そこでの2年間は、かなり刺激的で面白かった。せっかく縁があった場所ですし愛着もあります。起業するからと出ていってしまうのは、もったいないなと思ったんです。

 イアマスが近くにあるという安心感もあり、あれだけすごい人たちが集まっていて、いろいろなプロジェクトを持っていて、いろいろな発想もデザインも技術も持っている。そこで起業することは、とても自然な流れでした。周囲の仲間にも大垣の出身者は1人もいなかったのですが、面白がって賛同してくれました。

斎藤:やはりイアマスの存在は大きいわけですね。

木村:そうですね。それとソフトピアジャパンセンターがあるということも大きかった。そこではいつもイベントがある。イアマスの卒業展もそこで開きますし、いろいろな企業もイベントを行っている。イアマスがあって、その隣に企業の集積地のようなソフトピアがある。ものすごくシンプルなんです。

斎藤:確かに東京にはこうした施設が多数あり、面白そうな話がどんどん飛び込んでくる。逆に情報が多すぎて絞りこむのが難しいという面はありますよね。ベンチャーが成長していく過程では、それらに全部はとても対応しきれない。面白いものを作るためには、集中している感じが必要だと思うんです。

木村:そう、まさに集中するという感じですね。

斎藤:大垣出身の人は入社しましたか?

木村:実は1人もいないんです(笑)。岐阜県や愛知県という近場出身の人間はいますが、なぜか大垣出身者はいないんです。面白いことに。

斎藤:面白いですねえ。ところでこの大垣のような、少し都会から離れた場所で起業するメリットや魅力はどんなところでしょうか。

「余白」があるから面白い

木村:地方では、すぐ目の前にさまざまなニーズがあります。例えば空き店舗改装に、助成金が出ていたりする。それを例えばクラブイベントなどの、何か面白い発想に変えていく「余白」みたいなものが見えやすく、取っ掛かりをつけやすい。

 それから、場所代が安い。もうすぐオフィスを移ろうと考えているんですが、これまでは100平方メートルのワンフロアを月10万円で借りていました。それでも驚くほど安いじゃないですか。今度はそこから3分くらいのところで、そこは何と4階建てでオフィスは合計120平方メートルの物件です。

斎藤:4フロア!

木村:はい。1階は5台分の駐車場で、その上の3フロアがオフィスというビルがあるんですけど、それはビル1棟で20万円なんです。

斎藤:それは安い!

木村:もちろん最新のきれいなビルじゃないですよ。でも遊び場としては最高じゃないですか。20万円でそれは、まず東京じゃあり得ない。

斎藤:いやーっ、あり得ないですね!

木村:だからそういうことが地方ならではのメリットだと思うんです。次のオフィスにはいろいろな絵を描いたり、イベントをしたりもできる。面白いことをやりたいなと考えています。

斎藤:先ほどの「余白」という考え方は面白いですよね。それが遊びにつながっている。地方では過疎化もあり、足りないものに目が向きがちですが、それを逆転の発想で捉えている。

木村:そうですね。1つのチャンスです。だから店を開いてみたこともあるんですよ。1週間だけカレー屋さんをやりました。本当にいろいろなことができるんです。スペースがあると人間いろいろなことを考えるんだなと(笑)。スペースがあればあとはインターネットが引いてあればOKなんです。

斎藤:結局、物理的なスペースだけでなく、時間的なスペースもあるということなんでしょうね。だから挑戦できるのだと思う。遊べるから新しい発想が出て、発想がどんどん研ぎ澄まされていくんですね。

木村:そうかもしれないですね。例えば東京だったら「よくできたよね」ということが、こちらではすごく簡単にできる。逆に、ここで一度実現しておけば、東京などに展開するのは難しくない。

斎藤:一方で、大垣でやっていく上での課題はありますか。

木村:やはり東京との距離はあると思います。ここから3時間くらいはかかりますから、すっと打ち合わせに行くのは難しい。でも日帰りの東京出張とかはいくらでもやります。ですから、我々が出向く分にはいいのですが、来ていただくのにちょっと苦労しますけどね(笑)。

斎藤:資金に関しては地方だからとか東京とかはあんまり関係ないですか?

着実に少しずつ事業を伸ばしていきます

木村:そうですね。銀行からは少しずつ信頼を得ることができているので、我々の場合、着実に少しずつ事業を伸ばしてきています。

斎藤:確かに、そのあたりの着実さは普通のベンチャーとは違いますよね(笑)。これから目指していく方向性はどうお考えですか。

木村:今年は、仕掛けているフェスなどの大きな案件が幾つかあります。そういうもの一つひとつが我々にとっては全部チャンスで、花開かせないといけないものなのです。2015年は、飛躍の年だと考えています。

 PITシステムなど、すごいサービスを提供する会社というのではなく、どちらかというと駄菓子屋みたいに、どれも面白そうだなと思ってもらえるような、そういう会社でありたいと最近考えていますね。

斎藤:駄菓子屋みたいなといいますと?

木村:いわゆるベンチャーというと、ある特定のすごいシステムだけを提供しているようなイメージです。でも、我々の場合は、もう少し何か面白いものが見つかるんじゃないかなという選択肢の多さが売りなんです。ほかにもお見せしたいものがいっぱいありますよと言えるような、色んな可能性を持っていたいのです。

 そういうふうに使うんだとか、こんな使い方をすると見え方も全然違ってくると。どきどき、わくわくするようなそんなサービスを作っていかなきゃいけないといま躍起になっています。

斎藤:なるほど、駄菓子屋もいいですが、木村さんの発想のお手本はドラえもんだと話されていましたから、ぜひ“四次元ポケット”を目指してください(笑)。

日経トップリーダー/藤野太一

※掲載している情報は、記事執筆時点(2015年7月)のものです

執筆=斎藤 祐馬

※トーマツ ベンチャーサポートは、2017年9月1日より「デロイト トーマツ ベンチャーサポート」に社名変更しました。

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