外国人の活用で人手不足に克つ(第2回) 新たな在留資格を創設、4業種で受け入れ拡大

人手不足対策 人材活用法・制度対応

公開日:2021.12.10

 2019年4月1日の改正出入国管理法(出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律案)施行前から徐々に拡大しつつあった外国人労働者の受け入れ。さらに改正法によって、介護、宿泊、農業など人手不足に悩む14業種に限って、受け入れを拡大する制度がスタートしました。それに伴い、受け入れ企業や受け入れを支援する機関についても要件が整備され、外国人労働者の活用がさらに進む見通しとなりました。

 改正出入国管理法により、何がどう変わるのでしょうか。受け入れ分野・業種は、生産性向上や国内人材の確保のための取り組み(シルバーや女性の積極的投入、賃上げ、働き方改革などの処遇改善など)を尽くしても人材が足りず、存続や発展のために外国人の受け入れが必要と認められる業種に限られています。現在のところは、業界からの要望も踏まえて図表1の14種と決まっています。

 「あれっ? 外国人をよく見かけるコンビニ(小売り)が入っていないの?」と意外に思った人も少なくないでしょう。コンビニ業界の要望にもかかわらず、今回の改正では、コンビニは含まれませんでした。他方で、「外食」産業は含まれています。なんだか似たような気がしないでもないですが、コンビニの場合には、「接客中心で専門技術がなくても務まるから」という理由で含まれていません。

 コンビニの店員は、POSレジを通すだけではなく、公共料金の支払い、宅配便の受け取りや保管、イベントなどのチケットの発券、業者の納品チェック、品出しに加えて、店内における調理まで行うのに、単純労働とみなされてしまったのは残念です。今後、図表1の14業種は変更される可能性は十分にあります。

【図表1】
外国人労働者の受け入れが認められた14業種

介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造、電気・電子情報関連産業、建設、造船、舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造、外食

 受け入れる外国人の能力的な水準については、単純労働者も受け入れ可能になったなどという報道も一部に見られますが、そうとも言い切れません。実際には、受け入れ業種で適切に働くために必要な知識・技能が必要とされ、所轄官省庁が定める試験により確認されます。また、日本語の能力水準は、日本語能力試験などにより、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力が必要とされています。

 従って、単純労働者的な外国人が入ってくるかどうかは、所轄官省庁が定める試験の内容いかんによるということになります。また、日本語の水準についても、受け入れ業種ごとに定められるので、業界によって、日本語のレベルがまちまちになるということもあり得ます。

 新たな在留資格として、特定技能1号と同2号が創設されます。特定技能1号は、「相当程度の知識・経験を要する技能」とされており、それが上記の試験などで確認されることになります。特定技能2号は、「熟練した技能」とされています。つまり、特定技能2号は、同1号よりも高度であるということは間違いありません。

 2021年度から、建設業と造船、舶用工業の分野について特定技能2号の試験を開始するという予定になっていますが、まだ実施報告はなされておりません。特定技能2号の外国人の待遇としては、3年、1年または6カ月ごとに在留期間の更新ができ、要件を満たせば家族の帯同も認められます。

受け入れ機関と登録支援機関

 外国人の受け入れには、以前から、悪徳ブローカーの介在が問題でした。外国では日本で働きたい外国人から多額の仲介料を徴収して、劣悪な労働環境に置き、しかも借金をさせて、その借金を返すまでは働かせ続けるというひどい話です。せっかく日本で働こうとしている外国人を、悪徳ブローカーの「金づる」にさせないためには、きちんと外国人と受け入れ機関を結び付けることは、とても重要です。

 ちなみに、受け入れ機関とは外国人を受け入れる企業のことで、外国人の使い捨てなどと呼ばれないように、図表2のような要件を順守することが求められます。当然といえば当然の事項であり、図表2の3の「支援計画」で分かるように、外国人の受け入れ機関には日本人を雇用する場合とは異なる配慮が必要な部分です。

【図表2】
外国人労働者の受け入れ機関(受け入れ企業)の要件

1.報酬が日本人と同等以上であることなどを確保するため、所要の基準に適合すること
2.労働関係法令、社会保険関係法令を順守すること
3.「支援計画」に基づき、適切な支援を行える能力、体制があること。支援計画とは、入国前の生活ガイダンスの提供、外国人の住宅の確保、在留中の生活オリエンテーションの実施生活のための日本語習得の支援、外国人からの相談・苦情の対応、各種行政手続きについての情報提供、非自発的離職時の転職支援など

 中小企業はもちろんのこと、大企業であってもこれだけの支援計画をよどみなく実施できる会社はまれではないでしょうか。そこで、受け入れ機関は、雇い入れに係る外国人の支援を登録支援機関に委託することができるとされています。逆に言えば、「登録支援機関」とは、受け入れ機関に代わって支援計画の作成、実施を行う機関のことをいいます。

 「登録支援機関」は、欠格事由に該当しないこと、支援計画に基づき、適正な支援を行える能力、体制があることを要件とされています。この点については、日本商工会議所も憂慮・要望をその「『入管法改正案』骨子及び『政府基本方針』骨子案に対する意見」のうち〔①支援の委託について〕として、図表3のように表明しました。

【図表3】
日本商工会議所の「登録支援機関」に対する意見

 受入れ機関(受入れ企業)または登録支援機関が一定の役割や機能を担うことは当然であるが、中小企業が「特定技能1号」外国人に対する支援内容として示されている 8項目の全てを担うことは現実的に困難であり、初めて外国人材を受入れる中小企業では尚更である。また、「入管法改正案」骨子では、受入れ機関(受入れ企業)が行う支援は、登録支援機関に委託することが認められており、新たな受入れ制度における登録支援機関の役割は非常に重要であるが、登録支援機関においても 8項目の全てを担うことが困難な場合も想定される。
 したがって、登録支援機関が出入国在留管理庁長官の登録を受ける際には、8項目の全てを自ら担うことを要件とせず、一部の支援を能力・体制が確保されている他の機関と連携して実施する場合であっても登録支援機関として認めることが望ましい。
 なお、8項目にわたる支援のうち「非自発的離職時の転職支援」については、例えば受入れ機関(受入れ企業)の倒産や外国人材の責めに帰す事由による解雇等が含まれると想定されることから、「非自発的離職時の転職支援」は個々の事由を考慮した上で、転職支援に係る責任の程度が判断されるべきである。

日本商工会議所「『入管法改正案』骨子及び『政府基本方針』骨子案に対する意見」

 日本商工会議所が懸念しているように、日本語を教えて、住居の世話もして、勤務先が倒産した場合に次の就職先も考えるなどということは、確かに、そんな機関が本当にあるのかと疑問が生じます。従って、例えば不動産関連企業が不動産の手当てをメインとするとか、日本語学校が日本語教育をメインとして、その他は、外部の業者と連携するなどの形が現実的かもしれません。あるいは、労務管理も含みますので、社会保険労務士を中心とする組織も考えられます。

 今回の大々的な法改正に伴い、法務省の任務のうち、出入国管理に関する部分は「出入国の公正な管理」から「出入国及び在留の公正な管理」と変更され、日本国内に入った後もきちんと面倒を見たり、管理したりという体制が整えられつつあります。そのため、入国管理局も、法務省の外局として、「出入国在留管理庁」と名称が変わりました。

執筆=小澤 和彦

弁護士法人 後藤東京多摩本川越法律事務所 弁護士。第二東京弁護士会の西東京市男女共同参画推進委員会委員長。業務分野は企業法務、知的財産など。主な著作として「相続戦争を勝ち抜く85のルール―相続財産の分配で、モメそうなときに読む本」(九天社)など。

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