大阪教育大学さまの事例概要
電子教材の学修ログを分析し授業を改善
履修者1.8倍増の講義に

大阪教育大学さまが全学を挙げて取り組まれている「教育DXの推進」。
その一環として、AIや先端技術、データサイエンスを教育に活用することをめざし、2023年に電子教科書・教材配信ソリューションEDX UniText ※を「AIとデータサイエンス」授業にて活用開始。
履修登録時のアンケートと最終試験の結果データに加え、学修ログを掛け合わせて分析、授業改善や教材改善を行っておられます。
教員養成の高度化に向けて、さらなる電子教科書・教材配信ソリューションの活用を進められています。
- NTT EDX社が提供するサービス(EDX UniText)です。NTT西日本は、本サービスの販売取次ぎを実施します。
デジタルマーケティングの定石を応用し
授業改善や学習効果の向上をめざす
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安松さま
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AIやデータサイエンスなどの先端技術の教育活用を推進することが、私の本学における主な役割だと認識しています。
教育DXへの取り組みを先進していくには、何をどのように実践していくべきか試行錯誤していたところ、NTT西日本が運営するオープンイノベーション施設 「QUINTBRIDGE(クイントブリッジ )」のイベントをきっかけにEDX UniTextを紹介いただきました。このEDX UniTextを使えば、従来の学習管理システムでは実現できない教材閲覧ログを収集可能であることを知り、このデータを学習デザインに活用していくことは、教育DXとして必要不可欠な取り組みと考えました。
そして、教育DXの推進に取り組む上で最優先に実践研究を進めるべきだと考え、NTT EDXさんとの共同研究が決まりました。
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安松さま
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EDX UniTextの特徴的な機能である学修ログは、どの学生が・いつ・どのページを見たかを詳細に把握できます。
この機能は、デジタルマーケティング業界のWebサイト解析において常識的に活用されており、その収集データを用いてユーザーの流入経路やサイト内行動、購入(コンバージョン)までのプロセスを分析されています。
この異業界の「常套手段」を教育にも活用しない手はありません。
従来の学習管理システムでは、どの資料がどのように閲覧されたかまではわからなかったため、EDX UniTextのこの機能は全大学に早期に導入されるべきものだと思いました。 学修ログ分析ができると、特定のページが繰り返し頻繁に見られていれば、その内容が理解しにくい可能性があり、逆にそのページ以降の閲覧が減っていれば、学生のモチベーションが下がった可能性などが推測できるようになります。
ただ、アクセスログ分析からではこのような全体傾向は把握できますが、学生は一様ではありません。個別最適化学習とまではいかなくとも、学生の特性別に学修傾向を把握していくことが求められます。
そこで重要になるのが、アクセスログだけではなく、その前後のデータを統合して分析することです。この多様なデータを統合して分析する有用性もデジタルマーケティング業界での分析経験からわかっていることでした。
例えば、ユーザーへのアンケートのデータとアクセスログを組み合わせる。
今回でいえば、「なぜこの授業を選択したか」授業選択の理由など学習管理システムに登録していない学生の特徴をアンケートで収集し、それとアクセスログを統合的に分析することにより、どのような学生がどの部分を閲覧したのかを明らかにできます。
アンケートと学修ログを統合した分析を通じて、異なる属性を持つ学生に対し、学生それぞれの学習状況を適切に把握することで、より効果的な学習支援や授業展開を行うことが可能になります。
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大阪教育大学
産官学イノベーション共創センター 理数情報教育系
特任准教授 安松 健さま
さまざまなデータから学生の学習意欲や興味を特定
授業のブラッシュアップを図る
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安松さま
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100人規模の大講義では、今までは各学生個々の学習プロセスは、ほとんどわかりませんでしたが、EDX UniTextを導入した結果、学生の学習状況が少しみえてくるようになりました。
EDX UniTextの学修ログを活用すると、どの学生がどの教材をいつ見たか等を詳細に把握できるようになることは、前述の通りですが、教材内をどの言葉で検索されているのか、どこにマーカーを引かれているのかという傾向も確認できます。
そうしたデータから説明がわかりにくい部分や理解が難しい部分、学生の興味・学習意欲が上昇・低下する部分の仮説を立てることも可能になってきます。
具体的には、講義教材の最終ページに『今日のまとめ』として講義のポイントを明記してありますが、そこではなく資料のまとめに至る途中の内容にマーカーが引かれていたりするんですよ。 その学生は、まとめよりも中間の部分に興味を示していたのかとわかり、こうした学修ログデータは予想外の発見につながりました。
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安松さま
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さらに学修ログを機械学習(ベイジアンネットワーク)に用いて分析していくと想定外の結果に衝撃を受けました。教材の閲覧状況と学習成果の関連が常識的な結果とは異なっていたのです。この驚くべき結果も、分析結果をよく考察していくと、筋が見えてきて授業改善の方向性が示唆されました。
そして、2024年度に、この示唆を元に授業の構成を変えていきました。実際の授業実践ですので、他の要因を統制しきることはできず、因果関係を証明することはできませんが、結果として前年度に比べ授業を最後まで履修した学生数が1.8倍に増加したことは確認できました。
この実証実験の総合的な結果から、学修データが蓄積されることで学生の反応が今まで以上に把握でき、授業改善の精度が高まると考えています。
EDX UniTextを導入後、データに基づく分析は教材や授業内容の改善に不可欠であり、教育の質を高めるための必須ツールだと改めて思いました。
近い将来、このような学修ログを機械学習で分析することは広く普及すると思います。 LMS(学習管理システム)とEDX UniTextのような電子教科書・教材システムが連携することで学生のより効率的な学習環境が整うとともに、教員の授業設計改善にも有用となっていくことを期待しています。
お客さま情報
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1874年5月に設置された教員伝習所を起源とした、150年に渡る輝かしい歴史と伝統のある教育大学。
大阪府柏原市の金剛生駒紀泉国定公園内に約67万㎡のメインキャンパスを配置し、教育界に多くの有為な人材を輩出しています。また大阪市天王寺区、平野区及び大阪府池田市の3地区に初等・中等教育・特別支援教育に対応した11の附属学校園から、総合的な教育系大学をめざしています。
2022年3月には文部科学大臣から教員養成フラッグシップ大学の指定を受け、ダイバーシティ、教育DXの推進、学習観・授業観の転換といった、教員養成の高度化に全学を挙げて取り組み「令和の日本型学校教育」を牽引しています。 -
- ※サービス導入効果は、ご利用者さまの声に基づくものであり、お客さまのご利用状況により、効果は異なります。
- ※記事の内容は、2025年4月時点のものです。
- ※NTT EDX との共同研究については、NTT EDX ホームページ参照ください。